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第189話 一人戦う⑧
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――――ゴッ!!!!
光の帯が伸びる。
私の拳は再充填された充分な破壊力をもって、所長の顔面に突き刺さった!!
一時は仲間と呼ばれ、親しみを覚えた瞬間もあった。
まさかこんな結末になるとは思っていなかった。
所長を敵として、ぶん殴らなきゃならないなんて、拳を突き出している今だって信じられない。
でも、この人はもう私の知る所長じゃない。
いや、私が知らなかっただけだ。
この男はただの狂った悪魔。
仲間を救うと、耳聞こえの良い言葉を利用して、自分の狂った快楽を満たそうとしかしていないただの狂人。
正也さんは、渦女は、こいつに利用されただけ。
真唯さんの姿が脳裏に浮かび上がる。
――――この男を生かしておいちゃだめよ。
彼女の声が聞こえた気がした。
その声に逆らわず、渾身の力で拳を振り抜いた!!
――――バギャァァァァァァァァンッ!!!!
結界が飛び散る。
私の攻撃に対抗して張られた所長の防御結界だ。
砕け散った破片が三角になって宙に舞う。
片桐さんの結界すら破った私の拳だ。
所長にだって止められやしない!!
結界の防御が消えたいま、所長を護るものは何もない。
あとは片桐さんと同じく頭を破壊されるだけだ!!
――――勝ったぞっ!!
しかし、そう確信した私の思考とは逆に、所長の姿が遠ざかっていった。
「!???」
一瞬意味がわからなかったが、体に伝わってくる感覚で私が後ろに吹き飛ばされているんだとすぐにわかった。
わからないのは何故そうなったかだ。
飛ばされながら拳を見る。
そこには、あるはずの光はなく、代わりに裂けた皮膚からあふれる赤い血と、折れて剥き出しになった指の骨が突き出していた。
――――ガッシャァァァァァァンッ!!!!
縁側のガラス戸を突き破り庭園へと吹き飛ばされる。
ガリガリと敷き詰められた玉砂利を削りながら庭園を転がった。
そこでようやく理解した。
「おいお~~い、大丈夫かい宝塚く~~~~ん。いくらキミでも今のは無謀だったんじゃないかなぁ~~」
ケロッとした表情で縁側まで歩み来て、私を見下ろしてくる大西。
その彼の身体を纏うのは、まるでサファイアのように強く輝く結界だった。
――――砕けたのは私の結界だったのだ。
「そんな……まさか……」
玉砂利にうずくまりながら唖然と自分の腕を見る。
あの片桐さんの結界をも破った私の結界術が……破られた!?
その上、身は弾き飛ばされ、指まで破壊された。
それはすなわち――――物理属性があるということ。
「あれ? 言ってなかったかな、僕は元、女将の弟子だったんだよ?」
しゃがみ込み、小馬鹿にするようなニンマリ顔で所長は言った。
所長が使っているのは私と同じ、いや、それよりも遥かに強力な結界術だった。
「そ……そんな……」
「キミの結界術もなかなかのものだけどね、でも、所詮は付け焼き刃っていうのかな? やはり練り込みが甘いよね、まだまだ僕や女将の粋には達していないよ」
所長はそう言ってくるが、そうだけじゃない。
私が押し負けたのは技術うんぬんの話ではなく、単純に力で押し負けていた。
つまり能力エネルギーそのもので、私は所長に負けていたのだ。
当然その事実は所長も理解しているだろう。
だから彼はすでに勝ったかのような顔をして余裕を見せているのだ。
能力エネルギー、すなわち結界強度が負けているということは、私は所長の能力に抵抗する術が無いということ。
抵抗出来ないと言うことは――――、
『やあ、宝塚くん、僕の声が聞こえているかなぁ?』
――――ババリバリバリバリッ!!!!
抵抗《レジスト》用の結界をいとも簡単にこじ開け、所長の声が私の頭に直接響いてくる。所長が自分の能力『念話』で私に侵入してきたのだ!!
「――――あうっ!!??」
ショックと痛みでのけぞる私。
『ああ、下手に抵抗しないほうがいいよ? 無駄に苦しむだけだからね。……そう、いい子だ、ゆっくり扉を開けるといいよ。むふふふふふ』
屈辱に顔を歪め結界を解いていく私を見て、征服欲を刺激されたのか、いやらしい笑いを上げながら所長は顎を撫でていた。
『そうだ、それでいい。もう痛くはないだろう? では考えてみようか、今の自分の状況を』
そうテレパシーを送りながら、所長は菜々ちんに何かをよこせと手を揺らしている。それに反応した菜々ちんが自分の銃を所長に渡すと、そのとたん銃身が青い光を纏い始める。
「……それは、まさか……先生の結界弾?」
「心外な事を言ってくれるね。これはもともと僕の技さ。戦闘能力が低く、監視官試験に落ち続けていた彼女を見かねて教えてあげたんだよ?」
最悪な状況だった。
結界術は力負けし、念話で語りかけられるせいで防御結界も張れない。
そんな状況で結界弾を撃ち込まれれば、私の身体など粉微塵にされてしまうだろう。
あと一回くらいは回復出来るかもしれないが、それに意味など無い。
吸収能力を併用したとしても、弾がある限り私は殺され続ける。
殺しと再生――――押し負けてしまうのは明白だった。
つまり、この時点で私は所長に勝てないということがはっきりしてしまったのだ。
『チェックメイトだよ宝塚くん』
年代掛かった台詞でキメてくる所長。
しかし悔しいが、いまの私にはそれを気にする余裕などありはしなかった。
光の帯が伸びる。
私の拳は再充填された充分な破壊力をもって、所長の顔面に突き刺さった!!
一時は仲間と呼ばれ、親しみを覚えた瞬間もあった。
まさかこんな結末になるとは思っていなかった。
所長を敵として、ぶん殴らなきゃならないなんて、拳を突き出している今だって信じられない。
でも、この人はもう私の知る所長じゃない。
いや、私が知らなかっただけだ。
この男はただの狂った悪魔。
仲間を救うと、耳聞こえの良い言葉を利用して、自分の狂った快楽を満たそうとしかしていないただの狂人。
正也さんは、渦女は、こいつに利用されただけ。
真唯さんの姿が脳裏に浮かび上がる。
――――この男を生かしておいちゃだめよ。
彼女の声が聞こえた気がした。
その声に逆らわず、渾身の力で拳を振り抜いた!!
――――バギャァァァァァァァァンッ!!!!
結界が飛び散る。
私の攻撃に対抗して張られた所長の防御結界だ。
砕け散った破片が三角になって宙に舞う。
片桐さんの結界すら破った私の拳だ。
所長にだって止められやしない!!
結界の防御が消えたいま、所長を護るものは何もない。
あとは片桐さんと同じく頭を破壊されるだけだ!!
――――勝ったぞっ!!
しかし、そう確信した私の思考とは逆に、所長の姿が遠ざかっていった。
「!???」
一瞬意味がわからなかったが、体に伝わってくる感覚で私が後ろに吹き飛ばされているんだとすぐにわかった。
わからないのは何故そうなったかだ。
飛ばされながら拳を見る。
そこには、あるはずの光はなく、代わりに裂けた皮膚からあふれる赤い血と、折れて剥き出しになった指の骨が突き出していた。
――――ガッシャァァァァァァンッ!!!!
縁側のガラス戸を突き破り庭園へと吹き飛ばされる。
ガリガリと敷き詰められた玉砂利を削りながら庭園を転がった。
そこでようやく理解した。
「おいお~~い、大丈夫かい宝塚く~~~~ん。いくらキミでも今のは無謀だったんじゃないかなぁ~~」
ケロッとした表情で縁側まで歩み来て、私を見下ろしてくる大西。
その彼の身体を纏うのは、まるでサファイアのように強く輝く結界だった。
――――砕けたのは私の結界だったのだ。
「そんな……まさか……」
玉砂利にうずくまりながら唖然と自分の腕を見る。
あの片桐さんの結界をも破った私の結界術が……破られた!?
その上、身は弾き飛ばされ、指まで破壊された。
それはすなわち――――物理属性があるということ。
「あれ? 言ってなかったかな、僕は元、女将の弟子だったんだよ?」
しゃがみ込み、小馬鹿にするようなニンマリ顔で所長は言った。
所長が使っているのは私と同じ、いや、それよりも遥かに強力な結界術だった。
「そ……そんな……」
「キミの結界術もなかなかのものだけどね、でも、所詮は付け焼き刃っていうのかな? やはり練り込みが甘いよね、まだまだ僕や女将の粋には達していないよ」
所長はそう言ってくるが、そうだけじゃない。
私が押し負けたのは技術うんぬんの話ではなく、単純に力で押し負けていた。
つまり能力エネルギーそのもので、私は所長に負けていたのだ。
当然その事実は所長も理解しているだろう。
だから彼はすでに勝ったかのような顔をして余裕を見せているのだ。
能力エネルギー、すなわち結界強度が負けているということは、私は所長の能力に抵抗する術が無いということ。
抵抗出来ないと言うことは――――、
『やあ、宝塚くん、僕の声が聞こえているかなぁ?』
――――ババリバリバリバリッ!!!!
抵抗《レジスト》用の結界をいとも簡単にこじ開け、所長の声が私の頭に直接響いてくる。所長が自分の能力『念話』で私に侵入してきたのだ!!
「――――あうっ!!??」
ショックと痛みでのけぞる私。
『ああ、下手に抵抗しないほうがいいよ? 無駄に苦しむだけだからね。……そう、いい子だ、ゆっくり扉を開けるといいよ。むふふふふふ』
屈辱に顔を歪め結界を解いていく私を見て、征服欲を刺激されたのか、いやらしい笑いを上げながら所長は顎を撫でていた。
『そうだ、それでいい。もう痛くはないだろう? では考えてみようか、今の自分の状況を』
そうテレパシーを送りながら、所長は菜々ちんに何かをよこせと手を揺らしている。それに反応した菜々ちんが自分の銃を所長に渡すと、そのとたん銃身が青い光を纏い始める。
「……それは、まさか……先生の結界弾?」
「心外な事を言ってくれるね。これはもともと僕の技さ。戦闘能力が低く、監視官試験に落ち続けていた彼女を見かねて教えてあげたんだよ?」
最悪な状況だった。
結界術は力負けし、念話で語りかけられるせいで防御結界も張れない。
そんな状況で結界弾を撃ち込まれれば、私の身体など粉微塵にされてしまうだろう。
あと一回くらいは回復出来るかもしれないが、それに意味など無い。
吸収能力を併用したとしても、弾がある限り私は殺され続ける。
殺しと再生――――押し負けてしまうのは明白だった。
つまり、この時点で私は所長に勝てないということがはっきりしてしまったのだ。
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