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第160話 黒菜々ちん再び
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「さて姉貴よ、こいつらをどうする?」
気を失い倒れている渦女を見下ろしながら百恵ちゃんは訊ねる。
彼女なりに手加減したんだろう。渦女の怪我は大したことはない。
あれだけ私たちを追い詰めた女を、馬鹿につけ込んだとはいえ戦闘員もろとも一網打尽にするとは……やはり百恵ちゃん。末恐ろしい子供である。
「とりあえず滋賀県支部に連絡入れて応援を呼んでおいたわ。それまではこいつで拘束しときなさい」
そう言って死ぬ子先生は青く光るテープを投げ渡した。
「結界を染み渡らせた特殊テープよ。ただの拘束具じゃ渦女みたいなPK能力者だと簡単に破壊しちゃうからね。正也は私が縛っとくわ」
言って先生は正也さんの両手両足を普通のインシュロックで縛り始めた。
「ふむ、このテープは姉貴の手作りか? なかなか使えそうじゃの?」
渦女の体を海老反りになるようにして固めながら百恵ちゃんは言う。
さっき所長の件の仕返しなんだろうか?
「……これから先何が起こるかわからないからね。その一巻きはあんたが持っていなさい」
「……すまん使い切ってしまった」
「……もう一個あげるわよ」
「あの……この人達はどうします」
ゴミのように転がっている十数人の敵戦闘員たちを指差して訊く菜々ちん。
辺りには野次馬も集まり始めている。
遠くからパトカーのサイレンも聞こえてきた。
「……あまりここにいると厄介になりそうね。危険な二人だけ回収して私たちは退散しましょうか。車の手配お願い出来る?」
「わ……わかりました」
と言い、菜々ちんは学生鞄から何かを取り出そうとしている。
たぶん携帯電話を出してタクシーでも手配するんだろうなと思ったら。
――――ジャキンッ。
「ぶっ!???」
出てきたのは彼女愛用のオートマチックだった。
「とりあえず、あの黒のワンボックスでいいですか?」
「そうね、六人だからちょうどいいわ、アレにしましょう」
「了解です」
そう返事をすると菜々ちんは隣のドラックストアに停めてあった大きな車に躊躇うことなく近づく。
「……ちょ、ちょっと菜々ちん? なにを――――、」
するのでしょうかと聞く前に、彼女はおもむろに引き金を引いた。
――――ガンガンッ!!
穴が開けられた運転席のガラス。そこに間髪入れず銃の柄を叩きつける。
バシャンと網目に広がる亀裂。それを突き崩し、拳大の穴を開けるとその中に手を突っ込んでガコンとロックを外す。
ドアを開くと同時にけたたましい防犯ブザーがなるが、菜々ちんはそれを慌てることなく、やはり弾丸を撃ち込むことで黙らせる。
運転席に座り、足元を少しゴソゴソしたかと思うと、
――――どるるるんっ!!
あっさりエンジンが掛かってしまった。
「お、おいテメー何やってんだごらぁっ!!!!」
店の中からいかにもDQNな男が二人飛び出してくる。
それを見て私はああ良かったと胸を撫で下ろした。
もし出てきたのが人の良さそうな日曜パパさんだったら罪悪感でいたたまれなくなるところだったからだ。
「すいませんね。この車頂きます。あと私たちの顔も忘れて下さい」
これ以上ない一方的な言葉を投げかける菜々ちん。
当然、DQNは怒り狂って菜々ちんを運転席から引きずり出そうと向かって来るが、彼女は無表情で銃を向けるとノータイムで引き金を引いた。
がんがん。
「ぐあぁぁぁ!! ぎゃああぁぁぁっっ!!」
それぞれ太ももを撃ち抜かれ転がり回る。
それを華麗に無視してこちらに車を回してくる菜々ちん。
「お待たせしました。どうぞ」
バシュンと開かれるスライド扉。
「ありがとう、私が助手席に乗るわ。百恵と宝塚さんの二人は最後列、捕らえた二人は真ん中に乗せて」
「わかった」
百恵ちゃんが能力を弱く操って二人を席に押し込んだ
最後に私が乗り込むと、菜々ちんの運転で車は走り出し、その場を後にした。
私はこの時点でどっちが悪役なんだろうかわからなくなっていた。
「ちゃんと能力で持ち主を確認してましたよ? でなきゃあんなヒドイこと事しませんから鬼じゃあるまいし」
菜々ちんが頬を膨らませながら私の質問に弁明を返してきた。
彼女は無作為にこの車を選んだわけではないそうな。
ちゃんと能力を使って強奪しようが痛めつけようが構わない相手の車を選んだらしい。
「いやいや、どんな相手でも鬼だったと思うけどさっきの態度は」
言う私に、菜々ちんは助手席の前にあるグローブボックスを開ける。
「先生、その裏側探って見て下さい」
「こうかしら?」
言われた通り、開けた上の空間に手を入れる先生。
そしてしばらく探ると中から白い粉の入ったビニール袋が出てくる。
「おやまあ、お薬じゃないの❤」
やたら嬉しそうにそれを持ち上げる先生。
「え? ……それって麻薬っすか??」
まさかと思い訊ねると「それ以外の何に見えるの」と返される。
「隠し方の幼稚さから言って末端のチンピラですね。でもそいつら、その薬を使ってそこら中の女を中毒にして弱みを握ったあげく、この車に連れ込んで中で強姦しまくっていましたよ?」
菜々ちんの能力は植物を媒体にした念視。
おそらく車の室内《なか》に残っていた植物の種やら何かから情報を得たのだろう。
なので彼女がいま言ったことは嘘でも出任せでもない真実なのだ。
「そ、そんなやつら殺してしまえい。そんでこの車も燃やしてしまえいっ!!」
不快さにシートから身を離し、私はさっきまでの意見をひっくり返す。
そんな私に菜々ちんは朗らかな笑みで、
「ええ、あとで最寄りの暴力団事務所にでも突っ込ませておきますね♡」
と、鬼のような返事をした。
気を失い倒れている渦女を見下ろしながら百恵ちゃんは訊ねる。
彼女なりに手加減したんだろう。渦女の怪我は大したことはない。
あれだけ私たちを追い詰めた女を、馬鹿につけ込んだとはいえ戦闘員もろとも一網打尽にするとは……やはり百恵ちゃん。末恐ろしい子供である。
「とりあえず滋賀県支部に連絡入れて応援を呼んでおいたわ。それまではこいつで拘束しときなさい」
そう言って死ぬ子先生は青く光るテープを投げ渡した。
「結界を染み渡らせた特殊テープよ。ただの拘束具じゃ渦女みたいなPK能力者だと簡単に破壊しちゃうからね。正也は私が縛っとくわ」
言って先生は正也さんの両手両足を普通のインシュロックで縛り始めた。
「ふむ、このテープは姉貴の手作りか? なかなか使えそうじゃの?」
渦女の体を海老反りになるようにして固めながら百恵ちゃんは言う。
さっき所長の件の仕返しなんだろうか?
「……これから先何が起こるかわからないからね。その一巻きはあんたが持っていなさい」
「……すまん使い切ってしまった」
「……もう一個あげるわよ」
「あの……この人達はどうします」
ゴミのように転がっている十数人の敵戦闘員たちを指差して訊く菜々ちん。
辺りには野次馬も集まり始めている。
遠くからパトカーのサイレンも聞こえてきた。
「……あまりここにいると厄介になりそうね。危険な二人だけ回収して私たちは退散しましょうか。車の手配お願い出来る?」
「わ……わかりました」
と言い、菜々ちんは学生鞄から何かを取り出そうとしている。
たぶん携帯電話を出してタクシーでも手配するんだろうなと思ったら。
――――ジャキンッ。
「ぶっ!???」
出てきたのは彼女愛用のオートマチックだった。
「とりあえず、あの黒のワンボックスでいいですか?」
「そうね、六人だからちょうどいいわ、アレにしましょう」
「了解です」
そう返事をすると菜々ちんは隣のドラックストアに停めてあった大きな車に躊躇うことなく近づく。
「……ちょ、ちょっと菜々ちん? なにを――――、」
するのでしょうかと聞く前に、彼女はおもむろに引き金を引いた。
――――ガンガンッ!!
穴が開けられた運転席のガラス。そこに間髪入れず銃の柄を叩きつける。
バシャンと網目に広がる亀裂。それを突き崩し、拳大の穴を開けるとその中に手を突っ込んでガコンとロックを外す。
ドアを開くと同時にけたたましい防犯ブザーがなるが、菜々ちんはそれを慌てることなく、やはり弾丸を撃ち込むことで黙らせる。
運転席に座り、足元を少しゴソゴソしたかと思うと、
――――どるるるんっ!!
あっさりエンジンが掛かってしまった。
「お、おいテメー何やってんだごらぁっ!!!!」
店の中からいかにもDQNな男が二人飛び出してくる。
それを見て私はああ良かったと胸を撫で下ろした。
もし出てきたのが人の良さそうな日曜パパさんだったら罪悪感でいたたまれなくなるところだったからだ。
「すいませんね。この車頂きます。あと私たちの顔も忘れて下さい」
これ以上ない一方的な言葉を投げかける菜々ちん。
当然、DQNは怒り狂って菜々ちんを運転席から引きずり出そうと向かって来るが、彼女は無表情で銃を向けるとノータイムで引き金を引いた。
がんがん。
「ぐあぁぁぁ!! ぎゃああぁぁぁっっ!!」
それぞれ太ももを撃ち抜かれ転がり回る。
それを華麗に無視してこちらに車を回してくる菜々ちん。
「お待たせしました。どうぞ」
バシュンと開かれるスライド扉。
「ありがとう、私が助手席に乗るわ。百恵と宝塚さんの二人は最後列、捕らえた二人は真ん中に乗せて」
「わかった」
百恵ちゃんが能力を弱く操って二人を席に押し込んだ
最後に私が乗り込むと、菜々ちんの運転で車は走り出し、その場を後にした。
私はこの時点でどっちが悪役なんだろうかわからなくなっていた。
「ちゃんと能力で持ち主を確認してましたよ? でなきゃあんなヒドイこと事しませんから鬼じゃあるまいし」
菜々ちんが頬を膨らませながら私の質問に弁明を返してきた。
彼女は無作為にこの車を選んだわけではないそうな。
ちゃんと能力を使って強奪しようが痛めつけようが構わない相手の車を選んだらしい。
「いやいや、どんな相手でも鬼だったと思うけどさっきの態度は」
言う私に、菜々ちんは助手席の前にあるグローブボックスを開ける。
「先生、その裏側探って見て下さい」
「こうかしら?」
言われた通り、開けた上の空間に手を入れる先生。
そしてしばらく探ると中から白い粉の入ったビニール袋が出てくる。
「おやまあ、お薬じゃないの❤」
やたら嬉しそうにそれを持ち上げる先生。
「え? ……それって麻薬っすか??」
まさかと思い訊ねると「それ以外の何に見えるの」と返される。
「隠し方の幼稚さから言って末端のチンピラですね。でもそいつら、その薬を使ってそこら中の女を中毒にして弱みを握ったあげく、この車に連れ込んで中で強姦しまくっていましたよ?」
菜々ちんの能力は植物を媒体にした念視。
おそらく車の室内《なか》に残っていた植物の種やら何かから情報を得たのだろう。
なので彼女がいま言ったことは嘘でも出任せでもない真実なのだ。
「そ、そんなやつら殺してしまえい。そんでこの車も燃やしてしまえいっ!!」
不快さにシートから身を離し、私はさっきまでの意見をひっくり返す。
そんな私に菜々ちんは朗らかな笑みで、
「ええ、あとで最寄りの暴力団事務所にでも突っ込ませておきますね♡」
と、鬼のような返事をした。
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