(完結)泡沫の恋を人魚は夢見る

彩華(あやはな)

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6.見られていた!?

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 だがその白い布は、私にとっては下着よりもっと問題のあるものだった。まだ木綿の下着を出された方がもっとマシな反応ができたと思う。

 その白い布切れは、あの嵐の夜に落としたメイドキャップだった。
 侍女や若いメイドたちはホワイトブリムを好んで使っているのが私は髪全体を隠せるメイドキャップを使用している。
 中年女性たちはメイドキャップを愛用している人が多い。なので間違い防止としておばさま方からアドバイスで自分のとわかるようにリボンの端に花の刺繍を施していたのだから、間違いようがない。

 なぜこの方が持っているのか。

 どうして私のだとわかったのだろう。誰かに聞いたのか?
 それとも海に飛び込んだのが見られた?
 
 いくつもの憶測がよぎる。
 でも平常心を心掛け、表情を隠した。

「これは君のかな?」
「どうでしょうか?よく見せていただいてもよろしいでしょうか?」
「無くした覚えは?」
「確かにありますが、どこで無くしたかはわかりません」

 メイドキャップを受け取り確認するふりをする。変にしばらっくれても無理だろう。認めつつシラを切る方向にする。

「私の・・・ですね。どこで拾われましたか?」
「どこだと思う?」
 
 聞いているのは私だと言うのに質問で返され、ついイラッとした。

「さぁ、どこですか?」
「殿下が船から落ちたのは知ってるかい?」
「・・・噂で聞きました」

 私をじっと見てくるその視線から思わず逃げた。

「船員も落ちたんだが、その直後、彼らを助けに行くように誰かが海に飛び込んだんだ。これはその人の落とし物たんだよ」

 見られてた?
 いや、まだそうだとはいい切れない。

「本当に見たのですか?」
「あぁ。昔から私は視力がよくてね。嵐の海に躊躇なく飛び込むから止める間もなく驚いたよ。しかも綺麗な着水姿に見惚れたね」
「超人ですか?あんな嵐の中冷静に見るなんてあり得ませんが」
?」

 うん?

「メイドの君が外に出ることはあるのかな?」
「ま、窓から・・・」
「裏方であるメイドの仕事場に窓はないはずだが?」

ーちょっ!!追い込まれてる?
 墓穴ほっちゃった?立て直しをしないと・・・

 平静を保ちつつ言い訳してみる。

「嵐ですよ。で揺れが酷かったですこらあんな嵐という言い方でもおかしくないはずですが?」
「誰も高波なんて言ってないよ?」
 
 あれ?自分で自分を追い込んでる?

 美形な顔で笑われるのは心地悪かった。なんだかソワソワしてしまう。

 この方はわたしを脅したいのだろうか?こうなれば開き直るしかない。

「・・・海に飛び込んだのが私だとして、何か問題でもありますか?」
「いや、そうじゃなくて・・・」

 睨むようにして言うと、アルフ様は急に慌て出した。
 こちらにしたらなんなのだと聞きたい。わざわざ私を呼び出して脅すかのように聞いてきたかと思えば、こんな顔をなんて。

「えーっと、つまり君は人魚を見たか確認したい?」
「・・・はあぁ?」

 意味不明。

「脈絡が全くわかりませんが?」

 眉を寄せ首を傾げながら、相手を見た。

 目を彷徨わせ、おどおどしているイケメン姿が少しだけ可愛く見える。
 彼は一つ咳払いをして改まった顔を私に向けた。

「あの時、本当に私は君が海に飛び込んだのを見たんだ。それでこの風に飛ばされたキャップを受け止めた。この持ち主の安否を確認していた時に、君を知ったんだ。同時に君が人魚に詳しいことも。だから知りたい。君は人魚を見たことがあるのか?」
 
 本当に海に飛び込んだのを見られていたことに内心驚く。
 どんな動体視力をしているのか。

 しかし、人魚を見たことがあるのか聞かれたのには答えるには困った。

 それこそ、このアトラス国の人間なら一度や二度は見たことあるだろうに。

「それを知ってどうするのですか?」
「・・・人魚かどうか確認してもらいたい者がいるんだ」

 口ごもりながらの言葉に再び間抜けな声を出してしまった。

「はあ?」

 

 
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