【完結】ターニャの歌

彩華(あやはな)

文字の大きさ
14 / 14

エピローグ

しおりを挟む
 彼女の話をロードスは真剣に聞いた。
 メモをとり、事細かに記してゆく。

「じゃあ、君はそれからずっとここにいるの?」
「ええっ。ターニャはここで最期を迎えることを望んだの。ずっと帰りたがっていた。生みの親のカジェロのいる所、育てくれたエスタニアのいるところ。帰る場所だった。幸せだった場所だから」
「国はどうなったの?」
「予想通り、魔核に頼り切っていた生活は破綻したわ。
 生きるのに必死になって、戦争も争いも・・・それどころじゃなくなった。助け合わなくてはいけなくなった。
 人形師は・・・いなくなった。いえ、ほとんどの人形師がドールだったの。わたしのように受け継がれた魔核。みんな解放を願っていた」
「それで一気に文化の衰退があったわけか・・・」
「謎が解けたかしら?」
「ああ、新発見だ。すごいよ。でも・・・」

 ロードスは言葉を濁した。

「証拠がないのが残念だね。君の話だけでは確証が得ないからね」
「そう、なら残念ね」

 優しく微笑んだ。

「君はこれからもここでいるの?」
「・・・」
「君は一人でずっといた。誰に会うでもなく、墓守として。もう解放されても構わないんじゃないかな?」
「解放?」
「もう、人形師もドールも君を除いてはいない。追われることもない。なら外に出ようとは思わないの?」

 彼女は目を伏せた。
 沢山の思いがあっただろう。

「もう、ターニャはいない。なら、解放されても・・・」
「わからない・・・、わからない。どうすればいいのか?自分がどうしたいのか」

 幼いまま、大人になったようだった。
 成長するはずの魔核が、人と触れ合う事がなかったのだろう。記憶だけで生きている知識も経験もかけたドール。

 彼は彼女の頭をポンポンとやさしく叩いた。

「これから知っていけばいいじゃないか。僕と一緒に行こう」
「でも・・・」
「いつでも帰って来れるよ。ここは君の故郷。君はドール。僕より遥かに生きるんだろう。ならまた、帰って来れるよ。それに僕が協力するよ。こう見えて発掘調査のスペシャリストさ。保存するよう、かけ合おう」


 自信満々のロードスに笑った。

 初めて笑った。幸せを感じた。


「ターニャ、わたし行ってもいい?」

 振り返りターニャを見ると、その顔は微笑んでいるように見えた。

。わたしは大丈夫。ゆっくり果てるわ。貴女は貴女の生き方を見つけてきなさい。わたしが見ることのなかった世界を見てきたらいいの』

 聞こえるはずもない声。
 でも存在した。
 胸の奥からいくつもの温かな声援が聞こえてくる気がする。


「ターニャ、わたし行ってくる。世界を見てくるわ」
「じゃあ、僕と行こう。僕名前はロードス。君は?」
「わたしは。遠い異国の古語で『祈り』と言う意味よ」

 


 二人は笑い合った。
 手を繋ぎ前を向いて、歩き出した。




                    ー完ー

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

ジルの身の丈

ひづき
恋愛
ジルは貴族の屋敷で働く下女だ。 身の程、相応、身の丈といった言葉を常に考えている真面目なジル。 ある日同僚が旦那様と不倫して、奥様が突然死。 同僚が後妻に収まった途端、突然解雇され、ジルは途方に暮れた。 そこに現れたのは亡くなった奥様の弟君で─── ※悩んだ末取り敢えず恋愛カテゴリに入れましたが、恋愛色は薄めです。

薫る袖の追憶を捨て、月光の君に溺愛される

あとりえむ
恋愛
名門の姫君・茜は、夫の高彬に蔑まれ、寂れた離れで孤独な死を迎えた…… けれど意識が途切れた瞬間、視界を埋め尽くしたのは命を削って輝く緋色の夕映え。 目が覚めると、そこは高彬との婚約が決まったばかりの十五歳の春に戻っていた。 「二度目の人生では、誰のことも愛さず、ただあの方の幸せだけを願おう」 茜は、かつて自身の孤独を救ってくれた「最推し」の東宮・暁を、未来の知識で密かに支えることを決意する。 執着を捨て、元夫に無関心を貫く茜。 一方、高彬は自分に興味を失った茜の価値に気づき、今更遅い後悔に狂い始めるが……。 「見つけた。お前は俺の、運命の番だ」 正体を隠して東宮を支えていたはずが、冷徹な暁に見出され、逃げ場のないほどの執着と溺愛を注がれることに。 平安の雅な風情の中で描かれる、逆転と救済の物語。 最後は、二人が永遠の契りを交わす和歌で幕を閉じます。

上手に騙してくださらなかった伯爵様へ

しきど
恋愛
 アイルザート・ルテシオ伯爵は十七歳で家督を継いだ方だ。  文武両道、容姿端麗、人柄も良く領民の誰からも愛される方だった。そんな若き英雄の婚約者に選ばれたメリッサ・オードバーン子爵令嬢は、自身を果報者と信じて疑っていなかった。  彼が屋敷のメイドと関係を持っていると知る事になる、その時までは。  貴族に愛人がいる事など珍しくもない。そんな事は分かっているつもりだった。分かっていてそれでも、許せなかった。  メリッサにとってアイルザートは、本心から愛した人だったから。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

鈍感令嬢は分からない

yukiya
恋愛
 彼が好きな人と結婚したいようだから、私から別れを切り出したのに…どうしてこうなったんだっけ?

醜女公爵令嬢の私が新婚初夜に「お前の事は愛することはない」と言われたので既成事実を作ったら、冷酷騎士団長の夫が狂ったように執着してきました

スノウマン(ユッキー)
恋愛
醜女と馬鹿にされる公爵令嬢レティーナは、自分とは違い子供は美形になって欲しいと願う。その為に国一番のイケメンである女嫌いで笑わない事で有名な冷酷な騎士団長カイゼルの子種が欲しいと考えた。実家も巻き込み政略結婚でカイゼルと結婚したレティーナだったが彼は新婚初夜に「お前の事は愛することはない」と告げてきた。だがそれくらいレティーナも予想していた。だから事前に準備していた拘束魔法でカイゼルの動きを封じて既成事実を作った。プライドを傷つけられカイゼルは烈火の如く怒っているだろうと予想していたのに、翌日からカイゼルはレティーナに愛を囁き始めて!?

愛しの第一王子殿下

みつまめ つぼみ
恋愛
 公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。  そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。  クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。  そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。

処理中です...