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第123話 隠された記憶⑳
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「よし、まず吾輩が救助に向かう。おヌシらはここで待機し、相手の出方を伺え」
だが、百恵の判断は426番の予想とは違っていた。
彼女は自分がまず矢面に立つと言ったのだ。
「は? そ、それは危険です!! 先頭で行けば確実にヤツの罠に掛かります!!」
323番が百恵を止めるが、
「だからじゃろうが?」
とジロリと睨み返し答える百恵。
「渦中の栗を取るのは、それに相応しい実力の持ち主じゃないといかんじゃろ?
吾輩なら、ヤツがどんな手を使ってきてもしのいでみせるわ」
「し……しかし」
なおも食い下がろうとする323番だが、
「吾輩が何としてでもオジサ――――所長を救出し、ヤツを引きつけておくから、おヌシらはそれを抱えてこの場を離れよ。それがおヌシらの役目じゃ!!」
そう言うと百恵は影から飛び出し、所長の元へと走り出した。
走りながら百恵は考える。
囮を使って敵を引きつける――――この場合、絶対に必要な条件が一つある。
それは自分の位置を相手に知られないこと。
でなければ、いくら敵をおびき出したところで優位な条件で戦えない。
それならばまだ人質として抱えていた方がましなのだ。
そして瞬の位置はこちらはもう把握している。
タンクの下にマヌケな影が見える。
馬鹿め、それで身を隠しているつもりか?
お粗末な上に、こちらには最恩菜々というチートレベルの偵察者がいるのだ。
おそらく囮に気を取られ、担ぎでもしている隙きに、その超人的なスピードと跳躍力でこちらに襲いかかるつもりなのだろう。
だが、それが読めていればいくら早かろうが百恵の圧縮爆弾で対応できる。
「ガルーダッ!!!!」
両手に結界の青い稲妻が走る。
同時に、所長と瞬の直線状を塞ぐように圧縮空気の種が十数個出現する。
それはまるで空中に設置した地雷のように相手の進路を塞いだ。
これを躱して百恵を襲おうとするならば、空調機の上を駆け、くの字に飛ばねばならない。
その僅かなロスがこの作戦を台無しにするのだ。
「ふん、所詮はベヒモスの浅知恵よっ!!」
百恵は倒れている所長の元に辿り着いた。
瞬はまだ動いていない。
射線を封じられた事で襲うのを断念したか?
ならば、まだ知恵は回る方だと褒めてやってもいい。
そう思考し、所長を抱えあげる。
そこへ――――ヌッと真っ赤に染められた手が伸びて来た。
「なっ!???」
それに気付き目を向けると、空調機の隙間に全身の皮が剥がれた血だらけになった人間が――――!!
「――――瞬っ!????」
それは全身の皮を剥いだ瞬の変わり果てた姿だった。
それを見た瞬間、百恵は浅知恵は自分の方だったと後悔する。
囮は所長だけでは無かった。
タンクの下に潜ませているヤツの皮も囮だったのだ。
痛覚のない瞬は自ら自分の皮を剥ぎ、タンクの下に潜ませていたのだ。
人形に見せた膨らみはベヒモス化によって強化されたヤツの能力、空中浮揚《レビテーション》がなせる技なのだろう。
瞬が放つ剛力の拳が百恵を襲う。
ベヒモス化によって限界突破したその筋力は、たとえ元が非力な優男でもヘビー級ボクサーのそれに匹敵する威力。
百恵のような幼女など一撃で致命傷になるだろう。
――――しかし、
「――――ふん、だが甘いぞ?」
百恵は不敵な笑みを浮かべてその拳を迎え撃つ。
瞬の拳がその小さな頭を粉砕しようとしたそのとき、
シュッ!!
と、小さな音がして空気の種が現れる。
そしてそれはすぐに膨張し、瞬時に百恵と拳の空間に留まった。
それは極限まで威力を押さえた空気爆弾。
爆破力こそ無いに等しいが、その代わり瞬間的に弾力性を生むことが出来る。
いざという時のため、百恵が常に充填している自己流のエアバッグであった。
――――ぐにょんっ!!!!
鈍い音がして瞬の拳が振り抜かれる。
しかしそれは百恵の身体には届かず、空気の塊ごと彼女を吹き飛ばした。
「隊長っ!!!!」
そこへ状況を凝視していた323番と426番が飛び出してくる。
「オジサマを頼むっ!!!!」
百恵は吹き飛ばされながらも、もう一度、エアバックを作動させる。
――――ドムッ!!
それは所長を飛ばして部下たちの元へと届けた。
「了解っ!!」
ダラララララララララッ!!!!
所長を回収し、走る426番、その後を瞬を牽制しながら追う323番。
百恵は着地し、体勢を整える。
銃弾を食らった瞬はよろめくが、すぐに踏みとどまり百恵に襲いかかろうとする。
だが、323番の牽制のおかげで百恵の能力はすでに充填《リロード》済み。
「……吾輩の恩師に手を出すとはな。貴様はもう百回死んでも許さんぞ!!」
「――――っ!?」
座りきった百恵の目が、感情が無いはずの瞬を震わせた。
ぶわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――!!!!
瞬時、周囲に埋め尽くされる空気の種。
その数、無数。
もはや逃げる隙間など一ミリたりとも無い。
水をも通さぬ結束で並べられた圧縮空気の種は、やがて一つの牢獄へと変わっていく。
「雄叫べ!!ガルーダァァァァァァァッ!!!!」
百恵の叫びとともに背中から霊長が羽を広げる。
それは百恵の身体を毟るように締め付けるが、やがて諦め、その能力を大きく解放した。
ドムドムッドドドドッドドッドドドドドドドドドドドドドドドドドンッッ!!!!
そして弾ける圧縮空気。
それは周囲の機械や配管、貯水タンクをも巻き込み吹き飛ばす。
その爆心地にいた瞬の身体は散り散りに引き裂かれ、残ったのは欠けた頭部と剥き出しになった脊椎だけであった。
だが、百恵の判断は426番の予想とは違っていた。
彼女は自分がまず矢面に立つと言ったのだ。
「は? そ、それは危険です!! 先頭で行けば確実にヤツの罠に掛かります!!」
323番が百恵を止めるが、
「だからじゃろうが?」
とジロリと睨み返し答える百恵。
「渦中の栗を取るのは、それに相応しい実力の持ち主じゃないといかんじゃろ?
吾輩なら、ヤツがどんな手を使ってきてもしのいでみせるわ」
「し……しかし」
なおも食い下がろうとする323番だが、
「吾輩が何としてでもオジサ――――所長を救出し、ヤツを引きつけておくから、おヌシらはそれを抱えてこの場を離れよ。それがおヌシらの役目じゃ!!」
そう言うと百恵は影から飛び出し、所長の元へと走り出した。
走りながら百恵は考える。
囮を使って敵を引きつける――――この場合、絶対に必要な条件が一つある。
それは自分の位置を相手に知られないこと。
でなければ、いくら敵をおびき出したところで優位な条件で戦えない。
それならばまだ人質として抱えていた方がましなのだ。
そして瞬の位置はこちらはもう把握している。
タンクの下にマヌケな影が見える。
馬鹿め、それで身を隠しているつもりか?
お粗末な上に、こちらには最恩菜々というチートレベルの偵察者がいるのだ。
おそらく囮に気を取られ、担ぎでもしている隙きに、その超人的なスピードと跳躍力でこちらに襲いかかるつもりなのだろう。
だが、それが読めていればいくら早かろうが百恵の圧縮爆弾で対応できる。
「ガルーダッ!!!!」
両手に結界の青い稲妻が走る。
同時に、所長と瞬の直線状を塞ぐように圧縮空気の種が十数個出現する。
それはまるで空中に設置した地雷のように相手の進路を塞いだ。
これを躱して百恵を襲おうとするならば、空調機の上を駆け、くの字に飛ばねばならない。
その僅かなロスがこの作戦を台無しにするのだ。
「ふん、所詮はベヒモスの浅知恵よっ!!」
百恵は倒れている所長の元に辿り着いた。
瞬はまだ動いていない。
射線を封じられた事で襲うのを断念したか?
ならば、まだ知恵は回る方だと褒めてやってもいい。
そう思考し、所長を抱えあげる。
そこへ――――ヌッと真っ赤に染められた手が伸びて来た。
「なっ!???」
それに気付き目を向けると、空調機の隙間に全身の皮が剥がれた血だらけになった人間が――――!!
「――――瞬っ!????」
それは全身の皮を剥いだ瞬の変わり果てた姿だった。
それを見た瞬間、百恵は浅知恵は自分の方だったと後悔する。
囮は所長だけでは無かった。
タンクの下に潜ませているヤツの皮も囮だったのだ。
痛覚のない瞬は自ら自分の皮を剥ぎ、タンクの下に潜ませていたのだ。
人形に見せた膨らみはベヒモス化によって強化されたヤツの能力、空中浮揚《レビテーション》がなせる技なのだろう。
瞬が放つ剛力の拳が百恵を襲う。
ベヒモス化によって限界突破したその筋力は、たとえ元が非力な優男でもヘビー級ボクサーのそれに匹敵する威力。
百恵のような幼女など一撃で致命傷になるだろう。
――――しかし、
「――――ふん、だが甘いぞ?」
百恵は不敵な笑みを浮かべてその拳を迎え撃つ。
瞬の拳がその小さな頭を粉砕しようとしたそのとき、
シュッ!!
と、小さな音がして空気の種が現れる。
そしてそれはすぐに膨張し、瞬時に百恵と拳の空間に留まった。
それは極限まで威力を押さえた空気爆弾。
爆破力こそ無いに等しいが、その代わり瞬間的に弾力性を生むことが出来る。
いざという時のため、百恵が常に充填している自己流のエアバッグであった。
――――ぐにょんっ!!!!
鈍い音がして瞬の拳が振り抜かれる。
しかしそれは百恵の身体には届かず、空気の塊ごと彼女を吹き飛ばした。
「隊長っ!!!!」
そこへ状況を凝視していた323番と426番が飛び出してくる。
「オジサマを頼むっ!!!!」
百恵は吹き飛ばされながらも、もう一度、エアバックを作動させる。
――――ドムッ!!
それは所長を飛ばして部下たちの元へと届けた。
「了解っ!!」
ダラララララララララッ!!!!
所長を回収し、走る426番、その後を瞬を牽制しながら追う323番。
百恵は着地し、体勢を整える。
銃弾を食らった瞬はよろめくが、すぐに踏みとどまり百恵に襲いかかろうとする。
だが、323番の牽制のおかげで百恵の能力はすでに充填《リロード》済み。
「……吾輩の恩師に手を出すとはな。貴様はもう百回死んでも許さんぞ!!」
「――――っ!?」
座りきった百恵の目が、感情が無いはずの瞬を震わせた。
ぶわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――!!!!
瞬時、周囲に埋め尽くされる空気の種。
その数、無数。
もはや逃げる隙間など一ミリたりとも無い。
水をも通さぬ結束で並べられた圧縮空気の種は、やがて一つの牢獄へと変わっていく。
「雄叫べ!!ガルーダァァァァァァァッ!!!!」
百恵の叫びとともに背中から霊長が羽を広げる。
それは百恵の身体を毟るように締め付けるが、やがて諦め、その能力を大きく解放した。
ドムドムッドドドドッドドッドドドドドドドドドドドドドドドドドンッッ!!!!
そして弾ける圧縮空気。
それは周囲の機械や配管、貯水タンクをも巻き込み吹き飛ばす。
その爆心地にいた瞬の身体は散り散りに引き裂かれ、残ったのは欠けた頭部と剥き出しになった脊椎だけであった。
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