【本編完結】聖女は辺境伯に嫁ぎますが、彼には好きな人が、聖女にはとある秘密がありました。

彩華(あやはな)

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5章、最終章

15.シェリル視点

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 国王から、明日から前線に出るように言われた。
 
 全身の血の気が引いた。

 記憶にはないが、身体が覚えている。そんな感じだった。
 気持ちいいものではない。

 この頃になると、日記の内容に変化がなかった。
 『薬作り』その記載しかでてきない。

 ウララお姉様の元には連日、怪我人が運ばれてくる。
 エステルお姉様は、魔術師たちを従え結界を張っている。
 フィアルお姉様は、相手国の呪いの浄化。国王の隣でいて、国王を護っている。
 
 薬作りをしているわたしは人に会うことも稀だった。1日に一度、薬をとりにくる兵士さんがいるだけ。それも言葉を交わすこともない。


 わたしは明日からは前線にでて、兵士さんたちの救援にあたるのだ。

 アシュリーとアリスと別行動になる可能性が高い。アシュリーたちはわたしを護るのであって、戦うわけではないのだ。
 なるべくベース基地と行ったり来たりの毎日になる予定だが、どうなるかはわからない。

 天幕の中で必要なものをリュックに入れていく。
 野宿に備えての食糧や簡易テント。
 大量のポーションと丸薬。風邪薬。薬草に簡単な器具。
 そして、身を護る短剣。

 そっと抜く。
 刀身の煌めきに気持ち悪くなる。
 息が詰まりそう。

 落ち着け。
 落ち着くんだ。

 荒くなる呼吸をどうにか落ち着かせる。

 涙が落ちる。

 怖い。
 
 を扱うことがあるのかと思うだけで怖くなる。
 身体が震えてくる。

「何が、適材適所だ!馬鹿」

 思わず口に出た。
 
「何が、全力で護る、だ!あの阿保ぅ!!嘘つき野郎!!」
「シェリル・・・?」
 
 振り向くと、天幕に入ってきたアシュリーが目を丸くしていた。
 
 聞かれてしまった・・・。

 叫んだことが恥ずかしかった。
 叫んだ内容を聞かれたと思うと逃げたくなった。

 アシュリーはそんなわたしの頭をポムポムと軽く叩くと抱きしめてくれた。

 細身だが、しっかりと筋肉がついている。
 侍女服を着ているからつい忘れてしまうけれど、こうされると改めて男の人だと実感する。

「いいなぁ、わたしもします」

 アリスも天幕に入ってくるなり、背後から抱きしめてくれた。
 二人に抱きしめられると、トクトクと心臓の音が感じられ、安心してきた。

「あの馬鹿を呼び寄せましょうか?」

 馬鹿呼び。
 アシュリー、酷くない?
 って、わたしもしたか。

 首を振った。

 グレン様には北の辺境地があります。
 これからも守らなければならない処です。
 わたし個人の事で人生を狂わしてはいけない。

「大丈夫。叫んだらスッキリした」

 笑顔で二人に言う。

 弱音を吐くのは終わりにしよう。

 明日からは、しっかりしなくてはならない。
 兵士さんたちの命を失わないようにするのだ。
 
 




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