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第197話 一人戦う⑯
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――――ゾワッ!!!!
その断末魔にも似たラミアの咆哮を聞いたとき、思念体であるはずの私の背筋が凍った気がした。
同時に遅い来る強烈な不安感。
そしてブレる意識。
――――これは、マズイ!??
本能的に感じた。
ラミアが本気で私を食らい始めた??
強力な能力を持つ戦女神《オーディン》。
ラミアはいま、それに負けようとしている。
すでに私の両腕の半分は、赤い渦のアスポートに飲み込まれ、全身が吸い込まれるのはもう時間の問題。
悪魔の渦が眼前に迫ってくる。
蛇の髪を地面に食い込ませ直し、何とかしのいでいるが、それももう限界。
この危機を脱するにはさらなる力が必要だ。
そしてその力を得るには、より深く、私から支配権を奪う必要がある。
つまりそれは片桐さんのように、もう一段階深いベヒモス化をすると言うこと。
そうすればきっとラミアはさらなる進化をすることが出来る。
だから彼女は私の魂をより深く食い始めたのだ。
だけど……このまま私が消えてしまったら……ラミアは意識の無いファントムとなって、おそらく制御不能に大暴れするだろう。
それはまさにベヒモス化そのもので、そうなったらもう誰かに消滅させられるまで彼女は暴れ続ける事になる!!
しかし、今、私が前に出ていって主導権を取り返したとしても戦女神《オーディン》に消されるだけ。
マズイマズイマズイ!!
どっちに転んでも私たちは終了だ。
ここか……ここで終わっちゃうのか……!???
そう観念しかけたとき、
『両者そこまでだよ』
防御結界を突き抜けてテレパシーが頭に響いてきた!!
『ぎゅぎゅるぅっ!!!!』
――――バンッ!! バリバリバリバリッ!!!!
ショックで全ての能力が解除されるラミア。
途端に私とラミアの思念が入れ替わる!!
「――――はっ!???」
体の支配権を取り返した私はそのまま地面に叩きつけられた。
両腕と両足が削られて受け身も取れない!!
――――くっ!?? アスポートは!??
考えられないような激痛の中、それでも警戒するが、そこにあるはずのアスポートはもはや無く、私の血だけが地面を赤く染めていた。
「30秒……残念だけどそこまでだね」
残念そうな、所長のため息が聞こえた。
見ると片桐さんが今まさに倒れようと斜めに傾いているところだった。
――――ザシャン。
倒れた彼女の顔は、元のきれいな姿に戻っていた。
同時に戦女神《オーディン》も消滅し、ベヒモス化が解除されている。
「ふ~~~~……もうちょっと見ていたかったんだけどねぇ。でも、もうこれ以上彼女を暴走させておくと、さすがに戻って来られなくなっちゃうからねぇ。仕方ないよねぇ~~~~。」
そう言って所長は片桐さんの元へと歩み寄る。
そして眼球やら脈やらを調べると、うん、とうなずいて私のほうへ向き直った。
……どうやら……しのぎきった――――のか……?
しゅぅぅぅぅぅぅぅぅ……
私は回復を始めていた。
残存精気が充分じゃないのと、ラミアが引っ込んでしまったことで広範囲の吸収が出来なくなってしまい、中途半端な回復となってしまう。
残った体力と気力を引き換えに、両手足と腹の傷を塞ぐだけ。
いまの私に出来るのはここまでだ。
全てを出し切って途切れかかる意識。
上半身のジャージも渦に持っていかれ、もはや私の肌を覆うのは、ガバガバでビリ破れのスポーツブラ一つ。ほとんど裸の状態だが、そんなことを気にしていられる余裕は無かった。
所長が何かを言ってきた。
「片桐くんも危なかったが、キミも大概危なかったよね宝塚くん?」
……見ればわかるだろうそんなこと。
両手両足を失ってダルマみたいに転がっている私。
これ以上に危ない状態などあるものか。
しかし所長は見透かしたように言ってくる。
「身体もそうだが――――キミ……食べられかかっていたよね? ラミアちゃんに」
「――――っ!?」
「んっふふふ~~。いや、いいんだよ? べつに隠さなくても。……でも、僕はてっきり彼女はキミを食わない存在だと思ってたんだけどもねぇ~~~~。いやぁ~~食べようとしてたねぇ? やっぱりいざとなったら彼女も本性を現しちゃうのかな? いや、結構結構、それでこそ健全なファントムだよ、何も問題ない!! ……しかし、だよ?」
所長は私に顔を近づけて囁く。
「……もうあまり、そのファントムは信用しないほうがいいと思うよ?」
「――――!!??」
いやらしく笑って言うその言葉に、私は怒りの目で所長を睨みつける。
食えと命令したのは私だ、ラミアの意思じゃない!!
『……ぐるぅぐるぅぅぅぅっ!!!』
ラミアも毛を逆立てて怒っている。
「もしキミが本格的に暴走してしまっていたら……どうなるかはもっと真剣に考えたほうがいい。……最悪の場合、仲間もろとも皆殺しなんて展開も――――」
『ぎゅるがぁぁぁぁっ!!!!』
所長がそこまで言ったとき、ラミアがキレて叫びをあげた!!
そして――――ぐるんっ!????
景色が暗転したかと思うと私はまた思念体へを変わる。
――――え??
ラミアがまた私の体を乗っ取ったのだ!!
『ぐ……ぐるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!』
そしてすぐさま地面への吸収を開始する!!
同時に回復も併用し、
――――ザザザーードォォォン……。
裏山の大木が三本倒れる頃には私の四肢はすっかり元に戻っていた。
そして――――!!
『ぎゅるあぁぁぁぁぁっっ!!!!』
自分への疑念を私《しゅじん》に植え付けようとした所長に怒り狂ったラミアは、その勢いのまま結界術を再発動させ、所長に殴りかかった!!
その断末魔にも似たラミアの咆哮を聞いたとき、思念体であるはずの私の背筋が凍った気がした。
同時に遅い来る強烈な不安感。
そしてブレる意識。
――――これは、マズイ!??
本能的に感じた。
ラミアが本気で私を食らい始めた??
強力な能力を持つ戦女神《オーディン》。
ラミアはいま、それに負けようとしている。
すでに私の両腕の半分は、赤い渦のアスポートに飲み込まれ、全身が吸い込まれるのはもう時間の問題。
悪魔の渦が眼前に迫ってくる。
蛇の髪を地面に食い込ませ直し、何とかしのいでいるが、それももう限界。
この危機を脱するにはさらなる力が必要だ。
そしてその力を得るには、より深く、私から支配権を奪う必要がある。
つまりそれは片桐さんのように、もう一段階深いベヒモス化をすると言うこと。
そうすればきっとラミアはさらなる進化をすることが出来る。
だから彼女は私の魂をより深く食い始めたのだ。
だけど……このまま私が消えてしまったら……ラミアは意識の無いファントムとなって、おそらく制御不能に大暴れするだろう。
それはまさにベヒモス化そのもので、そうなったらもう誰かに消滅させられるまで彼女は暴れ続ける事になる!!
しかし、今、私が前に出ていって主導権を取り返したとしても戦女神《オーディン》に消されるだけ。
マズイマズイマズイ!!
どっちに転んでも私たちは終了だ。
ここか……ここで終わっちゃうのか……!???
そう観念しかけたとき、
『両者そこまでだよ』
防御結界を突き抜けてテレパシーが頭に響いてきた!!
『ぎゅぎゅるぅっ!!!!』
――――バンッ!! バリバリバリバリッ!!!!
ショックで全ての能力が解除されるラミア。
途端に私とラミアの思念が入れ替わる!!
「――――はっ!???」
体の支配権を取り返した私はそのまま地面に叩きつけられた。
両腕と両足が削られて受け身も取れない!!
――――くっ!?? アスポートは!??
考えられないような激痛の中、それでも警戒するが、そこにあるはずのアスポートはもはや無く、私の血だけが地面を赤く染めていた。
「30秒……残念だけどそこまでだね」
残念そうな、所長のため息が聞こえた。
見ると片桐さんが今まさに倒れようと斜めに傾いているところだった。
――――ザシャン。
倒れた彼女の顔は、元のきれいな姿に戻っていた。
同時に戦女神《オーディン》も消滅し、ベヒモス化が解除されている。
「ふ~~~~……もうちょっと見ていたかったんだけどねぇ。でも、もうこれ以上彼女を暴走させておくと、さすがに戻って来られなくなっちゃうからねぇ。仕方ないよねぇ~~~~。」
そう言って所長は片桐さんの元へと歩み寄る。
そして眼球やら脈やらを調べると、うん、とうなずいて私のほうへ向き直った。
……どうやら……しのぎきった――――のか……?
しゅぅぅぅぅぅぅぅぅ……
私は回復を始めていた。
残存精気が充分じゃないのと、ラミアが引っ込んでしまったことで広範囲の吸収が出来なくなってしまい、中途半端な回復となってしまう。
残った体力と気力を引き換えに、両手足と腹の傷を塞ぐだけ。
いまの私に出来るのはここまでだ。
全てを出し切って途切れかかる意識。
上半身のジャージも渦に持っていかれ、もはや私の肌を覆うのは、ガバガバでビリ破れのスポーツブラ一つ。ほとんど裸の状態だが、そんなことを気にしていられる余裕は無かった。
所長が何かを言ってきた。
「片桐くんも危なかったが、キミも大概危なかったよね宝塚くん?」
……見ればわかるだろうそんなこと。
両手両足を失ってダルマみたいに転がっている私。
これ以上に危ない状態などあるものか。
しかし所長は見透かしたように言ってくる。
「身体もそうだが――――キミ……食べられかかっていたよね? ラミアちゃんに」
「――――っ!?」
「んっふふふ~~。いや、いいんだよ? べつに隠さなくても。……でも、僕はてっきり彼女はキミを食わない存在だと思ってたんだけどもねぇ~~~~。いやぁ~~食べようとしてたねぇ? やっぱりいざとなったら彼女も本性を現しちゃうのかな? いや、結構結構、それでこそ健全なファントムだよ、何も問題ない!! ……しかし、だよ?」
所長は私に顔を近づけて囁く。
「……もうあまり、そのファントムは信用しないほうがいいと思うよ?」
「――――!!??」
いやらしく笑って言うその言葉に、私は怒りの目で所長を睨みつける。
食えと命令したのは私だ、ラミアの意思じゃない!!
『……ぐるぅぐるぅぅぅぅっ!!!』
ラミアも毛を逆立てて怒っている。
「もしキミが本格的に暴走してしまっていたら……どうなるかはもっと真剣に考えたほうがいい。……最悪の場合、仲間もろとも皆殺しなんて展開も――――」
『ぎゅるがぁぁぁぁっ!!!!』
所長がそこまで言ったとき、ラミアがキレて叫びをあげた!!
そして――――ぐるんっ!????
景色が暗転したかと思うと私はまた思念体へを変わる。
――――え??
ラミアがまた私の体を乗っ取ったのだ!!
『ぐ……ぐるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!』
そしてすぐさま地面への吸収を開始する!!
同時に回復も併用し、
――――ザザザーードォォォン……。
裏山の大木が三本倒れる頃には私の四肢はすっかり元に戻っていた。
そして――――!!
『ぎゅるあぁぁぁぁぁっっ!!!!』
自分への疑念を私《しゅじん》に植え付けようとした所長に怒り狂ったラミアは、その勢いのまま結界術を再発動させ、所長に殴りかかった!!
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