【完結】結び屋 アメリア・ブロー〜他人の幸せを結んでいますが、自分の幸せの相手には気付きません〜

七四話、終わりを迎えます

　鎧は重い。
　息もしにくいし、可動域に制限が生まれる。
　多少なら構わないけど流石にタリオン相手には難しい。

　タリオンが脱いで構わないと言った。

　どうしよう･･･。
　テリーに近づいて相談する。

「僕はかまいませんが、姉さんはどうするの？今後の学校生活まともに送れる？」
　
　痛いところついてくる。

　そこよね、やっぱり･･･。
　でも、今後、こんな楽しいことが起こるかな？こんな時じゃないと、タリオンも真剣にしてくれないし･･･。

「脱ごうっか！？」
「知りませんよ。あの方に愛想をつかれても」

　あの方？
　アンドリュー、様･･･。
　うっ、でもでも。

「まあ、知らずにいるよりは先に明かすべきでしょうね」

　そっち？

「えぇい、いいや、どうにでもなれ」


　わたしたちは脱いだ。

　脱いでもちゃあんときてますよ。
　恥ずかしい格好してませんから。

　あれ？
　観客が呆然としてる。

「姉さん、憧れのマスクの下からぼんやり女性が出てきたら僕でも落胆しますから」

　あちゃぁー、悪いことしたから。
　って、ぼんやり顔で悪かったわね。

　でも･･･。
　ペロリと唇を舐めて構えた。
　
　行くよ、テリー。

　目配せすると同時にタリオンに立ち向かって行った。
　
　久しぶりとはいえ、テリーとの連携プレイはしやすく、立ち回りやすい。
　お互いに動きを熟知してるから。
　でも、タリオンだってそう。
　今まで幾度も打ち合ってきたから、こちらの弱点も網羅している。
　はっきり言って、しにくい相手。
　身体がでかいぶん、二人がかりでも難しい。

　余裕を見せてくる。

　勝ちたいのに･･･。

　目の端に父さんが写った。

　口がぱくぱく？
　えっ、何？

　オオワ、ザアトミ、ギスキ、アリ？

　うん？

　大技後、右隙、あり

　わかった。

　テリーを見る。
　テリーも見たみたい。
　目を見て頷く。
　じゃあ、仕掛けるよ。

　せいのぉ･･･！！



　私たちは勝利を納めた。
　二人でだけど。

　初めてタリオンに勝てた。
　タリオンは父さんからのアドバイスに気づいたみたいで、下から観客席に怒鳴っていた。

　擦り傷打撲いっぱい。
　明日筋肉痛間違いなしか。
　腕がもう、上がらない。

　ペタリと地面に座り込み、テリーと二人でも肩で息をする。

「強くなったな」

　息切れ一つしていないおじさんにいわれてもな･･･。
　まだまだということか･･･。


　息を整えているとアンドリュー様が駆けてきた。

「アメリア、大丈夫か？」

　大丈夫ですが？

　ペタペタとわたしの顔に触れます。
　ちょっ、ちょっと？


　触りすぎ。

　ていっ！

　手を強制的に退けた。


　幻滅したかな～？

「アンドリュー様。これがわたしです。幻滅、しました？」

　アンドリュー様は首を振った。
　その目がキラキラ輝いてる。

「かっこいいよ！僕の恋人は最高だ！！」

　アンドリュー様はわたしの唇を奪った。


！！


　反射的に張り手をかましてしまったのはお詫びします。





☆☆☆☆☆

しばらくしてわたしたちは婚約した。
エンリュリッヒ侯爵がだいぶ渋っていたみたいだけど、父さんと母さんが脅し、国王陛下命令と言う形で決まった。


　後で聞かされたことには、しっかり、わたしが何者か熟知させるためだったらしい。

　ようは、ブロー男爵家を舐めんなよ！！ってこと。
　エンリュリッヒ侯爵子息であるアンドリュー様との婚約に口出しするんじゃねぇぞ。
　したらどうなるか、わかってんだろうな。
　物理的に言えるんだからな

　って言うこと。

　脅しじゃない、それ。

　どの道、わたしは学園長の養女になる事が決まったのだが･･･。


　テリーは少し早い編入を果たした。
　費用は･･･模擬剣術大会の功労賞と言う事で特待生枠をくれたのだ。毎年大会出場と言う余計なオプション付きで。

　後、ラフィス殿下は修道院留学だそうだ。　
　なんだそれ？
　３年間いろいろな修道院わ回って鍛え直してくるらしい。
　どうかわるのか？

　サーシャス殿下からは手紙が届く。
　元気そうにやっているみたい。
　もちろんカロンも元気。
　テリーの代わりに領地の財布を握っています。


　もう少しでアンドリュー様たちは卒業。


　わたしは今日もアンドリュー様と一緒。
　マロンさまたちともお茶会します。
　楽しく過ごしています。


　
　そうそう、テリーも『結び屋』のお仕事します。公認のお仕事になって、変装はあまりしなくなりました。残念。




　さて、今日のも『結び屋』のお仕事がんばりましょう。




　　　　　　　　　　　　　ーおわりー







◇◇◇◇◇

終了となります。
ありがとうございました😊