110 / 114
Ⅷ 俺はメガミトトモニ。
094: 能力者
しおりを挟むこの世界から至高神が消えた。唯一神も魔王も使命を失ったんだが。問題は残っていた。
「あのポンコツ唯一神さ、『第三の器』じゃなかったんじゃないかな」
そう言ったのはディートだ。
AI『ソフィア』の消失後に俺とガンドが制圧済みの第三エリアに戻ればそこには大量のロボットの残骸とディートとヘラがいた。だが唯一神がいない。
「唯一神に逃げられた」
「え?!」
「僕の結界に閉じ込めてたんだけど‥‥襲撃されたんだよ、ものすごく強いやつに」
「強いやつ?お前らよりもか?!」
ディートの持つ力は知恵の実と無限。ウロボロスのシンボルは二頭の竜が尻尾を飲み込もうとしている。意味するものは始まりにして終わり、アルファにしてオメガ、一にして全。つまり無限だ。故にこいつの力は結界に特化していた。
特に鏡を二枚合わせて作る『無限回廊』は中から絶対に壊せない代物らしい。ただし対象物は一体に限る。
「『無限回廊』は外部からの攻撃に弱い。無限の合わせ鏡だから維持エネルギーもいらないし時間無制限で優秀なんだけどね。鏡が壊されると終わりなんだ。僕とヘラで鏡を守ったんだけどダメだったよ。物理に強い兄さんがいなかったのが痛かった」
「誰に襲われた?」
「知らない。魔王の記憶でもね。でもあいつがサードなら納得がいく。魔王よりは弱いけど相当に強かった」
ヘラが見せてくれた映像に映るのは白い髪の短髪の男。動きが早すぎて映像がブレている。ディートとヘラを一発ずつ蹴り倒した上鏡を壊し唯一神を連れ出した。この魔力の強さ、手際も鮮やかだ。確かにこいつが『第三の器』、俺が相対していても手を焼いただろう。顔ははっきり見えないがそれでも俺も見覚えがない。能力者たちのデータはそもそも俺にダウンロードされていなかったし。
「というわけで完全に手薄なこのタイミングを狙われたわけ」
「くっそッ やっぱりあの時一発殴っておけばよかった!!」
唯一神はサードじゃなかった。当然強いナンバリングを唯一神に据えると思った俺の思い込みだったようだ。流石にあれは弱すぎたか。だったらあのサードを魔王にすればよかったのに。なんで謀反した俺が魔王?
だがあいつに味方はいた。一人で俺たちの元に殴り込むはずはないだろう。だが実際は援軍は唯一神を助けてくれなかった、と。俺とガンド不在を狙ったとして、全てが終わった後に助け出されたのはどんな意図があったんだ?
「となるとあいつはなんで唯一神になれたんだ?」
「あの人工知能は魔女が欲しかったんじゃないだろうかの」
「魔女を?」
「保身のためじゃ。魔女には魔女を。もう地上へ天地創造の力を使う必要もない。護衛のつもりで目覚めさせて唯一神に置いたんじゃろうが。実際あいつは魔女としては悪くなかった。じゃがあれほどのアタッカー相手にあれ一人だけでは使えなかったろうて。実際姉上に封じられててその瞬間何もできんかった」
「じゃあサクラを廃棄しようとしたのも」
「敵対する魔女を増やさん為じゃろ。あのAIを壊さんまでも無力化ならお母様ならできたはずじゃ」
無力化。確かにサクラなら出来ただろう。なんならソフィアたちがAIの相手をしている間に。その意図はサクラにはなかったが『ソフィア』に逆らったがために警戒されたか。だがそれがソフィアの決断の引き金になった。
疑心暗鬼に怯え家臣を手打ちにする王のよう。AIのくせに妄想に囚われすぎだろう。だから五千年たった今頃急にサクラの廃棄を決めたのか。その結果こうなった。
神に近付こうとしたが故に身を滅ぼした。
歴史は繰り返す。皮肉な結末だ。
「‥‥襲ってきたやつも能力者‥‥じゃあ他の能力者も目覚めていたと?」
「見える限りでその記録はなかったじゃが。別システムで管理しておったのじゃろう。この白髪頭、システム上の生命反応から逃れておったな。時空移動も出来ていたようじゃし。『ソフィア』の管理外になるようどこぞの魔女に保護されておる。こうなると魔女はあと何人おったか、あり得る話だ」
そうなるとちょっと厄介だ。もし『ソフィア』のバックアップデータが存在したとして、そいつらが至高神の復活を望んだら?その為に魔女であるあの唯一神を助け出したのかもしれない。
「可能性はなくもないが憶測の域じゃ。この要塞の復活はかなり面倒じゃぞ」
「時間なら無限にある」
「‥‥そうじゃったな。そいつらが根気のある狂信者でないことを祈るばかりじゃな。あれを止められる魔女は残り少ない。こちらはわらわと‥‥お母様だけじゃ。お母様の血を引く兄者たちも入れたとしても手数としては心もとないの」
確かにそうだ。ソフィアと子供たち、個の能力も凄かったがなにより数で圧倒していた。
「それ、まずくないか?」
「まあ用心のためにあれだけ制御室を壊したしの。軍事衛星と地上攻撃システムは切り離してわらわの支配下にしておいてある。この要塞は攻撃力はない鉄屑じゃ。万一復活して悪さするようなら軍事衛星から狙い撃ちじゃ」
こいつ、俺とサクラのDNAをしっかりと引き継いでるな。確かに制御室は俺の腹いせに壊滅的にぶっ壊した。ヘラが修復しないようプログラムを書き換えたからあそこは壊れっぱなしらしい。
古代文明が残した軍事衛星。文字通り『ソフィア』の自衛の矛だ。『ソフィア』が改良を重ねていたため五千年が経った今でも常時稼働、燃料不要の太陽光攻撃システム、独自に進化した 全世界的衛星航法システムで破壊力および精度も強力となっていた。魔王とサクラが要塞を落ち延びたあと、ガンドたちも要塞の外に逃げ延びた。その際にシステム復旧したこの軍事衛星の攻撃を受け、ガンドとヘラを庇ったウロボロスが特に酷い怪我を負った。
記憶を失くした魔王は「ルキアス」の設定通り人族に落ちたが、三人は散り散りに逃げたため落ち延びた場所もまちまちになったわけだ。
この三人は俺たちよりは能力は落ちるが上位の能力者並に強い。その三人に傷を負わせた軍事衛星、おそらくこの武器の支配権の有無で戦いの流れが変わるだろう。
この無機質な要塞に立てこもるほど俺たちも酔狂でもない。 生き残った能力者を追跡するにも手がかりもない。冷蔵冬眠の場所も不明だ。要塞にも位置データがないというのはどういうことだ?逃げる際に能力者たちが消したとしか思えない。それはあの人工知能を見限ったとも言える。だが『ソフィア』を捕食AIとして利用するならこれほど強力なものもない。
もしこの要塞の複製があったら?バックアップデータを移植すれば『ソフィア』は復活できてしまう。旧時代の兵器だってまだ残っているかもしれない。だがこれもあくまでも仮説、証拠もない。そんなことを思い悩んでも仕方ない。ソフィアにも忘れろと言われたのに。
「‥‥‥‥まあしばらくは様子見だな」
色々悩んだ挙句、可能な限り対策して要塞を後にした。俺たちはもうこの件からは手を引きたかったんだから。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
物置小屋
黒蝶
大衆娯楽
言葉にはきっと色んな力があるのだと証明したい。
けれど、もうやりたかった仕事を目指せない…。
そもそも、もう自分じゃただ読みあげることすら叶わない。
どうせ眠ってしまうなら、誰かに使ってもらおう。
──ここは、そんな作者が希望や絶望をこめた台詞や台本の物置小屋。
1人向けから演劇向けまで、色々な種類のものを書いていきます。
時々、書くかどうか迷っている物語もあげるかもしれません。
使いたいものがあれば声をかけてください。
リクエスト、常時受け付けます。
お断りさせていただく場合もありますが、できるだけやってみますので読みたい話を教えていただけると嬉しいです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる