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第106話 隠された記憶③
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「ええそうよ。このまま死んでしまう前に折角だからね、彼がベヒモス化した経緯を調べようとしたのよぅ」
「……わが姉ながら悪趣味な……そんなものを調べてどうするというのじゃ?」
「お姉ちゃんも監視官だからね? ベヒモスに対する研究は主業ってわけよ」
先生の能力は『念写』
カメラに写した相手の過去の様子を写真として表現する事ができる。
「……それで、調べてどうなったんですか?」
私が聞くと、先生は口をへの字に曲げて肩をすくめる。
「……捕まえた時期から順に遡《さかのぼ》って念写してみたんだけれど、ちょうど一週間くらい過去に行った所でプツンと念写が途切れたわ」
「念写が途切れたじゃと? 写せなくなったと言うことか、何故じゃ??」
「わからないわ、こんな事はお姉ちゃんも初めてでね。時間が古すぎて念写が届かない場合はあるけれども、それでも徐々にぼやけていく感じで……けれども今回の場合はいきなり真っ暗。何も写らなくなっちゃたのよ。 ……それも、ある一時期だけの様子がね」
「一時期だけ? それって、どういう事じゃ……??」
「考えられるのは、その時点の記憶が何らかの原因で消されてしまった場合だけれど……」
「……記憶喪失とか??」
顎を指で揉みながら菜々ちん。
「いいえ、その程度ならば私の念写は掘り起こしてしまうわ。……これは完全に記憶を消されているか、厳重なプロテクトを掛けられているかのどちらかだと思うの」
「……誰かがそれをやったと言うのか?」
「そうね。記憶の完全消去なんて自然に出来ることじゃないし、それこそ物理的に脳を破壊――例えば、潰したり燃やしたりとかなら分かるけど、彼の記憶が途切れているのはほんの10分程度なのよ? そんな一箇所だけ綺麗に消すなんて、そんな方法では無理があるわ」
「……そうなると、記憶操作系の能力者ですか? しかしそんな人がいたとして何故そんな事を……??」
「わからないわね。……それに私の念写をブロックするほどの記憶系能力者なんて日本には居ないはず――いえ、世界にだっていやしないわ」
苛立ちを隠そうともせず、死ぬ子先生は爪を噛む。
「暗闇の10分ですか……それは確かに気になりますね」
「そう、しかもその直後に彼はベヒモス化しているのよ」
「なんじゃと!? それではまるで、こやつがベヒモス化した原因を隠すかのような現象ではないか??」
「……偶然にしては都合が良すぎますね、いえ、これはもうハッキリと誰かの意図を感じますよ。まるで、そこに知られてはならない秘密があるかのようですね」
眼鏡をこれでもかというくらいに上げて菜々ちんは目を光らせる。
こういうきな臭い展開、彼女は好きそうである。
「……なるほどな、それでヒロインに存在値ごと回復させて、闇に消された記憶をも修復させようとしておるのじゃな?」
百恵ちゃんがそう言うと、三人の視線が一斉に私に向いた。
「え~~と……どう、ラミア? この人、もとに戻せるかなぁ~~?」
『きゅきゅきゅ~~……』
「ああ、そうか、そうだね」
私達の会話を固唾を呑んで見る三人。
私以外の人にはラミアの言葉は理解できないのだ。
「身体はどうにか出来るけど……記憶まではやってみないとわからないって」
「それはそうね。いいわ、早速やって頂戴」
そう先生は言うが、
「でもいま精気が足りないから無理だって」
「は? 足りない? どうして!?」
「……さっき先生を若返らせたからですよ?」
「まったく、余計な事をさせおって……ではほれラミア、こんな姉貴の精気で良ければいくらでも食らうが良い」
先生を羽交い締めにしてラミアの前に突き出す百恵ちゃん。
なるほど、使った精気は本人から奪い返せばいいのか。
「ば、馬鹿!! やめなさいっ!! お姉ちゃん元に戻っちゃうと腰とか肩とか首の裏とか色んな所が重だるくなって口の中に粘り気が出るから!!」
「ギリ二十代のくせにそれは老けすぎではないか!? 不規則な生活と深酒が原因じゃ、自業自得じゃからおとなしく観念せい!!」
「いや~~~~~っ!!!! やめてぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~!!!!」
絶叫する死ぬ子先生だが、いま先生を元に戻したら、またさっきのようなブレザーおばさんが出現してしまう。正直、私もあれはもう見たくはない。
「あの~~……べつに無理して精気を吸わなくても、普通に食事すれば回復するんですけど……」
まぁ、この間のように植物から吸収してもいいんだが、いろいろ試してみた結果、やはり雑草程度では取れる精気の量はたかが知れている。
もっと大きな樹木とかならそれなりの精気を吸収出来るが、出来るものならやはり動物からの方が格段に効率がいい。
さらに言うと精気を吸収したからといって食事をしなくてもいい訳ではなくて、身体に必要なミネラルやビタミンなどの養分は食べて得なければならない。
とどのつまり精気吸収なんて能力はあくまで緊急時のドーピングみたいなもので普段はキチンと食事から摂取しないと身体がもたなくなるのである。
「そ、そ、そ、それならば上階に院内レストランがあるから、そこでお昼にしましょっ!! よ~~し、先生今日は奮発してみんなに奢っちゃうぞ~~?」
渡りに船とばかりに笑顔になって、死ぬ子先生は頬を赤らめ皆ににそう言った。
彼女は気が付いていなかった。
自分が今、とんでもないミスを犯したことを。
私にごはんを奢ると言った大失言をしてしまったことを。
「……わが姉ながら悪趣味な……そんなものを調べてどうするというのじゃ?」
「お姉ちゃんも監視官だからね? ベヒモスに対する研究は主業ってわけよ」
先生の能力は『念写』
カメラに写した相手の過去の様子を写真として表現する事ができる。
「……それで、調べてどうなったんですか?」
私が聞くと、先生は口をへの字に曲げて肩をすくめる。
「……捕まえた時期から順に遡《さかのぼ》って念写してみたんだけれど、ちょうど一週間くらい過去に行った所でプツンと念写が途切れたわ」
「念写が途切れたじゃと? 写せなくなったと言うことか、何故じゃ??」
「わからないわ、こんな事はお姉ちゃんも初めてでね。時間が古すぎて念写が届かない場合はあるけれども、それでも徐々にぼやけていく感じで……けれども今回の場合はいきなり真っ暗。何も写らなくなっちゃたのよ。 ……それも、ある一時期だけの様子がね」
「一時期だけ? それって、どういう事じゃ……??」
「考えられるのは、その時点の記憶が何らかの原因で消されてしまった場合だけれど……」
「……記憶喪失とか??」
顎を指で揉みながら菜々ちん。
「いいえ、その程度ならば私の念写は掘り起こしてしまうわ。……これは完全に記憶を消されているか、厳重なプロテクトを掛けられているかのどちらかだと思うの」
「……誰かがそれをやったと言うのか?」
「そうね。記憶の完全消去なんて自然に出来ることじゃないし、それこそ物理的に脳を破壊――例えば、潰したり燃やしたりとかなら分かるけど、彼の記憶が途切れているのはほんの10分程度なのよ? そんな一箇所だけ綺麗に消すなんて、そんな方法では無理があるわ」
「……そうなると、記憶操作系の能力者ですか? しかしそんな人がいたとして何故そんな事を……??」
「わからないわね。……それに私の念写をブロックするほどの記憶系能力者なんて日本には居ないはず――いえ、世界にだっていやしないわ」
苛立ちを隠そうともせず、死ぬ子先生は爪を噛む。
「暗闇の10分ですか……それは確かに気になりますね」
「そう、しかもその直後に彼はベヒモス化しているのよ」
「なんじゃと!? それではまるで、こやつがベヒモス化した原因を隠すかのような現象ではないか??」
「……偶然にしては都合が良すぎますね、いえ、これはもうハッキリと誰かの意図を感じますよ。まるで、そこに知られてはならない秘密があるかのようですね」
眼鏡をこれでもかというくらいに上げて菜々ちんは目を光らせる。
こういうきな臭い展開、彼女は好きそうである。
「……なるほどな、それでヒロインに存在値ごと回復させて、闇に消された記憶をも修復させようとしておるのじゃな?」
百恵ちゃんがそう言うと、三人の視線が一斉に私に向いた。
「え~~と……どう、ラミア? この人、もとに戻せるかなぁ~~?」
『きゅきゅきゅ~~……』
「ああ、そうか、そうだね」
私達の会話を固唾を呑んで見る三人。
私以外の人にはラミアの言葉は理解できないのだ。
「身体はどうにか出来るけど……記憶まではやってみないとわからないって」
「それはそうね。いいわ、早速やって頂戴」
そう先生は言うが、
「でもいま精気が足りないから無理だって」
「は? 足りない? どうして!?」
「……さっき先生を若返らせたからですよ?」
「まったく、余計な事をさせおって……ではほれラミア、こんな姉貴の精気で良ければいくらでも食らうが良い」
先生を羽交い締めにしてラミアの前に突き出す百恵ちゃん。
なるほど、使った精気は本人から奪い返せばいいのか。
「ば、馬鹿!! やめなさいっ!! お姉ちゃん元に戻っちゃうと腰とか肩とか首の裏とか色んな所が重だるくなって口の中に粘り気が出るから!!」
「ギリ二十代のくせにそれは老けすぎではないか!? 不規則な生活と深酒が原因じゃ、自業自得じゃからおとなしく観念せい!!」
「いや~~~~~っ!!!! やめてぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~!!!!」
絶叫する死ぬ子先生だが、いま先生を元に戻したら、またさっきのようなブレザーおばさんが出現してしまう。正直、私もあれはもう見たくはない。
「あの~~……べつに無理して精気を吸わなくても、普通に食事すれば回復するんですけど……」
まぁ、この間のように植物から吸収してもいいんだが、いろいろ試してみた結果、やはり雑草程度では取れる精気の量はたかが知れている。
もっと大きな樹木とかならそれなりの精気を吸収出来るが、出来るものならやはり動物からの方が格段に効率がいい。
さらに言うと精気を吸収したからといって食事をしなくてもいい訳ではなくて、身体に必要なミネラルやビタミンなどの養分は食べて得なければならない。
とどのつまり精気吸収なんて能力はあくまで緊急時のドーピングみたいなもので普段はキチンと食事から摂取しないと身体がもたなくなるのである。
「そ、そ、そ、それならば上階に院内レストランがあるから、そこでお昼にしましょっ!! よ~~し、先生今日は奮発してみんなに奢っちゃうぞ~~?」
渡りに船とばかりに笑顔になって、死ぬ子先生は頬を赤らめ皆ににそう言った。
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