【完結】ターニャの歌

彩華(あやはな)

文字の大きさ
8 / 14

ファロットと再び

しおりを挟む
沢山の資料を抱えて研究室に戻っていた。
 アルフェルドからの依頼を受けるにあたり、必要な資料が不足していたのだ。
 部屋の前に人影をみて、アルフェルドかと思い足を早めたが、そこにはファロットが立っていた。
 2年ぶりだろうか。彼は会わないうちに、背が伸び、大人らしくなっていた。

「ファロット?」
「久しぶりだな」

 冷たい声。凍りそうなほどの冷淡な眼差し。なにが彼をそうさせるのかわからなかった。

「はっ、よくも、のうのうとしてられるな!」

 どう言うことかわからなかった。

「ファロット?」
「お前のせいだ!お前があれを作るから、おかしくなったんだ!!」

 アレとはなにか?
 どうして怒っているのか?

「どういう、こと?何が起こってるの?」
「お前・・・、知らない、のか?」

 知らない。 
 この数ヶ月、研究棟からから出ていなかった。アルフェルドに褒められたい一身で研究に明け暮れているのだから。

「戦争が始まった。俺も明後日には出征だ。ライラも、ライラもだ。お前が魔術技術動物を作ったから、こうなったんだ。それを知らないだと!!」

 魔術技術動物・・・。
 動物を作ったが、魔術技術動物とは?

 ファロットは、指を鳴らすと一羽の鷹らしき鳥が、彼の方に止まった。無骨なフォルム。ターニャが手がけたものとは違う。だが、それはドールと魔術技術との違いだからそうなる。
 
「なんで?なんで?わたしのドールが原型?」
「やっぱりお前のだったろう!」
「真似できないようにしてたのに・・・」
「はっ?」
「わたしのドールは真似できないの。ましてや魔術技術に置き換えるなんて、そんな無茶な!ありえない。そんなことしたら、身体の負担が大きすぎる!」
「ターニャ?!」
「やめて、今すぐ・・・。わたし、わたしがもと?わたしが兵器を・・・?まさか・・・」

 ターニャは持っていた物を地面に広げ確認しはじめた。
 一つ一つはバラバラ。意味の解さない物。でも、振られている番号を無視して並べ変えてみる。

「ターニャ?」
「黙って!!」

 入れ替えを幾度もしてみる。辻褄の合うよう、先入観を捨てる。

 ここにあるものだけ・・・、そして記憶を辿る。今までの研究したことは頭に入っている。

 ポタッ

 涙が紙の上に落ちる。

「ははっ。」
「ターニャ!」
「馬鹿だ。わたしは馬鹿だ。こんな初歩的なミス・・・」

「あーあ、知っちゃった」

 振り向くと、そこにはアルフェルドが立っていた。

「アルフェルド殿下・・・」
「たしか、ファロット君だっけ?なんで言っちゃうのかな?折角、知らないまま楽しく研究してくれてたのに、計画が狂っちゃうじゃないか」
「殿下・・・どうして・・・?」
「ラルドに見張らせてたんだよ」


 バサリとアルフェルドの肩に留まる鷹。
 ファロットは、自分の鳥と見比べた。

「それが、ターニャのか・・・?」
「そうだよ。大変だったんだから。他の人形師にさえできない技術で作られてるんだから、解読するのに時間がかかった上、ドール作成出来ないから、型落ちの魔術技術で再現するしかなかったんだよ。しかも君は武器や兵器に対して頑なに拒否してたから、わからないよう懐柔することのが大変だったよ。っても、優しい言葉だけで手のひらの上で転がってくれるんだから楽しかったよ」

 クスクスと笑うアルフェルドはいつもとは違っていた。
 
「アルフェルド殿下、貴方は・・・」
「おっと、ファロット君。君の愛しの女性がどうなってもいいのかい?」
「ライラ?ライラに何を?」
「まだ、何も。でも、前線に送ってもいいかもね。君次第だよ」
「・・・っ・・・」
「ふふっ。ファロット君は僕の側で働いて貰おうかな。全部知っちゃったんだ。口外されたくないし・・・。ターニャ、君も、知らなければ好きに出来たのにね。残念。君は地下に移って、僕のために研究してもらうね。逃れられないよ」

 ターニャから溢れる涙は止まることはなかった。
 アルフェルドの裏切りに心を痛め、自分の信念を壊されたことに絶望・・・した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

ジルの身の丈

ひづき
恋愛
ジルは貴族の屋敷で働く下女だ。 身の程、相応、身の丈といった言葉を常に考えている真面目なジル。 ある日同僚が旦那様と不倫して、奥様が突然死。 同僚が後妻に収まった途端、突然解雇され、ジルは途方に暮れた。 そこに現れたのは亡くなった奥様の弟君で─── ※悩んだ末取り敢えず恋愛カテゴリに入れましたが、恋愛色は薄めです。

薫る袖の追憶を捨て、月光の君に溺愛される

あとりえむ
恋愛
名門の姫君・茜は、夫の高彬に蔑まれ、寂れた離れで孤独な死を迎えた…… けれど意識が途切れた瞬間、視界を埋め尽くしたのは命を削って輝く緋色の夕映え。 目が覚めると、そこは高彬との婚約が決まったばかりの十五歳の春に戻っていた。 「二度目の人生では、誰のことも愛さず、ただあの方の幸せだけを願おう」 茜は、かつて自身の孤独を救ってくれた「最推し」の東宮・暁を、未来の知識で密かに支えることを決意する。 執着を捨て、元夫に無関心を貫く茜。 一方、高彬は自分に興味を失った茜の価値に気づき、今更遅い後悔に狂い始めるが……。 「見つけた。お前は俺の、運命の番だ」 正体を隠して東宮を支えていたはずが、冷徹な暁に見出され、逃げ場のないほどの執着と溺愛を注がれることに。 平安の雅な風情の中で描かれる、逆転と救済の物語。 最後は、二人が永遠の契りを交わす和歌で幕を閉じます。

上手に騙してくださらなかった伯爵様へ

しきど
恋愛
 アイルザート・ルテシオ伯爵は十七歳で家督を継いだ方だ。  文武両道、容姿端麗、人柄も良く領民の誰からも愛される方だった。そんな若き英雄の婚約者に選ばれたメリッサ・オードバーン子爵令嬢は、自身を果報者と信じて疑っていなかった。  彼が屋敷のメイドと関係を持っていると知る事になる、その時までは。  貴族に愛人がいる事など珍しくもない。そんな事は分かっているつもりだった。分かっていてそれでも、許せなかった。  メリッサにとってアイルザートは、本心から愛した人だったから。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

鈍感令嬢は分からない

yukiya
恋愛
 彼が好きな人と結婚したいようだから、私から別れを切り出したのに…どうしてこうなったんだっけ?

醜女公爵令嬢の私が新婚初夜に「お前の事は愛することはない」と言われたので既成事実を作ったら、冷酷騎士団長の夫が狂ったように執着してきました

スノウマン(ユッキー)
恋愛
醜女と馬鹿にされる公爵令嬢レティーナは、自分とは違い子供は美形になって欲しいと願う。その為に国一番のイケメンである女嫌いで笑わない事で有名な冷酷な騎士団長カイゼルの子種が欲しいと考えた。実家も巻き込み政略結婚でカイゼルと結婚したレティーナだったが彼は新婚初夜に「お前の事は愛することはない」と告げてきた。だがそれくらいレティーナも予想していた。だから事前に準備していた拘束魔法でカイゼルの動きを封じて既成事実を作った。プライドを傷つけられカイゼルは烈火の如く怒っているだろうと予想していたのに、翌日からカイゼルはレティーナに愛を囁き始めて!?

愛しの第一王子殿下

みつまめ つぼみ
恋愛
 公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。  そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。  クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。  そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。

処理中です...