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二章、学園時代
15歳ー2
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カリナとレイドリック殿下の婚約式が終わって数日後、わたしはいつもの隠れ場にいた。
持ってきた本を読んでいたが内容が入ってこない。
考えるのは今後のことばかり。
王位継承争いに負けたアスナルド殿下は魔術科を中退し魔術騎士団に入った。だが身体的な理由から魔術研究を中心にしているらしい。また、ガナッシュ殿下も高等科には行かず各国に外遊にでている。
カリナは中等科の3年生として頑張りながら王太子妃教育に精をだしているという。
レイドリック殿下は王太子として、高等科に通いながらも城で公務に励んでいると聞く。
わたしはどうするべきか・・・。
魔術科2年も半ばになれば、進路も視野に入れなくてはならなくなる。
わたしの将来は魔術騎士団がほぼ決定したと言ってもいいのだろうか?
先日のアウスラー先生の表情を思い出し、簡単に決めていいのかと不安にもなった。
1人で悩んでもまとまらず、わたしは魔術科の教室に帰る。
教室に帰ると、人だかりになっていた。
なにかあったのかと思いながら通り過ぎようとすると、慌てた様子の室長が呼び止める。
「エルファ!どこに行っていた?レイドリック殿下がお待ちだ」
室長の後をついて行くとレイドリック殿下が侍従でもあるユーノ様を従えて応接室のソファーに座っていた。
その前にはアウスラー先生が緊張した面持ちでいる。
「やっときたか?」
その声はいつものレイではなかった。王族ならではの威厳と言うのだろうか、高圧的で傲慢にも思えた。人目があるから、そう聞こえるのかもしれない。
肩にいるセイカも沈黙を貫いている。
「申し訳ありません」
敬礼し頭を伏せた。
「話がある。座れ」
そう言われたのでアウスラー先生の横に座る。
冷たい青い目がわたしを見た。
「エルファ・ロザウド。私の手足になって欲しい」
「・・・・・・」
「君の魔力の多さ、魔術のセンス、どちらも、これからの私の造る国には必要なものだと思っている。それは私や、カリナ嬢を護る力とも言える」
レイドリック殿下の造る国とは・・・?
カリナを護りたいとは思ったが、何かが違う。違和感がある。
「質問、ですが、レイドリック殿下の造る国とは、なんですか?」
わたしの問いに、レイドリック殿下はすっと笑みを溢した。
「富国強兵だよ。サブリナ国は内陸に位置する農業国。天候一つで何もかも変わる。私は南にあるサネイラ国の鉄が欲しい。海に面し、魔術で栄えたアシュタル帝国の叡智が欲しい」
貪欲な言葉に鳥肌が立つ。
どうしたのだろう、と。わたしの知っているレイは他の国を尊重しているように感じていた。
頭が混乱する。
目の前にいるのが、本当にレイなのだろうか?
本当のことが知りたくて、言葉を選んで口にする。
「以前・・・何かの折にお聞きしたのですが、アシュタル帝国の魔術の高さを尊敬されているように仰っていませんでしたか?」
「・・・・・・あ、あぁ・・・」
一瞬、なんのことかと不思議そうにしたが、すぐに目を細めユーノ様を見て頷くと、わたしに向き直った。
にこやかに微笑んでくる。
「確かに言ったかもしれないね。でもね、人は常に情報を得て考えるものだよ。昨日考えていたことが、一夜にして意見が変わってしまうことさえある。他人からは優柔不断と思えるかもしれないが、考える決断し直すというのは人間の成長と捉えるべきだ」
そうなのだろうか?
あのレイが本当に・・・。
「いきなりの話だから戸惑うのも当たり前か。少し考えてもらいたい」
レイドリック殿下は立ち上がった。
アウスラー先生、わたしも殿下を見送るために立ち上がった。
殿下は部屋を出ていく際、わたしの耳元に囁いてきた。
「真実が知りたかったら今晩、イフリードについて来い」と。
驚いた視線を向けたわたしにわざと声を大きくして言ってくる。
「いい返事を期待している」
去っていく後ろ姿をわたしは見送るしかなかった。
持ってきた本を読んでいたが内容が入ってこない。
考えるのは今後のことばかり。
王位継承争いに負けたアスナルド殿下は魔術科を中退し魔術騎士団に入った。だが身体的な理由から魔術研究を中心にしているらしい。また、ガナッシュ殿下も高等科には行かず各国に外遊にでている。
カリナは中等科の3年生として頑張りながら王太子妃教育に精をだしているという。
レイドリック殿下は王太子として、高等科に通いながらも城で公務に励んでいると聞く。
わたしはどうするべきか・・・。
魔術科2年も半ばになれば、進路も視野に入れなくてはならなくなる。
わたしの将来は魔術騎士団がほぼ決定したと言ってもいいのだろうか?
先日のアウスラー先生の表情を思い出し、簡単に決めていいのかと不安にもなった。
1人で悩んでもまとまらず、わたしは魔術科の教室に帰る。
教室に帰ると、人だかりになっていた。
なにかあったのかと思いながら通り過ぎようとすると、慌てた様子の室長が呼び止める。
「エルファ!どこに行っていた?レイドリック殿下がお待ちだ」
室長の後をついて行くとレイドリック殿下が侍従でもあるユーノ様を従えて応接室のソファーに座っていた。
その前にはアウスラー先生が緊張した面持ちでいる。
「やっときたか?」
その声はいつものレイではなかった。王族ならではの威厳と言うのだろうか、高圧的で傲慢にも思えた。人目があるから、そう聞こえるのかもしれない。
肩にいるセイカも沈黙を貫いている。
「申し訳ありません」
敬礼し頭を伏せた。
「話がある。座れ」
そう言われたのでアウスラー先生の横に座る。
冷たい青い目がわたしを見た。
「エルファ・ロザウド。私の手足になって欲しい」
「・・・・・・」
「君の魔力の多さ、魔術のセンス、どちらも、これからの私の造る国には必要なものだと思っている。それは私や、カリナ嬢を護る力とも言える」
レイドリック殿下の造る国とは・・・?
カリナを護りたいとは思ったが、何かが違う。違和感がある。
「質問、ですが、レイドリック殿下の造る国とは、なんですか?」
わたしの問いに、レイドリック殿下はすっと笑みを溢した。
「富国強兵だよ。サブリナ国は内陸に位置する農業国。天候一つで何もかも変わる。私は南にあるサネイラ国の鉄が欲しい。海に面し、魔術で栄えたアシュタル帝国の叡智が欲しい」
貪欲な言葉に鳥肌が立つ。
どうしたのだろう、と。わたしの知っているレイは他の国を尊重しているように感じていた。
頭が混乱する。
目の前にいるのが、本当にレイなのだろうか?
本当のことが知りたくて、言葉を選んで口にする。
「以前・・・何かの折にお聞きしたのですが、アシュタル帝国の魔術の高さを尊敬されているように仰っていませんでしたか?」
「・・・・・・あ、あぁ・・・」
一瞬、なんのことかと不思議そうにしたが、すぐに目を細めユーノ様を見て頷くと、わたしに向き直った。
にこやかに微笑んでくる。
「確かに言ったかもしれないね。でもね、人は常に情報を得て考えるものだよ。昨日考えていたことが、一夜にして意見が変わってしまうことさえある。他人からは優柔不断と思えるかもしれないが、考える決断し直すというのは人間の成長と捉えるべきだ」
そうなのだろうか?
あのレイが本当に・・・。
「いきなりの話だから戸惑うのも当たり前か。少し考えてもらいたい」
レイドリック殿下は立ち上がった。
アウスラー先生、わたしも殿下を見送るために立ち上がった。
殿下は部屋を出ていく際、わたしの耳元に囁いてきた。
「真実が知りたかったら今晩、イフリードについて来い」と。
驚いた視線を向けたわたしにわざと声を大きくして言ってくる。
「いい返事を期待している」
去っていく後ろ姿をわたしは見送るしかなかった。
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