君の名はベヒーモス

ユリーカ

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第一章: ベヒーモス

第七話: 軍司拓人①

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 土曜の午後、指定された時間に環はもす君を連れてペットショップを訪れた。扉には『CLOSED』の札が出ている。今日は休業日だった?と逡巡すると中から拓人が出てきた。

「すみません、今日は休業日なんで。どうぞお入りください。」
「え?土曜なのに、ですか?」
「ええ、今日はそういう日の巡りなので。」

 土曜なのに休業日?大丈夫なのだろうか?むしろ環が店の経営を心配した。

 すでにティーセットが用意されていて、拓人が優雅な手つきでポットから紅茶を注いだ。香りでアールグレイであることがわかる。環の大好きなブレンドだ。ことりと環の前にカップが置かれた。
 おおう!イケメンのお茶のサーブ。めっちゃくちゃ絵になるぅ!

 環はキャリーバッグから仔猫を出した。拓人は仔猫を抱き上げる。

「うん、少し大きくなってますね。」
「そうですか?ご飯食べてないのに?」
「あなたの魔力を食べて大きくなるんですよ。へぇ、ずいぶんご馳走をもらっているようですね。ふぅん。」

 魔力。ゲーマーならわかるけど。魔力?私に?
 仔猫は毛を逆撫でて爪を出し拓人の手を払う。それを躱し拓人は仔猫の首根っこを摘んだ。目を細めて仔猫を見やる。

「少し気になることがあるので、こいつをちょっとお借りしますね。」

 にっこりと微笑み拓人は猫を摘んだまま奥の部屋に引っ込んでしまった。



 拓人は扉越しに環が席についているのを確認した。見張りの式を飛ばし扉を閉める。

「さて、どういうことかな。ベヒーモス。」

 鋭い視線をテーブルの上の仔猫に向けた。仔猫ははぁーとため息をついた。

『どうもこうもあるか!あいつおかしいぞ!』

 ベヒーモスが念話で返す。拓人は近くの椅子に腰掛け、背もたれから悠然とベヒーモスを見返した。

「それは知っていただろう。たった二時間で火を吐いたって?どんだけ堪え性ないんだ。」
『オレだってかなり堪えた!じゃぶじゃぶ魔力をかけられてこっちは胸焼けがすげぇんだよ!』
「そんなのは見ればわかる。それだけ太ればな。」

 くっそ!と悪態をつくベヒーモスを拓人は冷たく見下ろした。



 拓人がベヒーモスを狩ったのは陰陽師を始めたての八年前のことだった。
 イタリアで悪さをしていたところを拓人が三日かけて折伏しゃくぶくした。ベヒーモスのその強さからどこにも封じることができず日本まで連れ帰ってきた。それ以来の付き合いだ。

 悪さするあやかしを折伏しまくっていた拓人の手元には改心したあやかしでごった返していた。手元にいるだけで呪力を食われる。正直面倒見きれない。そこで里親制度を思いついた。

 力が強い能力者にあやかしを預かってもらい面倒を見てもらう。あやかしが反抗しないように能力者の力が強い組み合わせにする。そうすればあやかしは大人しくなった。

 あやかしはもともと改心している。能力者にはあやかしの恩恵を、あやかしには能力者の魔力を。うまく縁結びできればお互いに幸せになれるのだ。



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