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第107話 隠された記憶④
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「牛丼、親子丼、カツ丼、麻婆丼、ピザ丼……と」
死ぬ子先生から奪い取った財布を片手に、私は券売機のボタンを連打する。
一ラウンド目は、日替わりランチと肉野菜炒め定食、焼き魚定食にミックスフライ定食を食べたので、次はおしとやかに丼もので攻めたいと思う。
病院内のレストランだけあって低糖質ランチなどといった健康志向メニューも置いてあるようだが、残念ながら私の目には映らない。
やはり男ならガッ――――、女でもガッツリ食わねばならんのだ。
「どっこりゃせ……と、」
ドンッとテーブルが揺れる。
「……店内で飯を運ぶのにオカモチを渡されているやつなど初めて見たぞ……」
百恵ちゃんが呆れて私を見ている。
私の皿だけでテーブル一つが埋まってしまっているので、彼女ら三人は隣のテーブルに着いていた。
菜々ちんも、笑顔でパスタを咥えたまま固まっている。どうやら私の勇姿に見とれているようだ。
死ぬ子先生は……返事がない、どうやら屍のようだ。
「そお? ……私いままで貧乏で、外食なんかほとんどしたことなかったから……これが普通だと思ったけど……??」
「経験が無くとも常識でわかるじゃろうが。 ……まぁよい……おヌシの食いっぷりを見ているだけで吾輩まで満腹になりそうじゃ」
そう言って私の丼を見ようとはせず、自分のさば味噌定食をやっつけにかかる百恵ちゃん。体調でも悪いのだろうか?
私はカツ丼をかっ込みながらデザートはどうしようかと思案を始める。
と、店のガラス越しから見える駐車場に見たことのある車が停まっているのに気が付いた。
トヨタパブリカ。
所長の愛車である。
「あれ? 所長もここに来ているのかな?」
私が呟くと、ガバっと百恵ちゃんが反応してこっちを向いた。
「なぬ!? オ、オジサマが!! ど、どこじゃ、どこじゃっ!!!!」
慌てて辺りを見回し、髪をセットし始める百恵ちゃん。
ツインテールのテールをいくらシゴイたところで何もならんと思うが……。
「ほら、あそこ……あれ所長の車でしょ?」
指差して教えてあげる。
あんな車そうそうお目にかかるもんじゃない、まず間違いなく所長の物だろう。
「おおっ、本当じゃ!! これはいかん!! おめかしせねば!!」
そしてオシボリで顔を拭き出す彼女。いや、それおっさんだから。
「でも車の中には居ないみたいたけど? 病院に入ったのかな?
……もしかして、どこか悪いのかな……?」
「ば、馬鹿な事を言うものではない!! オ、オジサマが病気など……あるわけ無いではないか!?」
「いやいや……でも所長ってもう五十も半ばでしょう? いろいろ抱えてるんじゃないかなぁ? バイト先の工場長も薬が主食だって言ってたし……」
「こ、こ、こ……更年期障害とかか??」
どうしてそんな言葉知っているんだろうかこの小学生は……?
「そんなんじゃなくて、普通に胃潰瘍とか高血圧とか……まぁ癌……とか?」
「ガンっ!????」
その言葉の響きにショックを受ける彼女。
みるみる顔が青ざめて、目には涙が溢れてくる。
「いや、例えばよ? 例えば!!」
所長が絡むと、どうしてこの子は年相応にか弱くなるのだ?
しかし自分で言って気が付いたのだが、もし本当に癌だとしても私の能力を使えばもしかして治せるのでは無いだろうか?
いや、きっと治せる。
となれば……。
私は店外の廊下を歩く患者さんを眺めて呟く。
「……あの人たち、私の力で治療出来ないかな……?」
目の先には腰から管をぶら下げてヨロヨロと歩くご老人や、目が見えないのか介助されながらも手探りの少年が歩いていた。
おそらくあの人たちは……治療して治る類の病では無さそうだ。
でも、私の能力、私のラミアならば彼らを闇から救うことが出来はずだ。
しかし、その言葉に最初に噛み付いたのは死ぬ子先生だった。
「だめよ。……言ったでしょう?
あなたのその能力は世間に知られたら危険だって」
テーブルに突っ伏したまま、しかし目だけは力強く私を睨んできた。
「……で、でもちょっとくらいなら何とか……」
「――――そのちょっとが、命取り、になるんだなぁ~~、これが」
突然。
マフっと私は背後から抱きしめられた。
「どっひょいっ!!!!」
びっくりして五センチほど浮き上がって振り返ると、そこには所長のスケベな顔がドアップで置かれていた。
「オ、オ、オジサマっ!!!!♡♡」
「は、離れろぉ~~~~この痴漢オヤジめぇ~~~~っ!!」
若いおなごから正反対のリアクションを同時に受けつつ、所長は私から離れ、ネクタイを直す。
い、いったいどこから現れたんだ!? この変態オヤジめ!!
「やあ、キミたち。奇遇だねえ、こんな所で合うなんてさ?
……ところで、さ。いま僕の悪口言ってなかったぁ? 更年期障害とか癌とかさ?」
お互い指を差し合う私たち。
「んま、いいんだけどさ。そんな事より宝塚くん、さっきの発言はちょっと見過ごせないよぉ~~~~?」
一般人に私の能力を使おうとしたことを言っているのだろう。
「でも……ほんの少しなら、私の正体を隠して治療するとか……考えれば方法は見付かると思うんです……けど」
所長を初め、死ぬ子先生、百恵ちゃん、菜々ちんに至るまで私を白い目で見る。
どうやら、私の意見に賛同してくれる目は、そこには無いみたいだ。
死ぬ子先生から奪い取った財布を片手に、私は券売機のボタンを連打する。
一ラウンド目は、日替わりランチと肉野菜炒め定食、焼き魚定食にミックスフライ定食を食べたので、次はおしとやかに丼もので攻めたいと思う。
病院内のレストランだけあって低糖質ランチなどといった健康志向メニューも置いてあるようだが、残念ながら私の目には映らない。
やはり男ならガッ――――、女でもガッツリ食わねばならんのだ。
「どっこりゃせ……と、」
ドンッとテーブルが揺れる。
「……店内で飯を運ぶのにオカモチを渡されているやつなど初めて見たぞ……」
百恵ちゃんが呆れて私を見ている。
私の皿だけでテーブル一つが埋まってしまっているので、彼女ら三人は隣のテーブルに着いていた。
菜々ちんも、笑顔でパスタを咥えたまま固まっている。どうやら私の勇姿に見とれているようだ。
死ぬ子先生は……返事がない、どうやら屍のようだ。
「そお? ……私いままで貧乏で、外食なんかほとんどしたことなかったから……これが普通だと思ったけど……??」
「経験が無くとも常識でわかるじゃろうが。 ……まぁよい……おヌシの食いっぷりを見ているだけで吾輩まで満腹になりそうじゃ」
そう言って私の丼を見ようとはせず、自分のさば味噌定食をやっつけにかかる百恵ちゃん。体調でも悪いのだろうか?
私はカツ丼をかっ込みながらデザートはどうしようかと思案を始める。
と、店のガラス越しから見える駐車場に見たことのある車が停まっているのに気が付いた。
トヨタパブリカ。
所長の愛車である。
「あれ? 所長もここに来ているのかな?」
私が呟くと、ガバっと百恵ちゃんが反応してこっちを向いた。
「なぬ!? オ、オジサマが!! ど、どこじゃ、どこじゃっ!!!!」
慌てて辺りを見回し、髪をセットし始める百恵ちゃん。
ツインテールのテールをいくらシゴイたところで何もならんと思うが……。
「ほら、あそこ……あれ所長の車でしょ?」
指差して教えてあげる。
あんな車そうそうお目にかかるもんじゃない、まず間違いなく所長の物だろう。
「おおっ、本当じゃ!! これはいかん!! おめかしせねば!!」
そしてオシボリで顔を拭き出す彼女。いや、それおっさんだから。
「でも車の中には居ないみたいたけど? 病院に入ったのかな?
……もしかして、どこか悪いのかな……?」
「ば、馬鹿な事を言うものではない!! オ、オジサマが病気など……あるわけ無いではないか!?」
「いやいや……でも所長ってもう五十も半ばでしょう? いろいろ抱えてるんじゃないかなぁ? バイト先の工場長も薬が主食だって言ってたし……」
「こ、こ、こ……更年期障害とかか??」
どうしてそんな言葉知っているんだろうかこの小学生は……?
「そんなんじゃなくて、普通に胃潰瘍とか高血圧とか……まぁ癌……とか?」
「ガンっ!????」
その言葉の響きにショックを受ける彼女。
みるみる顔が青ざめて、目には涙が溢れてくる。
「いや、例えばよ? 例えば!!」
所長が絡むと、どうしてこの子は年相応にか弱くなるのだ?
しかし自分で言って気が付いたのだが、もし本当に癌だとしても私の能力を使えばもしかして治せるのでは無いだろうか?
いや、きっと治せる。
となれば……。
私は店外の廊下を歩く患者さんを眺めて呟く。
「……あの人たち、私の力で治療出来ないかな……?」
目の先には腰から管をぶら下げてヨロヨロと歩くご老人や、目が見えないのか介助されながらも手探りの少年が歩いていた。
おそらくあの人たちは……治療して治る類の病では無さそうだ。
でも、私の能力、私のラミアならば彼らを闇から救うことが出来はずだ。
しかし、その言葉に最初に噛み付いたのは死ぬ子先生だった。
「だめよ。……言ったでしょう?
あなたのその能力は世間に知られたら危険だって」
テーブルに突っ伏したまま、しかし目だけは力強く私を睨んできた。
「……で、でもちょっとくらいなら何とか……」
「――――そのちょっとが、命取り、になるんだなぁ~~、これが」
突然。
マフっと私は背後から抱きしめられた。
「どっひょいっ!!!!」
びっくりして五センチほど浮き上がって振り返ると、そこには所長のスケベな顔がドアップで置かれていた。
「オ、オ、オジサマっ!!!!♡♡」
「は、離れろぉ~~~~この痴漢オヤジめぇ~~~~っ!!」
若いおなごから正反対のリアクションを同時に受けつつ、所長は私から離れ、ネクタイを直す。
い、いったいどこから現れたんだ!? この変態オヤジめ!!
「やあ、キミたち。奇遇だねえ、こんな所で合うなんてさ?
……ところで、さ。いま僕の悪口言ってなかったぁ? 更年期障害とか癌とかさ?」
お互い指を差し合う私たち。
「んま、いいんだけどさ。そんな事より宝塚くん、さっきの発言はちょっと見過ごせないよぉ~~~~?」
一般人に私の能力を使おうとしたことを言っているのだろう。
「でも……ほんの少しなら、私の正体を隠して治療するとか……考えれば方法は見付かると思うんです……けど」
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どうやら、私の意見に賛同してくれる目は、そこには無いみたいだ。
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