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Ⅷ 俺はメガミトトモニ。
095: 目覚め
しおりを挟む天上から地上へサクラを連れ帰った。
以前二ヶ月過ごした山奥のログハウスでサクラの肉体に精神を戻したが、サクラは眠ったままだった。精神と肉体が離れて半年近く、精神も相当消耗していた。肉体に馴染むのに時間はかかっているんだと俺は自分に言い聞かせたが、このまま目が覚めないんじゃないかと背筋が凍る思いだった。
毎日サクラを見舞う。眠るサクラを見つめ頭をなでて、夜は枕元で寝落ちすることもあった。
それは病で一ヶ月眠り続けた俺の目覚めを添い寝して待っていたサクラ、そして五千年の間俺を待っていたサクラと同じだったろう。目覚めるかわからない中で独り待つのは辛い。サクラにこんなに心細い思いをさせたかと思うと胸が痛かった。
そして二週間後の朝。
俺の額を何かが撫でていた。俺はいつものように寝落ちしたようだ。目を覚ませば俺を撫でるそれは白い手だった。ベッドの中で横になるサクラが目覚めていた。
「おはよう、アスカ」
「‥‥‥‥サクラ?」
「うん」
「サクラ!目が覚めた!」
まだ横になるサクラを覆い被さるように抱きしめれば首に手が回った。夢じゃない、触れられる、暖かくて懐かしい香り。やっと肉体のあるサクラに会えた。
「‥‥んとうに‥‥本当によかった‥‥もう目が覚めないんじゃないかと思ったよ」
「ごめんなさい‥‥ちょっと寝過ぎたわ」
「いや、サクラは働きすぎだったからこのぐらい問題ない!むしろもっとぐうたらして!」
五千年近く働き詰め、正直向こう一千年は有給休暇だ!
サクラが眠っていた間の出来事を説明すればサクラがそっと目を伏せた。
「ソフィアが‥‥そんなことを」
「聞いてなかった?」
「何か研究しているのは知ってたわ。詳しくは教えてくれなかった。でもずっとそばにいてくれたの」
あれはソフィアの記憶のデータだったけど、それでも寂しがりなサクラの慰めにはなった。孤独ではなかった。それがせめてもの救いだ。
「そうなんだ‥‥」
「アスカ」
「ん?」
「‥‥ごめんね」
俺は小さく息を吐いた。死ぬことのない神の器になったこと。そこに俺は遺恨は全くない。だがそれがサクラをこれほどに苦しめた。そこに後悔はある。
「今俺の脳内を見せられたらいいんだけど。そこは全く気にしていない。あの時俺は生きたかったんだから。むしろサクラと同じ時間を過ごせたことに感謝してる。謝るのは俺の方だろ?」
「なあに?」
「俺の夢のせいでサクラは‥‥俺、無責任なこと言った。ごめん」
緑が綺麗な田舎があって誰も死なない世界
深い意図もなく言ったのに。サクラを五千年頑張らせてしまった。あのAIなんかよりよっぽど酷い。
「え?そそそんなことないよ!地上に緑が増えるのは楽しかったし!アスカのせいじゃないから!だから謝んないで!」
「でもサクラは」
「私の方が酷いことしたのにアスカが謝っちゃダメなの!」
「じゃあサクラも謝んのなしな!ごめんじゃなくて感謝にしよう!‥‥俺にサクラと同じ生をくれてありがとう。俺のために緑を作ってくれてありがとう。俺と一緒にいてくれてありがとう」
サクラが目に見えてぼぼぼんと真っ赤になった。色が白いからわかりやすい。超絶断然カワイイ!不覚にも俺の胸がキュンと鳴ってしまった。
「‥‥‥‥うん。嬉しい」
「そう?」
「アスカが喜んでくれて。頑張ってよかった」
「そ、そう?」
「感謝‥‥そうだね。私も‥‥」
「うん?」
「私に出会って優しくしてくれてありがとう。生きてくれて、私をひとりにしないでくれてありがとう。私を天上から助けてくれて守ってくれてありがとう。全部忘れたのに私を好きって言ってくれてありがとう」
「え?え?え?」
サクラの感謝が思いの外たくさん出てきて俺は動揺しまくっている。そんなに俺、感謝されるようなことした?俺は好き勝手やってただけだし。
「ルキアスと一緒に過ごせてとても楽しかった。でもアスカに私のこと忘れられたのは辛かった」
「‥‥ごめん」
「違うの!それはいいの!仕方なかったってわかってたから。そもそも私のせいだし、何もかも忘れてやり直したいって私が望んだことだったのに、勝手だよね。私が天上の肉体に戻れば貴方は全てを取り戻すだろうとわかっていたけどアスカと離れたくなくて‥それだけはできなかった。でも離れ離れになって‥貴方は私のことを思い出して迎えに来てくれて‥‥すごく嬉しかったわ、ありがとう」
「そ?そそそそそそ?そう?」
お互い照れて無言になってしまった。自分で言っといてなんだが、感謝ってめちゃくちゃ恥ずかしいな。くすぐったい。今俺もきっと真っ赤になってるだろう。
でもなんだかちょっといい雰囲気?これはチャンスか?
そう!サクラの目が覚めたら必ず言おうと思っていたことがある。俺はサクラににじり寄ったが、今は能天気「ルキアス」と違い「アスカ」や「魔王」の記憶もある。流石に緊張している。事情がわかった今は「ルキアス」の時とは状況も違うわけで。
ビビんな俺!ここは気合一発!決めるぞ俺!
「えっとな。サクラには今後俺の夢を叶えるのに付き合って欲しいんだけど」
「夢?」
「もう叶ってるとか言うなよ?田舎に一軒家、サクラの作った家はちょっと大きすぎるからって、スケさんたちが俺たちのために突貫でこの新居作ってくれたんだ。大好きな犬‥‥じゃないけどガンドがいて、子供‥‥と言うにはちょっとうるさいのが一人いてもう一人は可愛くない家出息子だけど。表に畑も耕してるから将来は自給自足の予定。家事は全部俺がする、今俺無職だし。戦闘能力ばっかで手に職ないけどいずれ何か仕事は探す」
サクラの生活能力の無さは「アスカ」時代のプチ同棲でわかってるから織り込み済みだ。大した問題じゃない。俺の料理はスケジに弟子入りしてだいぶマシになったし。ディートが作った和食料理本もあるし醤油味噌がこの世界にもあったから和食も可能だ。掃除洗濯キッチンツールもヘラがとんでもない上位魔道具(やはり動力不明)を作ったから問題ない。結構なんとかなるもんだ。
問題は俺の就活。サクラが寝てる間に自分のスキルを確認したがどれも破壊系、傭兵か暗殺者、マタギにでもなるしかなさそうだ。魔王だって就職する可能性もあったかもなのに、なんでもっと生産性の高いスキルを魔王にダウンロードしなかったんだよ?AIも気が利かないな!俺の本気度を見せるためにも無職でサクラにこんな話したくなかったんだが。
幸い俺も覚醒してパワースタミナはある。ガテン系なら問題ないだろう。トンネル掘削だってできるもんな!仕方ないから手に職はおいおいつけていこう。
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