君の名はベヒーモス

ユリーカ

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第一章: ベヒーモス

第六話: 火を吐いた!!

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 環はキャリーバッグに仔猫を入れてうちに帰った。キャリーバッグは拓人から借りたものだ。どうやって連れて帰るか環が困っていたので貸してくれたのだ。

「本当はこんなもの必要ないんですけどね。」

 返却はいつでもいいですよ、と笑顔で送り出された。キャリーバッグは空のように軽かった。そういうものです、と拓人にも言われた。まあ楽ちんでいいや、と環は楽観する。

 マンションの三階の部屋についてさっそく仔猫を出してみた。のっそりと出てきた仔猫は辺りを探索し始める。

「いいよ、好きなだけ探索してね。」

 仔猫がいじっていけなそうなものを片付ける。拓人から大丈夫、と言われても今まで家で飼ってきた習慣で動いてしまう。探索が終わった仔猫はなーと足に擦り寄ってきた。

「ふふ、これからよろしくね、ベヒーモス。」

 ベヒーモス。かっこいい名前だけど言いにくい。環はうーんと悩んで、もす君!とあだ名をつけた。

「どうしようかな。もす君の寝るところを作ってあげたいけど、週末買いに行けるかな。」

 仔猫を膝に置いて買わなければいけないものを書き出して、消していく。ご飯皿、キャットフード、トイレ、猫砂。全然いらない。寝床にブラシ、爪研ぎくらいか?

「もす君すごい!君は経済的だねぇ!可愛いだけじゃなくお財布にも優しいよ。」

 膝の仔猫の頭を撫でるとゴロゴロと喉を鳴らした。やだ、めっちゃ可愛い!手が埋まるほどの長毛がもふもふと気持ちいい。その体をぎゅぅっと抱きしめた。ああ至福~癒される~
 そうして撫でくりまわしていた環は次の瞬間、衝撃で固まった。

 仔猫がくわっと口を開けて火を吐いたのだ。白い火。あくびのように開いた口はすぐに閉じ、火も同時に消えた。環は仔猫を抱いたまま硬直した。

 あれれー?見間違いかな?今もす君が火を‥‥。

 環は目を擦る。やだ、ちょっとはしゃぎすぎだって。

 次の瞬間、仔猫はぼーっと盛大に火を吐いた。大道芸人の火吹きのように宙に白い火柱が立つ。

 環は慌てて仔猫を抱き、鞄をひっくり返してスマホを出す。震える手で電話帳を探し電話する。3コール目で相手が出た。

「はい、軍司です。」
「火!もす君が火を吐きましたぁ!!」

 電話越しに拓人の笑い声が聞こえた。

 別れ際に電話番号を渡された。結構暇なので困ったらいつでも電話してください。そう言う拓人に環はちょっとときめいてしまった。
 電話番号貰えて嬉しいけどそう簡単には電話できないよね、と思っていたのだが、早々に電話してしまった。

「へぇ、もうですか。よっぽど相性が良かったんですね。」
「もす君!もす君死んじゃったりしませんか?!」
「もす君?ああ、大丈夫です。それは火ではありません。家も燃えません。ベヒーモスは狙ったものだけを燃やしますから。」
「よかったぁ」

 環は涙目で安堵の息を吐いた。

「ただちょっと進展が早いですね。明後日はお時間ありますか?」

 ふぇ?と環が声を出す。思考が回っていない。

「土曜ですか?大丈夫ですけど。」
「もう一度店に来ていただけませんか?直接会ってもう少しお話ししたいと思います。」
「は、はい!喜んで!!」

 デートのお誘いにも聞こえなくない文言に環はどぎまぎする。環の威勢のいい返事に拓人の笑い声が電話から聞こえた。

 
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