【完結】ありのままのわたしを愛して

彩華(あやはな)

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 先生は彼を引きずるように研究室に帰って行った。
 私とエマは先に学園長室に呼ばれ、先ほど起こったことを説明する。
 
「はあ、帰ってきて早速問題を起こすとは・・・」

  真っ青な顔にある眉間のシワをもみほぐし学園長は呟く。

「叔父様の到着が早かったですね」

 エマの言葉に、そういえば先生が珍しく学生教室がある棟に来ていたことを思い出す。
 あまりにタイミングが良かった。
 先生があの場にいなければ、どうなっていたか・・・、考えるだけでぞっとして震える。

「明日くるはずのアーサーが急に学園に来たという知らせが入ってきたもんだから、おかしいと思ってアルバートを呼びに行かせたんだ。まさかその場に居合わせるなんて思いもよらなかった」

 ハァ~っと重い息をはく。

「ノエル嬢。君はアーサーを知っていたのか?」

 私は自分の国で会っていたことを話した。

「あの研究馬鹿が。ノエル嬢、私からも謝らせてくれ。怖い思いをさせてすまなかった。こちらからもロマニズ家に苦言を呈しておく」
「そこまでは・・・」
「いや、あいつにはこれぐらい必要だから気にしないでくれ」

 変人なうえ、問題児なのか?

 学園長先生との面談を終えたのち、先生の研究室に向かった。エマもついてくる。

「心配だからよ」

 エマの気持ちが嬉しかった。

 研究室にはいると、彼はソファーに座って必死に紙の束を読んでいた。

「学長との、話は終わったかい」
「はい。あの・・・彼は?」
「君の論文を読んでる」

 黒い目が左から右にとせわしなく行ききを繰り返しているのがわかる。
 腫れた頬を冷やしもせずに必死になっていた。紫になっている唇の口角が不気味なほどに上がりぱなしだ。

「叔父様。いろんな意味でやばくない?」
「いわないでくれ。こんなにも楽しそうなアーサーを今までに僕も見たことないよ」

 ひそひそと声をひそめ相談する二人に眉を顰める。
 それってどうなの?
 大丈夫なのかしら。

 不安に思いながら待っていると、彼は満足したように息を吐き出した。

「すごっ。あれからも調べたんだな。濃い内容だ。でも疑問があるんだが!!」
「アーサー、暴走するな」
「あっ、はい」
 
 先生の注意を素直に聞く。
 身を固くした私に気を遣ってくれたのか、佇まいを直した。

 私はふぅーっ息を吐くと、ゆっくり言葉を紡いだ。

「改めて・・・自己紹介していただけますか?質問はそれからでお願いします」

 前に後悔したのだから、きちんと彼のことが知りたかった。さっきのことがあったが、もともと悪い人でないことは知っている。だからこそ、ちゃんと知っておきたい。

「そうだな・・・。俺は・・・アーサー・ロマニズ。ロマニズ公爵家次男で、そこのアルバート博士の甥でエマの従兄になる。知っての通り周りからは変人呼ばわりされることが多い」

 自分で変人と言った。自分のことを客観的にみているのだろうか。
 私も自己紹介する。

「私はノエル・エルトニーです。」
「エルトニー??ライール・エルトニーの妹か??」
 
 えっ?

「兄を知っているの?」

 まさかこんなところで兄の名前が出てくるとは思わなかった。

「うそだろう?あの狸野郎!何も言ってなかったじゃないか!絶対にわかってたよな・・・?」
「兄がなにかしました?」

 渋い顔をするアーサー様に向かって、首をかしげる。彼はポツリと嫌そうに呟いた。

「俺がついていくことにした外交官がライールだったんだ」

 絶句。

 兄よ。何してるの?

 他国に留学しているのアーサー様を誘ったという外交官は兄、あなたですか・・・!!
 信じられない。
 わが兄ながらどうなっているのか。

 兄との縁を切った方がいいのかしら?と真剣に悩んでしまう私がいた。
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