【完結】あの子の笑顔の為に

彩華(あやはな)

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 どういうことかわかりません。
 婚約破棄をされ戸惑う私の前に現れた美しい人たち。

 私はメルトと呼ばれた方の胸に収まってことの成り行きをみていました。

 温かな場所。
 彼から春の匂いがします。
 優しい花の匂い。
 いつも窓辺に置かれていた花のような安心感をいだきます。
 ・・・きっと、この方だったのでしょう。
 メイドしか入らないわたしの部屋の窓辺に花を置くなんて、にはできません。
 きっとこの方々は・・・。



 彼は私を見上げます。

「俺はメルト。平和と愛を司る神。君が生まれた時からずっと見ていた。お願いだ、俺の手をとって欲しい」
「貴方がわたしに花を贈ってくれていたのですね」

 彼の顔が赤くなりました。

 やっと会えました。
 悲しくて苦しくて、泣きたくて。
 そんな時に贈られてくる花にどれほど癒されたか。
 ずっと私を愛してくれていたのですね

 私は彼の額にキスをしました。

 ますます赤くなる彼の顔。

「いいところすまないが、続きは帰ってからしてくれ」
 
 ハミル様は呆れたようにいうと、国王陛下に向き直り名乗りました。

「我が名はハミル。メルトの双子の姉にして戦と美の神だ。これより告ぐ。我らが加護を与えしキャロルを苦しめたこと、贖ってもらう。よって、我らはこの国の加護を解く」

 国王陛下と神殿長様は真っ青になられました。

「それだけはどうか・・・」
「わたしは忠告したぞ。それを反故にしたのは貴様らだ。古来より『我が言葉に意味あり。それを守もりしこそ守りあり』とな」
「あなた様のお声を聞ける者が減りまして、冗談だと思ったのです」

 神殿長様がさけびます。
 それをハミル様は鼻で笑います。

「くだらない。もっとマシな嘘をつけ。国の長と我らを祭る長は必ず我らの声は聞こえる。それが聞こえないのであれば、その者は偽りのものだ!」
「いつまでも埒は明かないぞ。ハミル。さあ、行くぞ」
「わかった。メルトはキャロルとの蜜月の時が欲しいだけであろう」
「勿論だ」
「それが終われば私との団欒だ。良いだろう」
「お前にはやらんぞ」

 ご姉弟の話に赤面します。
 メルト様は私の手を取りキスをしました。

 
*****

 どうしてでしょう。
 私はメルト様たちに空の上に連れいただいてから、故郷のことも家族のことも寂しいなどとは思わないのです。 
 ロズウェル様がどうなったのかも興味がありません。
 帰りたいとも思いません。
 あの国がー神々の加護をがなくなったためー滅びたと聞いても何も思いません。

 ハミル様はメルト様の愛されているからだとおっしゃいました。
 
 そうですね。彼は毎日私に愛を囁いてくれます。幸せです。

 今日はハミル様とお茶会です。
 争いのないので、ハミル様はお暇なのです。
 
 膨らんだお腹をさすりながら私はハミル様の元へ向かいました。


               ーおわりー
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