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第196話 一人戦う⑮
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「こいつは……たまげた……ねぇ」
順々に朽ち、傾いていく山の木々を見て、所長が徳利を地面に落とす。
まだまだ精気が流れ込んでくるその感覚に、私自身、どこまで吸収範囲が広まっているのか見当がつかない。
片桐さんや所長、菜々ちんが無事なところをみると、ラミアは土を通じ植物だけを狙って吸収をしているようだ。
かつて放った全方位吸収の黄金の光は使っていない。
なぜ使わないのか?
それは多分、私の気持ちを理解してくれているからだろう。
ラミアも菜々ちんを傷付けないようにしてくれているのだ。
彼女もまだ菜々ちんのことを仲間だと思っているのだと思い胸が熱くなる。
『ぐきゅるううぅぅぅ!!!!』
――――ドンッ!!!!
一声いななき、ラミアが突進した!!
結界術を纏った拳を突き出す!!
それをアスポートで受け止める戦女神《オーディン》だが、
――――バキャァァァァァンッ!!!!
相殺される二つの能力、しかしラミアの結界術がほんのわずかだが拳に留まる!!
『――――っ!!』
ここにきて消耗の差が、能力に現れたのだ。
アスポートの衣が剥がれた戦女神《オーディン》の腕に、結界の拳が炸裂する。
――――ボシュンッ!!!!
受け止めた右腕が一瞬にして吹き飛んだ!!
『グガガァァァァァッ!!!!』
吠える戦女神《オーディン》。
消滅した腕から血を撒き散らして飛び退き呻く!!
その隙を逃さず、追撃しようとするラミア。
――――よし、ここだ!! 一気にたたみかけろっ!!
いけるっ!! 今度こそ倒せる!!!!
そう確信した私だが、
――――ザギャギャッ!!
『――――っ!???』
ラミアの足が急に止まった。
戦女神《オーディン》から異様な気配が上がったからだ。
『ウ……ウグルウゥゥゥゥゥ』
腹の底から低い唸り声を出す戦女神《オーディン》。
その気圧されそうな禍々しい邪気に、ラミアは距離を取らざるを得なくなる。
なんだ? ……何をする気だ? 私たちは警戒して身構えた。
と――――、
『ウ……ガガガガガガアアァァァァァァァァッ!!!!』
突然、天に向かって咆哮を上げはじめる戦女神《オーディン》!!
凄まじいオーラが彼女から放たれ、同時に宙に一つの歪みが現れる。
――――なに? あれはっ!??
それは10センチ程度のアポートだったが、いつもと雰囲気が違った。
いつもは無色透明だったそれは、今は何故が赤色に光り、その中心に向かって渦が巻いていた。
――――なんだ? あのアスポートは??
警戒する私とラミア。
不気味に赤く渦巻くそれはすぐに襲ってきた!!
――――ボボッ!!!!
『ぎゅうぅっ!!』
即座に数体の蛇を出し、迎撃しようとしたラミアだったが。
――――ボシュッ!!!!
一瞬で全てその渦に飲み込まれる!!
『――――っ!??』
(なっ!???)
驚き、唖然とする私たちの身体を、
――――バキャァァァァンッ!!!!
『ぎゅぐっ!!??』
結界ごとあっけなく貫通し、そして背後で止まる。
『ぎゅぐはっ!!!』
腹を貫通されたラミアは血を吐き、堪らず両膝を付いた。
……な、なんだこのアスポートは……いままでとエネルギー量が段違い……。
結界が……また……通じない……!??
――――まさか。
片桐さんを見る。
充血していた目は、今や絵の具を垂らしたかのように真っ赤に染まり、肢体の皮膚には太い血管が網の目のように走っている。髪の毛は逆立ち、全身からは燃えるようなどす黒いオーラの炎が上がっていた。
それはさっきまでの様子とはあきらかに違う。
さらに深くベヒモス化が進んでいるかのようだった。
――――馬鹿な……それでまた出力が上がったって言うの!??
だとしたらマズイ。
もう蛇での迎撃が出来ないとなると、形勢は一気に逆転する。
しかし事態は私が思っていたよりもさらに最悪だった。
――――グググ……!!
身体が後ろへ引っ張られる。
まるで何かに吸い込まれるように引かれる、その力の方を振り返ると、
『ぎゅるっ!???』
そこにはさっきの不気味なアスポートが、赤い渦を回転させながらその場にとどまっていた!!
そしてその回転に引き付けられるように身体が引っ張られていく!!
『ぐっ……ぎゅるるっ!!!!』
――――なっ!! なにこれっ!???
ガガガリガリッ!!
その引力に抵抗しようと地面を掻きむしり、踏ん張るラミアだが、
ズ……ズズズズッ……。
その強力な引力は、お構いなしに体を引きずっていく。
体だけじゃない。周囲にある土や砂利も浮き上がり、渦に飲み込まれ――――、
――――ッポンッ!! バッフュバッ!!!!
飲み込まれた砂利は一瞬で何処かへ飛ばされ消える。
ついでにサイズの合っていない私の下ジャージとパンツも脱げて吸い込まれて行った!!
――――んぎゃぁぁぁぁゃゃゃゃっ!!????
と、叫んでナニを隠したいところだが、いまの私に身体の主導権は無い。
そして羞恥心も無いラミアは事態を気にせず丸出しのまま、吸引に抵抗して地面を掴んでいる。
どんどんと砂利や土塊を吸い込んでいく渦を見て、私は背筋を凍らせる。
――――これは――――まさかブラックホール!???
戦女神《オーディン》。……戦乙女《ワルキューレ》から進化して、新たに得た能力はアスポートの鎧だけか?
と怪しんではいたが、やはりそんな甘くはないということか。
……こんなヤバい技を隠していたとは……!!
『うぎゅ……ぎゅるるるる』
引き寄せられまいと必死に踏ん張るラミアだが、しかしその吸引力は凄まじく、徐々に渦へと引きずられ、地面に指の筋が引かれていく。
そしてとうとう、その渦の縁に右足が触れてしまったとき――――、
―――――ギュボッ!!!!
その足首が吸い込まれて消えた!!
『ぎゅるぅっ!!!!』
―――――ギュボッ!!!!
痛みで身を捩ったはずみで、もう片方の足も吸い込まれる。
両足の踏ん張りが無くなった私の体は宙に浮き、一気にその地獄の穴へと吸い込まれそうになる――――が、
『ぎゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!』
ラミアが吠え、全部の髪の毛を蛇に変えた!!
そしてそれら蛇を地面に噛ませて、吸い込まれまいと抵抗する。
しかしその地面すらも徐々にめくれ上がり、渦が間近に迫ってくる。
その渦を押し返そうと、本能的に手を出してしまった瞬間、
―――――ギュボッ!!!!
両方の肘から先が、渦に飲み込まれ切断されてしまった。
『ぎゅがあぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!!』
激しく吠えるラミア。
その叫びは、確かな命の危険を察知した声だった。
順々に朽ち、傾いていく山の木々を見て、所長が徳利を地面に落とす。
まだまだ精気が流れ込んでくるその感覚に、私自身、どこまで吸収範囲が広まっているのか見当がつかない。
片桐さんや所長、菜々ちんが無事なところをみると、ラミアは土を通じ植物だけを狙って吸収をしているようだ。
かつて放った全方位吸収の黄金の光は使っていない。
なぜ使わないのか?
それは多分、私の気持ちを理解してくれているからだろう。
ラミアも菜々ちんを傷付けないようにしてくれているのだ。
彼女もまだ菜々ちんのことを仲間だと思っているのだと思い胸が熱くなる。
『ぐきゅるううぅぅぅ!!!!』
――――ドンッ!!!!
一声いななき、ラミアが突進した!!
結界術を纏った拳を突き出す!!
それをアスポートで受け止める戦女神《オーディン》だが、
――――バキャァァァァァンッ!!!!
相殺される二つの能力、しかしラミアの結界術がほんのわずかだが拳に留まる!!
『――――っ!!』
ここにきて消耗の差が、能力に現れたのだ。
アスポートの衣が剥がれた戦女神《オーディン》の腕に、結界の拳が炸裂する。
――――ボシュンッ!!!!
受け止めた右腕が一瞬にして吹き飛んだ!!
『グガガァァァァァッ!!!!』
吠える戦女神《オーディン》。
消滅した腕から血を撒き散らして飛び退き呻く!!
その隙を逃さず、追撃しようとするラミア。
――――よし、ここだ!! 一気にたたみかけろっ!!
いけるっ!! 今度こそ倒せる!!!!
そう確信した私だが、
――――ザギャギャッ!!
『――――っ!???』
ラミアの足が急に止まった。
戦女神《オーディン》から異様な気配が上がったからだ。
『ウ……ウグルウゥゥゥゥゥ』
腹の底から低い唸り声を出す戦女神《オーディン》。
その気圧されそうな禍々しい邪気に、ラミアは距離を取らざるを得なくなる。
なんだ? ……何をする気だ? 私たちは警戒して身構えた。
と――――、
『ウ……ガガガガガガアアァァァァァァァァッ!!!!』
突然、天に向かって咆哮を上げはじめる戦女神《オーディン》!!
凄まじいオーラが彼女から放たれ、同時に宙に一つの歪みが現れる。
――――なに? あれはっ!??
それは10センチ程度のアポートだったが、いつもと雰囲気が違った。
いつもは無色透明だったそれは、今は何故が赤色に光り、その中心に向かって渦が巻いていた。
――――なんだ? あのアスポートは??
警戒する私とラミア。
不気味に赤く渦巻くそれはすぐに襲ってきた!!
――――ボボッ!!!!
『ぎゅうぅっ!!』
即座に数体の蛇を出し、迎撃しようとしたラミアだったが。
――――ボシュッ!!!!
一瞬で全てその渦に飲み込まれる!!
『――――っ!??』
(なっ!???)
驚き、唖然とする私たちの身体を、
――――バキャァァァァンッ!!!!
『ぎゅぐっ!!??』
結界ごとあっけなく貫通し、そして背後で止まる。
『ぎゅぐはっ!!!』
腹を貫通されたラミアは血を吐き、堪らず両膝を付いた。
……な、なんだこのアスポートは……いままでとエネルギー量が段違い……。
結界が……また……通じない……!??
――――まさか。
片桐さんを見る。
充血していた目は、今や絵の具を垂らしたかのように真っ赤に染まり、肢体の皮膚には太い血管が網の目のように走っている。髪の毛は逆立ち、全身からは燃えるようなどす黒いオーラの炎が上がっていた。
それはさっきまでの様子とはあきらかに違う。
さらに深くベヒモス化が進んでいるかのようだった。
――――馬鹿な……それでまた出力が上がったって言うの!??
だとしたらマズイ。
もう蛇での迎撃が出来ないとなると、形勢は一気に逆転する。
しかし事態は私が思っていたよりもさらに最悪だった。
――――グググ……!!
身体が後ろへ引っ張られる。
まるで何かに吸い込まれるように引かれる、その力の方を振り返ると、
『ぎゅるっ!???』
そこにはさっきの不気味なアスポートが、赤い渦を回転させながらその場にとどまっていた!!
そしてその回転に引き付けられるように身体が引っ張られていく!!
『ぐっ……ぎゅるるっ!!!!』
――――なっ!! なにこれっ!???
ガガガリガリッ!!
その引力に抵抗しようと地面を掻きむしり、踏ん張るラミアだが、
ズ……ズズズズッ……。
その強力な引力は、お構いなしに体を引きずっていく。
体だけじゃない。周囲にある土や砂利も浮き上がり、渦に飲み込まれ――――、
――――ッポンッ!! バッフュバッ!!!!
飲み込まれた砂利は一瞬で何処かへ飛ばされ消える。
ついでにサイズの合っていない私の下ジャージとパンツも脱げて吸い込まれて行った!!
――――んぎゃぁぁぁぁゃゃゃゃっ!!????
と、叫んでナニを隠したいところだが、いまの私に身体の主導権は無い。
そして羞恥心も無いラミアは事態を気にせず丸出しのまま、吸引に抵抗して地面を掴んでいる。
どんどんと砂利や土塊を吸い込んでいく渦を見て、私は背筋を凍らせる。
――――これは――――まさかブラックホール!???
戦女神《オーディン》。……戦乙女《ワルキューレ》から進化して、新たに得た能力はアスポートの鎧だけか?
と怪しんではいたが、やはりそんな甘くはないということか。
……こんなヤバい技を隠していたとは……!!
『うぎゅ……ぎゅるるるる』
引き寄せられまいと必死に踏ん張るラミアだが、しかしその吸引力は凄まじく、徐々に渦へと引きずられ、地面に指の筋が引かれていく。
そしてとうとう、その渦の縁に右足が触れてしまったとき――――、
―――――ギュボッ!!!!
その足首が吸い込まれて消えた!!
『ぎゅるぅっ!!!!』
―――――ギュボッ!!!!
痛みで身を捩ったはずみで、もう片方の足も吸い込まれる。
両足の踏ん張りが無くなった私の体は宙に浮き、一気にその地獄の穴へと吸い込まれそうになる――――が、
『ぎゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!』
ラミアが吠え、全部の髪の毛を蛇に変えた!!
そしてそれら蛇を地面に噛ませて、吸い込まれまいと抵抗する。
しかしその地面すらも徐々にめくれ上がり、渦が間近に迫ってくる。
その渦を押し返そうと、本能的に手を出してしまった瞬間、
―――――ギュボッ!!!!
両方の肘から先が、渦に飲み込まれ切断されてしまった。
『ぎゅがあぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!!』
激しく吠えるラミア。
その叫びは、確かな命の危険を察知した声だった。
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