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二人の王編
解放
しおりを挟む色々言いたかった。そんなはずない。そんなわけない。だが内なるハイドが間違いないという。全てそれで符合すると。
「‥‥‥‥『核』とはなんだ?」
しばらくしたのち、レオンハルトは枯れた声で最後の疑問を問う。ハイドが止めたが欲求が勝った。ここまでこの男が言い淀む存在とはなんだ?
ツェーザルが目を閉じる。
「我ら双子には妹がいた。我らはあれに夢中だった。溺愛していた。そして彼女は請われて始祖王の正妃となった。王家の守護女神像、あれが彼女だ。」
槍と盾をもつ王家の守護女神。名はなんと言ったか。記憶に靄がかかり思い出せない。まるで忘れさせようとしているようだ。思い出そうとすれば拒否するかのようにひどい頭痛がした。
王宮や神殿、そこかしこにあの像がある。運命を司り、かつて膨大な知識と輝かしい勝利を王家にもたらしたとされる伝説があった。王の死に際にはその魂を連れ去るために天馬を駆って彼方より駆けつける告死の乙女。
ああ、まずい。ハイドが止める。
—— これ以上は聞くな!名を聞けばきっと。
あの狂気が目を覚ます。
レオンハルトの鼓動がさらに速くなった。血が騒ぐ。
「しかし彼女は『核』の適性を持っていた。だから秘術の人身御供として生きたまま使われた。我が強行した。そうしなければ全て滅んだから。」
ツェーザルの一人称がおかしい。だがしっくりきた。この男はラウエン家初代当主シグルズなのだから。
「兄者はあれを取られて激怒した。王としては理解しても男としては受け入れられなかった。だから狂った。止めたが間に合わなかった。辿り着こうとしたのだろう、ブリュンヒルデの許に。」
ブリュンヒルデ。
その名にレオンハルトの狂気が反応する。全てを飲み込むかの勢いで一気に黒い滲みが白い世界に広がった。ハイドが警告を出す。
—— 逃げろ!巻き込まれるぞ!
レオンハルトは弾かれるように走り出した。封印碑がどこにあるかわかる。感じられるようになった。まるで導かれるように真っ直ぐそちらに向かう。
アレックスの制止が聞こえたが、すぐに気にならなくなった。
そうしてレオンハルトは深淵の中央に立った。森なのにそこだけ木がなく開けている。魔素もない澄みきった空気。その中央に封印碑はあった。
温室にあったものより遥かに大きい。そしてどす黒い。
天高くそびえるそれは魔素を吸って肥大した黒きオベリスク。びっしりと古代文字が刻まれているのは同じだ。おそらく温室のものが元々の大きさだったのだろう。
なぜこの存在を忘れていたのだろうか。
レオンハルトはそれを見上げ手で触れた。ひんやりとした感触とは裏腹に血がたぎる感じがする。ツェーザルはこれを怖いと言っていた。
否、これは歓喜で慄いているのだ。この中にあるであろう『核』に。
身の中の黒き闇がここから出せと暴れている。ハイドが叫んでいる。
—— 無理だ!こんなバケモノ、敵わないぞ!
「大丈夫。勝ってみせる。」
—— 逃げろ!闇に落ちる!喰われるぞ!
「逃げない。闇に落ちない。喰われない。俺が喰ってやる。」
その語りとは裏腹にレオンハルトは微笑んだ。そして闇を解放した。
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