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4.ロベルト視点
ミランダにも話がはいっていたのか、次の日に会うと、彼女は満面の笑みで僕に近づいてきた。
「ロベルト様。お聞きになりましたか?私たち、婚約できますわ」
長い銀の髪がふわりと動く。
口を開けて笑っている。
レティシアとは対照的だった。
違和感があった。
なぜ笑っているのだろうか?
「ミランダ?」
「これで、私たちを阻む者はいなくなりましたわ」
初めて、女性の笑顔が怖いと感じた。
目が、口元が・・・。
周囲も、こぞって祝ってくる。
異様だ。
「おめでとうございます。殿下」
「ミランダ様、おめでとうございます」
誰もレティシアの事には触れない。
噂にもならない。
違和感が膨らむ。
自分の中の違和感。
周囲に対する違和感。
気持ち悪い。
学園から帰ると、赤い薔薇が届いていた。
朱色を帯びた明るい赤い薔薇。
ほのかに香る。
婚約解消についての手紙もない。
こちらから手紙を送っても、そのまま返ってきた。
九本目の薔薇が揃った日、彼女に贈ったドレス、ネックレスなど一式が届いた。
二年前にあった、父の生誕祭に贈った品物だ。
エスコートをして、会場に入った。
あまりに美しくて、ドキドキしたことを覚えている。あの時、金の髪を結い上げ、うなじの後れ毛を見てつい、視線を逸らせた。
胸元には僕の贈ったネックレスが、輝いていた。
12本目の薔薇。
ブローチが返ってきた。
鳩をモチーフにしたエメラルドをあしらったブローチ。繊細な細工がなされている。
これを贈ったのち、いつもつけていた。赤い帽子に、お茶会のドレスの胸元にも。気に入ってくれた事が嬉しかった。
懐かしさがよぎる。
薔薇の花は毎日届いた。
色も種類も違う。
赤い色でも同じ種類の薔薇は送られてはこなかった。
そして、僕が贈ったものが返却されてくる。
初めは薔薇の本数に意味があるのかと思ったが、品物が返ってくるのだから、ちがうのだろう。
ただ、新しい贈り物から順に返ってきていた。
一気にではなく、一つずつ。
訳がわからない。
学園に行けばミランダに付き纏われるように過ごす。
まだ、正式に婚約していないというのに、婚約者気取りで声をかけてくる。僕に触れてくる。
これまでなら、多少の身分意識があった。距離感があったはずなのに、今ではそれは失われていた。
それが、煩わしかった。
ミランダの周りにはアレックスを筆頭に、僕の補佐候補である、友人たちが常にいた。
彼らは教室で、わいわいと雑談をしている。
彼らにはすでに婚約者がいるというのに、この親しみはなんであろうか?
「ミランダ。婚約者のいる男性に無闇に近づくものじゃない」
「ロベルト様。嫉妬ですの?大丈夫ですわ。私の大事な方はロベルト様ですもの」
違う。
嫉妬ではない。
「それがマナーだ」
「ロベルト様。固いですよ」
アレックスたちが、笑う。
節度を言っただけだ。
以前は、もっとマナーができていたように思う。
そうだ・・・。だから、目が離せなかったのだ。
「できない」と涙ぐまれ、弱々しく振る舞う。だから、物を与え、機嫌をとり、次のステップへと持ち込んでいた。
すると笑顔で受け取り「頑張れそうですわ」と必死になる。頑張る。
できれば、褒める。そして、ご褒美としてプレゼントを与える。
いつの間にか、それが当たり前のようになっていた。
表情が豊かで、その一挙手一投足が可愛く見えて、好ましく思えたのだ。
妹のように思っていたものが、いつの間にか度を越していた。
一つが気になりだすと、全てが気になっていった。
「ロベルト様。お聞きになりましたか?私たち、婚約できますわ」
長い銀の髪がふわりと動く。
口を開けて笑っている。
レティシアとは対照的だった。
違和感があった。
なぜ笑っているのだろうか?
「ミランダ?」
「これで、私たちを阻む者はいなくなりましたわ」
初めて、女性の笑顔が怖いと感じた。
目が、口元が・・・。
周囲も、こぞって祝ってくる。
異様だ。
「おめでとうございます。殿下」
「ミランダ様、おめでとうございます」
誰もレティシアの事には触れない。
噂にもならない。
違和感が膨らむ。
自分の中の違和感。
周囲に対する違和感。
気持ち悪い。
学園から帰ると、赤い薔薇が届いていた。
朱色を帯びた明るい赤い薔薇。
ほのかに香る。
婚約解消についての手紙もない。
こちらから手紙を送っても、そのまま返ってきた。
九本目の薔薇が揃った日、彼女に贈ったドレス、ネックレスなど一式が届いた。
二年前にあった、父の生誕祭に贈った品物だ。
エスコートをして、会場に入った。
あまりに美しくて、ドキドキしたことを覚えている。あの時、金の髪を結い上げ、うなじの後れ毛を見てつい、視線を逸らせた。
胸元には僕の贈ったネックレスが、輝いていた。
12本目の薔薇。
ブローチが返ってきた。
鳩をモチーフにしたエメラルドをあしらったブローチ。繊細な細工がなされている。
これを贈ったのち、いつもつけていた。赤い帽子に、お茶会のドレスの胸元にも。気に入ってくれた事が嬉しかった。
懐かしさがよぎる。
薔薇の花は毎日届いた。
色も種類も違う。
赤い色でも同じ種類の薔薇は送られてはこなかった。
そして、僕が贈ったものが返却されてくる。
初めは薔薇の本数に意味があるのかと思ったが、品物が返ってくるのだから、ちがうのだろう。
ただ、新しい贈り物から順に返ってきていた。
一気にではなく、一つずつ。
訳がわからない。
学園に行けばミランダに付き纏われるように過ごす。
まだ、正式に婚約していないというのに、婚約者気取りで声をかけてくる。僕に触れてくる。
これまでなら、多少の身分意識があった。距離感があったはずなのに、今ではそれは失われていた。
それが、煩わしかった。
ミランダの周りにはアレックスを筆頭に、僕の補佐候補である、友人たちが常にいた。
彼らは教室で、わいわいと雑談をしている。
彼らにはすでに婚約者がいるというのに、この親しみはなんであろうか?
「ミランダ。婚約者のいる男性に無闇に近づくものじゃない」
「ロベルト様。嫉妬ですの?大丈夫ですわ。私の大事な方はロベルト様ですもの」
違う。
嫉妬ではない。
「それがマナーだ」
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節度を言っただけだ。
以前は、もっとマナーができていたように思う。
そうだ・・・。だから、目が離せなかったのだ。
「できない」と涙ぐまれ、弱々しく振る舞う。だから、物を与え、機嫌をとり、次のステップへと持ち込んでいた。
すると笑顔で受け取り「頑張れそうですわ」と必死になる。頑張る。
できれば、褒める。そして、ご褒美としてプレゼントを与える。
いつの間にか、それが当たり前のようになっていた。
表情が豊かで、その一挙手一投足が可愛く見えて、好ましく思えたのだ。
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