【完結】わたしの大事な従姉妹を泣かしたのですから、覚悟してくださいませ

彩華(あやはな)

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1.セイラ視点

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 あの方が隣国、シャンス国に留学してニ年がたった。
 初めの頃は週に一度は手紙が来ていた。
 甘く優しい言葉が紡がれていた。手紙を手に取るたび胸が高鳴り、嬉しかった。
 封筒の中には花びらが入っていた。贈られてくる度、一つづつ栞にしていった。

 それが少しずつ、一ヶ月に一度、二ヶ月に一度になったかと思えば、今では手紙がくるのが途絶えた。
 
 わたしが送った手紙にさえ返信はない。
 
 あの方に何あったのか不安になった。

 忙しいのだろうか?
 病気なのだろうか?
 どうしたのだろう?

 心配になる。
 不安になる。
 寂しくなる。

 どうしたらいいのかしら?
 
 あまり、手紙を送ると貴方は嫌がるかしら?
 じっと待つしかないのかしら?

 あの方のご両親に聞くべきなのかしら?
 ご両親には手紙はきているのかしら?
 
 不安な気持ちを押し殺して、ずっと待っていた。

 そんな時、あの方のご両親が我が家を訪ねてきた。

 彼らは、お父様とわたしの前であの方との婚約解消をして欲しいと願い出た。


 あの方は、留学先の学園でとある伯爵令嬢に出逢われたのだそう。
 お互いに一目で惹かれ合ったのだと。

 わたしという婚約者がいるからと気持ちを抑えていたものの、やはり無理だったのだそうです・・・。お互いに惹かれた者同士、思い留まることができなかったと、に書かれていたそうです。

 それで、ご両親に婚約解消を相談し、今にいたるのです。

 まだ、あの方は留学中なので帰ってこられないそうです。
  
 わたしに会う気持ちないようです。
 直接謝る気持ちも、手紙で謝る気も持ち合わせていないのでしょう。

 それとも、もうわたしのことはどうでもよくなっているのかもしれません。

 そのことの方がショックでした。
 
 そんな方とは思いもよりませんでした。
 

 10年です。
 婚約して10年。
 幼馴染として15年。

 お父様が親友であるからこそ、決まった婚約でした。
 わたしは彼を愛していました。
 優しくて、頼れる一つ上の男性。
 ずっと、ずっとずっと側にいて欲しい、側にいたい、そう思える方でした。

 なのに・・・。

 悲しいと言うより、落胆が大きかった。

 そんな方とは思わなかった・・・。


 あの方のご両親が帰った後、父がわたしに声をかけてきました。

「セイラ、大丈夫か?」

 大丈夫?
 自分のことなのによくわかりませんでした。
 
 婚約が解消になりショックですが、それより、一気にあの方の思いが無くなった自分の気持ちに驚いていたからです。

 本当にあの方が好きだったのかさえ、今ではわからなくなって、いたのです。

 『愛』

 それが、それほど脆いものだったのかと、思ってしまったのです。

 あの方が抱いていたものはなんだったのでしょうか?
 わたしが抱いていた気持ちは、『愛』ではなかったのでしょうか?

 もう、わからなくなりました。

 あの方に婚約解消されてよかったのかもしれません。
 このままでは、きっとどこかでになっていたかもしれませんもの。


 ですが、こうなったからには、わたしは傷物と一緒です。
 『解消』とはいえ、明日には学園の皆様に知れ渡っている事でしょう。

「お父様・・・。以前お話があった伯母様のところへ行きたいわ・・・」

 お母様の姉である、アデライト伯母様は帝国で嫁がれています。
 以前から言語留学を勧められていたのを思い出したのです。
 あの方の留学先とは逆にありますから、暫くは会うこともないでしょう。

 そこでなら、これから起こる煩わしい喧騒を聞くこともないでしょう。

 逃げ出した、と言われてもかまいません。
 今は、この国にいたくありません。
 
 

「そうだな。義姉上のところに行っておいで」

 お父様はわたしをそっと、抱きしめてくださいました。
 
 その日わたしは、メイドに言って彼から頂いた花びらで作った栞を全て燃やしてもらいました。
 

 パチパチと燃える小さな火を見ながらわたしは思いました。

 全てを忘れよう・・・と。
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