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9.マリア視点
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リューンは毎週ではないが温室に来てくれた。
来ると初めに手紙を渡してくれる。
質問だ。自分が思う改革案が現実するのかなども書いてくれるようになってくるようにもなった。父親に認めらせず悩んでいることも。
手紙の質問や改革案を読む限りリューンは人並みにできている。いや、それ以上に頑張っているのがわかった。
それなのに、なぜ否定するのか理解できない。どうしてリューンを認めない?何が悪い?気に食わない?
理由がわからなかった。
確かにローレンス先輩は優秀ではあった。人当たりもよく尊敬できる先輩。
だが、私からすれば全てまやかしのように思えていた。「全部を作っている」といった感じ。
優等生を演じているように見えたのだ。自然に演じているから誰もわからないでいる。
周りは惑わされているだけ。
それが私の見解。
ローレンス先輩が優れた人間に見えるからといって、それを基準にして判断しているのではなかろうか。聞いた限りそれが正解な気がする。
どうすれば、リューンに自信を持ってもらえるのか?
自信を失くす一方の彼にどう力になれる?
本から変えを上げ真剣に絵を描いている彼の後ろ姿を見た。
全身が絵を描くことを楽しんでいるのが分かる。
彼にとっては大事なのだ。
甘やかしてあげたい。褒めてあげたい。
だけど無理だ。
リューンは既婚者で私は未婚。
これ以上の接触はあらぬ疑いを生んでしまう。
悔しい。
学園時代からの高位貴族の友人に相談しても「既婚者である限り無理ね」といわれただけ。その通りなのたが、どうすれば良いのか。放っておけない。
しがない子爵家であり、いくら大きな商家の娘だからといってもできることは少なかった。
そんな時、入り口から足音が聞こえてくる。珍しく大人数がこちらに向かってきていた。
ベンチを離れ近くの植物を見ているふりをしていると、リューンの父親と執事らしき人たちが入ってくるかり急足で奥へと進んでゆく。
リューンに言わなければ・・・、そう思ったが出来なかった。
絵を描くのに夢中の彼に声をかけただけでは気づかない。駆け寄るには間に合わなかった。
そして自分の存在にも迷いが行動を遅らせた。
彼らの動きの方が早く、無言でリューンに近づき荒々しくスケッチブックをはたき落とす。
「リューン!!」
あまりの声に思わず耳を押さえてうずくまってしまう。
「絵を描くなと言ってただろう!そんな簡単な約束も守れないのか!!ローレンスならもっと有意義なことをするぞ」
「父さん・・・」
温室にバシンっと鈍い音が響いた。
「リューン!」
いてもたってもいられずリューンの元に駆け寄る。
彼の父親の血走った目が私を見てきた。
あまりの怖さに身体がすぐむ。
「お前か!?お前がリューンを誑かしたのかっ!!」
一瞬だったと思う。大きな影が覆い被さってきたかと思った瞬間、頬と胸、腕が痛み、息ができなくなるというのが同時に起こった。
私は・・・殴られていた。その拍子に花壇の淵に胸を打ちつけてしまったようだ。
「マリアっ!!」
あはっ・・・
息が・・・苦しい。
痛みと苦しさで目が開かない。
「リューン、帰るぞ!」
「マリア。ごめっ。マリアっ」
悲しげなリューンの声が遠くなっていく。
ひぅっ・・・
息・・・。
顔が痛い。
胸が痛い。
胸が、痛い。
涙が出た。
痛いからじゃない。
リューンを護れなかったから。
悔しい。
あぅ・・・
苦しさがマシになると痛みに堪え、這うようにして彼のスケッチブックを拾いに行く。
紙がくしゃくしゃになっている。踏まれたのか足跡もついていた。
彼の絵が・・・。
なんで・・・
汚れをドレスの端で落とした。くしゃくしゃになった紙を手で真っ直ぐに延ばす。
綺麗なのに。
これの価値がわからないなんてー。
一枚づつ丁寧に伸ばしてゆく。ページをめくると、そこに本を読んでいる女性の上半身が描かれていた。
もしかして・・・?まさか。
私だとしたら美化しすぎてる。私はこんな顔じゃない。
でもこのドレス・・・。
リューンって目が悪いんじゃないの。
嬉しさと悔しさで涙がとめどなく流れる。
リューンを助けたい・・・。
そう強く思った。
来ると初めに手紙を渡してくれる。
質問だ。自分が思う改革案が現実するのかなども書いてくれるようになってくるようにもなった。父親に認めらせず悩んでいることも。
手紙の質問や改革案を読む限りリューンは人並みにできている。いや、それ以上に頑張っているのがわかった。
それなのに、なぜ否定するのか理解できない。どうしてリューンを認めない?何が悪い?気に食わない?
理由がわからなかった。
確かにローレンス先輩は優秀ではあった。人当たりもよく尊敬できる先輩。
だが、私からすれば全てまやかしのように思えていた。「全部を作っている」といった感じ。
優等生を演じているように見えたのだ。自然に演じているから誰もわからないでいる。
周りは惑わされているだけ。
それが私の見解。
ローレンス先輩が優れた人間に見えるからといって、それを基準にして判断しているのではなかろうか。聞いた限りそれが正解な気がする。
どうすれば、リューンに自信を持ってもらえるのか?
自信を失くす一方の彼にどう力になれる?
本から変えを上げ真剣に絵を描いている彼の後ろ姿を見た。
全身が絵を描くことを楽しんでいるのが分かる。
彼にとっては大事なのだ。
甘やかしてあげたい。褒めてあげたい。
だけど無理だ。
リューンは既婚者で私は未婚。
これ以上の接触はあらぬ疑いを生んでしまう。
悔しい。
学園時代からの高位貴族の友人に相談しても「既婚者である限り無理ね」といわれただけ。その通りなのたが、どうすれば良いのか。放っておけない。
しがない子爵家であり、いくら大きな商家の娘だからといってもできることは少なかった。
そんな時、入り口から足音が聞こえてくる。珍しく大人数がこちらに向かってきていた。
ベンチを離れ近くの植物を見ているふりをしていると、リューンの父親と執事らしき人たちが入ってくるかり急足で奥へと進んでゆく。
リューンに言わなければ・・・、そう思ったが出来なかった。
絵を描くのに夢中の彼に声をかけただけでは気づかない。駆け寄るには間に合わなかった。
そして自分の存在にも迷いが行動を遅らせた。
彼らの動きの方が早く、無言でリューンに近づき荒々しくスケッチブックをはたき落とす。
「リューン!!」
あまりの声に思わず耳を押さえてうずくまってしまう。
「絵を描くなと言ってただろう!そんな簡単な約束も守れないのか!!ローレンスならもっと有意義なことをするぞ」
「父さん・・・」
温室にバシンっと鈍い音が響いた。
「リューン!」
いてもたってもいられずリューンの元に駆け寄る。
彼の父親の血走った目が私を見てきた。
あまりの怖さに身体がすぐむ。
「お前か!?お前がリューンを誑かしたのかっ!!」
一瞬だったと思う。大きな影が覆い被さってきたかと思った瞬間、頬と胸、腕が痛み、息ができなくなるというのが同時に起こった。
私は・・・殴られていた。その拍子に花壇の淵に胸を打ちつけてしまったようだ。
「マリアっ!!」
あはっ・・・
息が・・・苦しい。
痛みと苦しさで目が開かない。
「リューン、帰るぞ!」
「マリア。ごめっ。マリアっ」
悲しげなリューンの声が遠くなっていく。
ひぅっ・・・
息・・・。
顔が痛い。
胸が痛い。
胸が、痛い。
涙が出た。
痛いからじゃない。
リューンを護れなかったから。
悔しい。
あぅ・・・
苦しさがマシになると痛みに堪え、這うようにして彼のスケッチブックを拾いに行く。
紙がくしゃくしゃになっている。踏まれたのか足跡もついていた。
彼の絵が・・・。
なんで・・・
汚れをドレスの端で落とした。くしゃくしゃになった紙を手で真っ直ぐに延ばす。
綺麗なのに。
これの価値がわからないなんてー。
一枚づつ丁寧に伸ばしてゆく。ページをめくると、そこに本を読んでいる女性の上半身が描かれていた。
もしかして・・・?まさか。
私だとしたら美化しすぎてる。私はこんな顔じゃない。
でもこのドレス・・・。
リューンって目が悪いんじゃないの。
嬉しさと悔しさで涙がとめどなく流れる。
リューンを助けたい・・・。
そう強く思った。
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コメントありがとうございます。
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