【完結】あの子の笑顔の為に

彩華(あやはな)

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 ある日、わたしの半身である双子の弟が、嬉しそうに散歩から帰ってきた。
 話を聞くと、好きな子ができたというのだ。

 興味が湧き見にいくと、銀糸のふわふわの髪に澄んだ紫の大きな目の女の子がいた。
 弟の好みそうな子にわたしも惹かれた。

 そして、忙しい弟の代わりにわたしが見守ってあげる事にした。
 弟は初めは渋っていたが、毎日報告をするのを条件に認めてくれた。

 彼女の名前はキャロル。
 伯爵家のもので、博識な子だった。本が好きでいつも本を抱えている。清楚でいて、実はお転婆。頑張り屋で負けず嫌い。凛とした姿に目を奪われる。

 そんな彼女をいつも見ていた。



 弟のよ。彼女には婚約者がいるぞ。

 楽しくお茶会をしている。

 弟は知っていた。それでも彼女が好きだーという。



 弟よ。彼女と婚約者は仲がよいぞ。

 恥ずかしそうに手を繋いでる。

 弟は彼女が幸せならそれでいいーという。



 見込みがないでないはないか。
 残念だ。
 多いに残念。


 弟よ。彼女を奪わないのか?

 弟は首を振る。
 彼女の幸せを壊したくないーと。


 遠くから彼女を見る。

 愛おしそうに婚約者を見る彼女の目は恋するそのもの。
 あぁ、確かに彼女が幸せなら、構わないかもしれない・・・。


 だが、それはゆっくり壊れだした。

 学園に入ってから、婚約者には一人の女が付き纏うようになった。
 ピンク色の髪に緑の目の可愛さしか取り柄のなさそうな女。
 毎日、婚約者の横にいる。
 どうしてだ?
 何が楽しい?
 
 楽しそう・・・。

 彼女は婚約者ではないのか?

 楽しく笑い合っていたお茶会は回数が減り無くなった。贈り物も減ってゆき、今では誕生日の贈り物もしていない。

 おかしい。

 そんな女を見る彼女はいつのまにか暗いものに変わっていった。


 弟よ。知っているのか?
 
 彼女は笑わなくなったぞ。泣いているぞ。

 弟は知っていた。憤慨していた。



 あの奥手な弟は毎日、彼女に花を贈った。

 今は会うことはできない。
 代わりに花を贈る。
 毎日一輪づつ。

 わたしは助言をする。

 花言葉を。

 弟よ。知らないだろう。花言葉なんて。

 感謝しろ。

 花を手にするたび微笑む彼女。


 不誠実な婚約者を見るたびに心痛める彼女。彼女の笑顔を守るため、弟は動く。

 やはり、笑顔の彼女は美しい。


 弟には悪いが、内緒で婚約者の家に抗議をいれた。
 しかし改善されることはなかった。
 侮られているのか・・・。

 弟に話した。
 勝手にした事に散々文句を言われたが、弟の気持ちが決まったのはわかった。

 弟は怒っていた。

 怒るだろう。

 わたしも怒っている。

 弟よ。どうする?

 弟は笑って言った。
 彼女を自分の妻にしたいーと。

 
 賛成だ。
 やっと動くのだな。
 早くすればいいものを。


 さあ、天罰は必要だ。

 どんな相手であろうとも。

 
 







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