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008: だいせいれいがあらわれた!(たたかう/▶︎えづけ/にげる)②
しおりを挟む「もう外?すっげ。便利だな。って外だった!ルキナ靴はいて。俺の靴は‥」
部屋は土足厳禁にしてある。今までの生活習慣上、土足は許せなかった。白い手が二人の靴を差し出してきた。朔弥が感心して白い手を褒めた。
「お前、ホント気が利くな」
「こちらでございます」
花園を歩み進めば薔薇の咲き乱れる庭園でティーテーブルを囲んだ二人が目に入った。テーブルにはティーポットにティーカップ、中央には三段のケーキスタンドが置かれている。どうやら茶会の最中だったらしい。だがそれにしては小精霊が慌てすぎだ。周囲が騒がしい。
突然精霊王が現れたから無理もないか?
あんま王サマって畏まらないで欲しいんだが。
精霊王とされているが朔弥にはその自覚はない。服も常世で着用していた服をそのまま着ている。どこで洗濯してるのか白い手が新しい服を毎朝持ってきてくれるから問題はない。シャツにジーパン、ショートブーツ。そこらにいる普通の大学生だ。
慌て飛び交うさまざまな小精霊がテーブルに椅子を二脚準備している。空いている一脚と合わせて三人分の椅子が用意された。
これほどの小精霊を使役している。強いオーラのようなものが二人から感じられた。光の大精霊や樹木の大精霊以外の大精霊を初めて見た。
へぇ?この二人、大精霊か。どちらが精神?
精霊界には三つの身分がある。
トップは精霊王。唯一無二の存在。その下には大精霊。大精霊は属性ごとに存在するが大精霊が不在な属性もあるため多くはいない。そして数多の小精霊。力の強弱はあれど精霊界にいる精霊のほとんどは小精霊だ。
その希少な大精霊二人が席を立ち朔弥に頭を下げる。
「陛下におかれましてはご機嫌麗しゅう」
「あ、そういうのいらないから。突然来ちゃって悪かったな。座っていいかな?あ、二人も座って。話がしたい」
「畏れ多いことでございます」
美しく着飾った女性がしっとりと受け答えする。もう一人は顔を伏せているが無言だ。
アポ無しで来たのはこちらだ。畏まられても困る。いっそ無遠慮に朔弥は腰掛けてみた。腹を割った話をしたい。ルキナとファウナも腰掛けた。朔弥は席についた二人を改めて観察した。
一人は打ちたての鋼のように黒い銀髪を有している。髪はバッサリのショート。深いスリッドの入った太ももを露出された服を着ているが健康的な地黒の肌とキツめな金色の猫目のせいで色気より威圧的な印象が強い。席についても無言だ。
もう一人は氷のようにふわふわの紫がかった銀髪を有している。ふんだんにフリルのついた水色のドレスを纏い深窓の令嬢のように上品である。先程から受け答えしているのはこちらの紫銀だ。
どちらも美しい女性だが見た目は正反対の印象だ。話が合いそうにも見えない。ソワソワと何か言いたげなファウナを朔弥が視線で制する。ファウナは王のそばにいる。おそらく高位の大精霊だ。お目付けが居ては自由な会話ができない。
そこでふと何か違和感を覚えた。花園の香りに紛れているが茶会には似つかわしくない鼻につく匂い。そして小精霊たちの動揺。
ふぅん。なるほどね?
朔弥がニヤリと笑った。
「こういう茶会はよくやるの?」
「いえ、それほどではございません」
「これが茶か?どんな味だ?」
手を伸ばした先のティーポットを紫銀が先に手に取った。
「これは冷めております。新しいものを作らせましょう」
「構わん。皆と同じものが飲みたい」
「ですが」
「精霊界の酒は飲んだことがない。旨いのか?」
辺りに漂う小精霊たちがギクリと固まる。ファウナから盛大なため息が出た。先程から何か言いたげだったから気がついていたか。
優雅な茶会が実は酒盛りか。これは話が合いそうだ。
そこで沈黙を守っていた黒銀の大精霊が頭を抱えて絶叫した。
「あーッやっぱり秒でバレたじゃねぇか!誤魔化せるわけねぇだろ?!」
「まだティーカクテルでも誤魔化せたのに今ので台無しですわ」
「ああ、その可能性もあったか」
朔弥が声を立てて笑った。だがロシアンティーと言い訳するにもこの酒臭さではダメだろう。
「で?今日はわざわざこんなとこまで何のようだ?ワガキミ?ここにはあんたの相手をする女はいないぜ?」
頭をかきむしり早々に腹を割った黒銀が遠慮なく問いかけてくる。気が短い。眼光が鋭い。王相手であろうともへつらわない。気に入らなければ容赦なく牙を剥く。見た目通りの豪胆な性格のようだ。
ふぅん?歴代の王はどうだったか知らないが、俺はこういうのは嫌いじゃない。別の意味でだが。
朔弥がほのかに微笑んだ。
「話が合う大精霊がいるって聞いたから会いにきた。確かにいいトモダチになれそうだ」
まあ言うなれば呑み仲間だが。ぐいぐい来てもらった方がこっちもやりやすい。生々しくない。男子校卒としては体育会系のノリの方が馴染み深くていい。
そういう意味ではありません、とファウナが目を伏せている。ちっとも色気がなくて残念そうだ。
朔弥が無言でティーカップを紫銀に差し出せば紫銀が優雅に酒を注いだ。安酒の匂いがする。さらにその味に朔弥が思いっきり顔を顰めた。
「なんだこれ?恐ろしく強いな。キッつ!」
「あら?お口に合いませんか?」
「これ旨いか?それに酒のアテはケーキかよ?」
「ベストマッチですわ」
紫銀がティーカップを啜りマカロンを齧っている。見た目は優雅なお茶会だ。その様子に朔弥がゾッとした。
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