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二章、学園時代
アウスラー視点2
しおりを挟むだがある日、そんなことを言ってられなくなった。
エルファ様の父親から呼び出されたのだ。エルファ様とカリナ様が来年度から学園に行くので「家庭教師を今年いっぱいで解雇する」というものだった。
私は解雇のショックよりも一刻も動かなければならないという思いに駆られた。
魔術騎士団のブライド隊長に言って、魔術科の教師にしてもらうよう交渉した。
「アウスラー!どうした?」
目を白黒させる上司を説得する。
「彼女の居場所を作らなければならないのです!そのためにも魔術科の教師の地位がほしいです」
こんこんと説明と説得で、無理やり教師にしてもらった。
次は根回し。
エルファ様が異端児に思われたりそれによって迫害されないように・・・。
入学後にある、実力を測るためのテストでエルファ様は見事なほどにやってしまった。
彼女の実力に中等科、高等科の教師は唖然を通り越して畏怖の念を抱く。
一般教養に対しても同じ。
天才といわれた私の教え子だからと言えば、なんとか誰もが納得してくれた。
だが、危険には違いない。
一年もせずにエルファ様は魔術科に来ることになった。
正直ほっとした。ここでなら私が護ることができる。
鼻が高く思うのと同時に可哀想にも思った。
友と呼べる者はいない。一人のエルファ様に声をかける。わざと用事をいいつけ、手伝いをさせた。
世の中、出る杭は打たれるのだ。私がそうであったように。
それを護るのも大人の役目だろう。
可愛い教え子を傷つく姿は見たくない。
だが、そうも言っていられなくなっていく。
それはエルファ様がカリナ様の姉であること。多大な魔力を保持し、高等魔術を扱えること。
どちらも避けて通れない事実。
現にアスナルド殿下から今の王位継承の 話を聞いて落ち込んでいたようだ。
そんな話をしてこなかった私が悪いだろう。
あまり気に留めていなかった自分を悔やむ。
王妃派と側室派の争いは水面で行われている。
これからどうなる。
王妃派の貴族は領土を広げるために他国を攻め入りたいらしいと聞いた。
そうなれば魔術騎士団の未来はどのようになるのだろうか?
私自身はまだいい。
エルファ様の未来は・・・?
不安が押し寄せる。
時たまどこかに行ってしまうエルファ様。
きっと、以前私が教えた場所に行っているのだろう。1人になって休むのも必要だ。
だからか帰ってくるといつも機嫌がいい。
あまり感情を表に見せない彼女がそんな顔を見れて嬉しく思う。子供らしい一面を見れて安心する。
その顔を護りたいと思うのはエゴなのだろうか?
エルファ様の未来だけが私の気心だった。
王妃派と側室派の争いは、表だってきた。互いに揚げ足を取りあい、重箱の角をつつきあう。
中立であったはずの騎士団まで派閥影響を受け始めた。
団結さを欠くようなことが起こり、いつもならしないような事故や怪我が増えていく。
上司から騎士である本分を説かれ、沈黙を図ることなった。それでも関わる者は騎士団を辞めさせた。
国王陛下からアスナルド殿下とレイドリック殿下の座学、実力など総合的な面で王太子を決定するという勅語がでる。
私から言えば、アスナルド殿下が優勢だと思っていた。
あの方は人柄も魔術にも優れている。ただ、人より病弱なだけだ。魔力があっても使いこなせなせてはいない。だが、それだけだ。それをカバーするものはいくらでも持っている。
その際たるは第二王子であるガナッシュ殿下だ。アスナルド殿下を補佐するつもりでいる。現にガナッシュ殿下は下位精霊のため魔力も少なく、魔術もあまりつかえないが、勉強面や外交能力は優れている。
諸国との通訳に駆り出されているとも聞く。この二人なら未来は明るいとさえ思っていた。
だが、レイドリック殿下はそれを覆させる行動をとる。
あの方はまだ、未熟だが伸び代を感じさせるらしい。
勉学は優秀と聞くが授業をサボることがあるらしい。授業を受けていなくてもできるのだ。ガナッシュ殿下とはまた違った有能さがあるという。博識というのだろうか。どこからか知識を得ていると聞く。魔術に対しても同じようだった。教師が舌を巻くようなことを言ってくるとか・・・。
なぜ、普通に学園生活を過ごしているのか不思議ではあった。
あと、聞くところによれば普段は人を小馬鹿にするようなこともあるという。時折見せる人を惹きつける表情や行動をするとも。
確かに魔術の訓練に一度臨時で駆り出された時に見て、確かに変わっているという印象を受けた。
不思議な方、それしか言いようがない。
周りもそれに魅了されているようで、レイドリック殿下の周囲には誰かしらの人がいるそうだ。
その中の筆頭はカリナ様だという。
図書館にいく際に見たが、仲が良いように感じた。
レイドリック殿下はカリナ様をも味方につけている。そうなれば、王太子は・・・。
エルファ様が幸せなら私はどちらでも構わない。そう思って客観的に見ていた。
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