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12.図書館
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マネリア様のマナー講座は厳しいものだった。セイネ様も身を縮め震え出すほど。
なのに、マネリア様は嬉々として教えてくるのだからたまったものでなかった。
やっとの休みに私はマネリア様に見つかる前に図書館へと逃げ込んだ。
本特有の香りが落ち着かせてくれる。いつ匂いを嗅いでも飽きない。
私は人魚について書いてある本を探すためゆっくりと中を歩いた。
古い背表紙が歴史を感じさせる。
やっとそれらしきものを見つけたのは最奥の一番下の段だった。
少し埃がついていたので指でなぜると色鮮やかな表紙が現れる。
取り出そう引っ張るとその隣の本まで一緒に出てきた。
「くっついてたのかしら?」
薄く埃がかぶっていたので取り出したハンカチで拭う。
そこには『記録 リード著』と書かれていた、
なんだろうと興味が湧いてページをめくる。
『咲春の月 6日 やっと彼女と会えたので今日から日記をつけることにした』
『咲春の月 15日 毎日は彼女に会えないのが寂しい。早く名前を教えて欲しいのに』
『咲春の月 23日 久しぶりに彼女に会えた。僕を子供扱いする。もう10歳なのに』
『咲春の月 25日 彼女の歌は綺麗。歌っている姿も。楽しそうで僕も一緒に歌った。だけど、彼女は耳を塞いで怒った。どうして?』
抜粋して読み進める。
可愛らしい幼い字が整った綺麗なものになっていた。
『若咲の月 6日 私の誕生日に彼女が涙のような形の白い真珠をくれた。彼女は「初めて育てた」と言った。すごく嬉しい』
『若咲の月 28日 彼女にダイヤのネックレスを送った。キラキラ輝く石に興奮していた』
パタン
本を閉じた。
記録というより日記じゃないだろうか。少年の淡い恋心を覗いてしまったように思えてきて、恥ずかしく感じてしまう。
そっと下の位置に戻し、改めて初めに手に取った本と他に類似する何冊かを持って読書スペースへと行った。
席についてその本に向かう。
一番上にあった重厚感のある青い表紙には『人魚 アリ著』と丁寧に記されていた。他の本も同じ人が書いた物のようだった。
どの本も手の込んだ手作りに見えた。
私は青い表紙の本を開いた。
ーなんだろう
私の知っている内容ばかりではあるが、この著者は本当に人魚が好きなのがわかった。字が楽しそうに踊っている。手書きだと思われる人魚の挿絵には色鮮な彩色が施され、精密に描写もされていた。
書かれた言葉の端々からも人魚に対する敬意が感じ取れた。
見ているだけで引き込まれて、次へ次へとページを捲る手が止まらない。
目が字を追いかけていった。
「一日中本を読んでいたのか?」
背後から声がかけられてびっくりして振り向くと、そこにはランプを持つ呆れた表情のアルフ様がたっていた。
「えっ?」
「夕食をのがしたぞ」
その声に周りを見渡すと、窓の外はいつの間にか赤い夕陽が今にも沈みそうになっていた。
「よくこんな暗い中で本が読めるな」
「気づいていませんでした・・・」
「そんなに面白かったのか?」
ーよくぞ聞いてくれました!
「すごく面白かったです。このアリさんが書いた人魚の話!新鮮でした!」
嬉しくてつい興奮の声を出した。
誰かにこの本の魅力を教えないとぜひ読んでもらわないと損をしてしまう。それくらい読み応えのあるものだった。
「アリ、さん?」
「はい。この本の作者です。この部屋の一番奥にありました。なんであんな場所に隠されたように置いてあるなんて勿体無い」
「・・・そうか・・・。良かったのか・・・」
アルフ様は少し照れくさそうに笑った。
「?」
「いや、なんでもない。その本は私が返しておく。時間が時間だから早く部屋に帰りなさい」
夕日は山に落ち、あたりは暗くなっていた。
ランプの日だけが私とアルフ様を照らしている。
ゆらゆらと赤く揺れるランプの火は暖かい色をしていた。
「きれい・・・」
「フィー?」
「あっ、すいません。では、お願いします」
ぐいっと本を渡すと「失礼しましたー」と言って、ささっと退散してやった。
なのに、マネリア様は嬉々として教えてくるのだからたまったものでなかった。
やっとの休みに私はマネリア様に見つかる前に図書館へと逃げ込んだ。
本特有の香りが落ち着かせてくれる。いつ匂いを嗅いでも飽きない。
私は人魚について書いてある本を探すためゆっくりと中を歩いた。
古い背表紙が歴史を感じさせる。
やっとそれらしきものを見つけたのは最奥の一番下の段だった。
少し埃がついていたので指でなぜると色鮮やかな表紙が現れる。
取り出そう引っ張るとその隣の本まで一緒に出てきた。
「くっついてたのかしら?」
薄く埃がかぶっていたので取り出したハンカチで拭う。
そこには『記録 リード著』と書かれていた、
なんだろうと興味が湧いてページをめくる。
『咲春の月 6日 やっと彼女と会えたので今日から日記をつけることにした』
『咲春の月 15日 毎日は彼女に会えないのが寂しい。早く名前を教えて欲しいのに』
『咲春の月 23日 久しぶりに彼女に会えた。僕を子供扱いする。もう10歳なのに』
『咲春の月 25日 彼女の歌は綺麗。歌っている姿も。楽しそうで僕も一緒に歌った。だけど、彼女は耳を塞いで怒った。どうして?』
抜粋して読み進める。
可愛らしい幼い字が整った綺麗なものになっていた。
『若咲の月 6日 私の誕生日に彼女が涙のような形の白い真珠をくれた。彼女は「初めて育てた」と言った。すごく嬉しい』
『若咲の月 28日 彼女にダイヤのネックレスを送った。キラキラ輝く石に興奮していた』
パタン
本を閉じた。
記録というより日記じゃないだろうか。少年の淡い恋心を覗いてしまったように思えてきて、恥ずかしく感じてしまう。
そっと下の位置に戻し、改めて初めに手に取った本と他に類似する何冊かを持って読書スペースへと行った。
席についてその本に向かう。
一番上にあった重厚感のある青い表紙には『人魚 アリ著』と丁寧に記されていた。他の本も同じ人が書いた物のようだった。
どの本も手の込んだ手作りに見えた。
私は青い表紙の本を開いた。
ーなんだろう
私の知っている内容ばかりではあるが、この著者は本当に人魚が好きなのがわかった。字が楽しそうに踊っている。手書きだと思われる人魚の挿絵には色鮮な彩色が施され、精密に描写もされていた。
書かれた言葉の端々からも人魚に対する敬意が感じ取れた。
見ているだけで引き込まれて、次へ次へとページを捲る手が止まらない。
目が字を追いかけていった。
「一日中本を読んでいたのか?」
背後から声がかけられてびっくりして振り向くと、そこにはランプを持つ呆れた表情のアルフ様がたっていた。
「えっ?」
「夕食をのがしたぞ」
その声に周りを見渡すと、窓の外はいつの間にか赤い夕陽が今にも沈みそうになっていた。
「よくこんな暗い中で本が読めるな」
「気づいていませんでした・・・」
「そんなに面白かったのか?」
ーよくぞ聞いてくれました!
「すごく面白かったです。このアリさんが書いた人魚の話!新鮮でした!」
嬉しくてつい興奮の声を出した。
誰かにこの本の魅力を教えないとぜひ読んでもらわないと損をしてしまう。それくらい読み応えのあるものだった。
「アリ、さん?」
「はい。この本の作者です。この部屋の一番奥にありました。なんであんな場所に隠されたように置いてあるなんて勿体無い」
「・・・そうか・・・。良かったのか・・・」
アルフ様は少し照れくさそうに笑った。
「?」
「いや、なんでもない。その本は私が返しておく。時間が時間だから早く部屋に帰りなさい」
夕日は山に落ち、あたりは暗くなっていた。
ランプの日だけが私とアルフ様を照らしている。
ゆらゆらと赤く揺れるランプの火は暖かい色をしていた。
「きれい・・・」
「フィー?」
「あっ、すいません。では、お願いします」
ぐいっと本を渡すと「失礼しましたー」と言って、ささっと退散してやった。
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