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26.最終話.アルト視点
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子育ては大変だった。
ミリアの負担にならないようマヤが中心となって動いてくれた。
僕自身も育児に協力する。
何もかもが慣れないことばかりで不安もあった。四苦八苦しながらの日々。でもそれだけで幸せ話を感じる。
子供を取られたように感じたのか不安になるミリアを諭しつつ、双子といられる時間を作った。
ミリアの父、アスローディ伯爵がお忍びで来たりもする。
公ではないが王太子殿下もやってきた。
記憶がないミリアは申し訳なさそうにしていたが、自己紹介から始まりゆっくりと親友関係をつくっていく。
殿下が来たことであれからどうなったのかをざっと教えてくれた。サシャは北の地に送られている。
信仰を忘れ欲望のままいきたことで確実に聖女の力は失われたそうだ。
誰も彼女を知らないようなど田舎で修道女として質素な暮らしている。
どんなに自分が「聖女」と言おうとも虚言癖の女としか見られていないだろう。
そして、殿下とメリアーナ嬢もご成婚を果たしていた。
アリナ嬢も伯爵位の男と結婚して子供も生まれ幸せに生活していると教えてくれた。
良かったと安心する。
そんな平和な僕らの生活は幸せだった。
だが、子供たちが3歳になるころ、ミリアが頭を気にし出した。医師に来てもらい診察を受けると、再発したのがわかる。
もう一度治療をすることは、彼女の体力を考えると叶わない。
そしてミリア自身も願わなかった。
残りの時間を無駄にしないようにと医師に告げられる。
ミリアは「死にたくない」なんて言葉にもしなかった。僕だけには「もっと生きていたい」と泣くことがでてきた。
彼女は本当に強い女性だ。
限られた時間でも、もっとミリアを幸せにー。
彼女の笑顔をみていたい。
子供たちの笑顔をミリアにー。ミリアの笑顔を優しさを、子供たちに残してあげたい。
たくさんキスをして、抱きしめて温もりをー。
天気のいい時には庭にでて昼食をとる。そして、彼女は必ず四葉のクローバーを探した。
それを乾燥させて栞にするとミリアは大事な人に渡す。
僕やマヤ、ロイ、両親や殿下にも・・・。
「これは・・・誰のかしら。きっと出会ったらわかるわよね」
一枚だけ渡す相手がないままの栞が机の中にしまわれる。
記憶にはなくても心の片隅にある人物のもの。
ミリアの優しさが愛おしい。
ずっとずっと、永遠に・・・。
そんな願いはも叶わなかった。
再発がわかってから頭の痛みが増し、身体にまで異変が出てくるようになると、一年立つ頃には歩くこともできなくなって寝たきりになる。痛みで苦しむミリア。
そんな彼女は僕の前では情緒不安定で起こったり、泣いたり、八つ当たりするかとはあっても、子供達の前ではずっと笑っていた。
そして、その半年後には当初は嫌がったが痛み止めを投与しないと痛みを我慢できないほどになった。
そのため徐々に意識が混濁していた。
子供たちが5歳になった時、ミリアは逝った。
最期はしっかりと僕らを見つめてくれた。
言葉は出なかったが、それでも言いたいことがわかる。
「愛してるわ」
彼女は笑っていた。
綺麗で、美しくて、最高の笑顔。
僕らは静かに見送った。
喪失感が半端なく、このまま彼女の後を追ってしまいたかった。
でも、子供たちが僕の手を強く握ってくる。
震える小さな温もりに気づかされた。
この子たちを護るのは僕しかいないのだとー。
「母様を見送ろう」
ミリアの死に泣きわめく二人をあやすことで手一杯になる。
ミリアが怒る顔が見えたきがした。
二人を幸せにしないと・・・泣いていられない。
必死になる。
父や母、ミリアの両親に助けながらの育児、そして父親としての姿をー。
「はい、どうぞ」
娘のメリッサが僕にクローバーの花冠を僕の頭に乗せてきた。
「父様、僕もできたよ」
息子のレイナードも同じく見せてきた。二人とも上手に作っている。
それに引き換えー。
「父様は?」
僕の持つボロボロの冠をみせると、二人は笑ってきた。
「父様、ヘタクソ」
「これだけは苦手なんだ。二人は母様に似て上手だな」
僕は頭の上の冠を取るとメリッサの頭に乗せた。
ミリアの姿が重なる。
「はじめて会った時の母様にそっくりだ」
「本当!?」
「へぇ~。メリッサ、良かったね」
「ねぇ、母様ってどんな感じだったの?」
僕は二人にミリアの話をした。
興味深く聞いてくる。
何度も何度でも話してあげよう。僕がどんなに愛していたのかをー。
そうして、日が傾いた頃、僕らは立ち上がる。
「さあ、帰ろう」
「・・・うん」
名残惜しそうな二人の手をとる。
墓跡には二つの花冠。そして僕のなりそこないの冠がある。
「ミリア、また・・・くるよ」
「母様・・・またね」
「くるね・・・」
僕らは帰る。
「三人とも愛してるわ」
そう聞こえた気がした。
振り返り、顔を見合わせる。
「聞こえたか?」
「「うん!」」
気のせいかもしれない。
でも・・・。
笑いが込み上げてきた。
「ミリアならありそうだな」
「ふ~ん。わたしも母様を愛してるわ」
「僕も愛してる」
「ミリア、君が好きだ。愛してる。もちろん、メリッサ、レイナード!二人も愛してるぞ」
抱きしめると、二人はわざと嬉しそうな悲鳴を上げる。
「愛してる。僕は幸せだよ。ミリア安心しろ。また、来るたびに幸せだというから」
ミリアが笑った気がした。
大丈夫だよ。ミリア。心配しないでくれ。
「さあ、帰ろう。今日の夕食はなんだろうな?」
「もう、父様ったら!」
「僕、肉料理がいいな」
「わたしも。でもきのこが入ってないのがいい!!」
「こ~ら、好き嫌いせずにちゃんと食べろ」
「「はあ~い」」
そんなことを笑いながら僕らは帰路につく。
優しい風が吹いた。
クローバーが揺れる。
緑の絨毯の中、いくつもの白い花が灯火のようにゆらゆらとー。
*本編は終了です。
次からサシャ視点、3編お送りします。
ミリアの負担にならないようマヤが中心となって動いてくれた。
僕自身も育児に協力する。
何もかもが慣れないことばかりで不安もあった。四苦八苦しながらの日々。でもそれだけで幸せ話を感じる。
子供を取られたように感じたのか不安になるミリアを諭しつつ、双子といられる時間を作った。
ミリアの父、アスローディ伯爵がお忍びで来たりもする。
公ではないが王太子殿下もやってきた。
記憶がないミリアは申し訳なさそうにしていたが、自己紹介から始まりゆっくりと親友関係をつくっていく。
殿下が来たことであれからどうなったのかをざっと教えてくれた。サシャは北の地に送られている。
信仰を忘れ欲望のままいきたことで確実に聖女の力は失われたそうだ。
誰も彼女を知らないようなど田舎で修道女として質素な暮らしている。
どんなに自分が「聖女」と言おうとも虚言癖の女としか見られていないだろう。
そして、殿下とメリアーナ嬢もご成婚を果たしていた。
アリナ嬢も伯爵位の男と結婚して子供も生まれ幸せに生活していると教えてくれた。
良かったと安心する。
そんな平和な僕らの生活は幸せだった。
だが、子供たちが3歳になるころ、ミリアが頭を気にし出した。医師に来てもらい診察を受けると、再発したのがわかる。
もう一度治療をすることは、彼女の体力を考えると叶わない。
そしてミリア自身も願わなかった。
残りの時間を無駄にしないようにと医師に告げられる。
ミリアは「死にたくない」なんて言葉にもしなかった。僕だけには「もっと生きていたい」と泣くことがでてきた。
彼女は本当に強い女性だ。
限られた時間でも、もっとミリアを幸せにー。
彼女の笑顔をみていたい。
子供たちの笑顔をミリアにー。ミリアの笑顔を優しさを、子供たちに残してあげたい。
たくさんキスをして、抱きしめて温もりをー。
天気のいい時には庭にでて昼食をとる。そして、彼女は必ず四葉のクローバーを探した。
それを乾燥させて栞にするとミリアは大事な人に渡す。
僕やマヤ、ロイ、両親や殿下にも・・・。
「これは・・・誰のかしら。きっと出会ったらわかるわよね」
一枚だけ渡す相手がないままの栞が机の中にしまわれる。
記憶にはなくても心の片隅にある人物のもの。
ミリアの優しさが愛おしい。
ずっとずっと、永遠に・・・。
そんな願いはも叶わなかった。
再発がわかってから頭の痛みが増し、身体にまで異変が出てくるようになると、一年立つ頃には歩くこともできなくなって寝たきりになる。痛みで苦しむミリア。
そんな彼女は僕の前では情緒不安定で起こったり、泣いたり、八つ当たりするかとはあっても、子供達の前ではずっと笑っていた。
そして、その半年後には当初は嫌がったが痛み止めを投与しないと痛みを我慢できないほどになった。
そのため徐々に意識が混濁していた。
子供たちが5歳になった時、ミリアは逝った。
最期はしっかりと僕らを見つめてくれた。
言葉は出なかったが、それでも言いたいことがわかる。
「愛してるわ」
彼女は笑っていた。
綺麗で、美しくて、最高の笑顔。
僕らは静かに見送った。
喪失感が半端なく、このまま彼女の後を追ってしまいたかった。
でも、子供たちが僕の手を強く握ってくる。
震える小さな温もりに気づかされた。
この子たちを護るのは僕しかいないのだとー。
「母様を見送ろう」
ミリアの死に泣きわめく二人をあやすことで手一杯になる。
ミリアが怒る顔が見えたきがした。
二人を幸せにしないと・・・泣いていられない。
必死になる。
父や母、ミリアの両親に助けながらの育児、そして父親としての姿をー。
「はい、どうぞ」
娘のメリッサが僕にクローバーの花冠を僕の頭に乗せてきた。
「父様、僕もできたよ」
息子のレイナードも同じく見せてきた。二人とも上手に作っている。
それに引き換えー。
「父様は?」
僕の持つボロボロの冠をみせると、二人は笑ってきた。
「父様、ヘタクソ」
「これだけは苦手なんだ。二人は母様に似て上手だな」
僕は頭の上の冠を取るとメリッサの頭に乗せた。
ミリアの姿が重なる。
「はじめて会った時の母様にそっくりだ」
「本当!?」
「へぇ~。メリッサ、良かったね」
「ねぇ、母様ってどんな感じだったの?」
僕は二人にミリアの話をした。
興味深く聞いてくる。
何度も何度でも話してあげよう。僕がどんなに愛していたのかをー。
そうして、日が傾いた頃、僕らは立ち上がる。
「さあ、帰ろう」
「・・・うん」
名残惜しそうな二人の手をとる。
墓跡には二つの花冠。そして僕のなりそこないの冠がある。
「ミリア、また・・・くるよ」
「母様・・・またね」
「くるね・・・」
僕らは帰る。
「三人とも愛してるわ」
そう聞こえた気がした。
振り返り、顔を見合わせる。
「聞こえたか?」
「「うん!」」
気のせいかもしれない。
でも・・・。
笑いが込み上げてきた。
「ミリアならありそうだな」
「ふ~ん。わたしも母様を愛してるわ」
「僕も愛してる」
「ミリア、君が好きだ。愛してる。もちろん、メリッサ、レイナード!二人も愛してるぞ」
抱きしめると、二人はわざと嬉しそうな悲鳴を上げる。
「愛してる。僕は幸せだよ。ミリア安心しろ。また、来るたびに幸せだというから」
ミリアが笑った気がした。
大丈夫だよ。ミリア。心配しないでくれ。
「さあ、帰ろう。今日の夕食はなんだろうな?」
「もう、父様ったら!」
「僕、肉料理がいいな」
「わたしも。でもきのこが入ってないのがいい!!」
「こ~ら、好き嫌いせずにちゃんと食べろ」
「「はあ~い」」
そんなことを笑いながら僕らは帰路につく。
優しい風が吹いた。
クローバーが揺れる。
緑の絨毯の中、いくつもの白い花が灯火のようにゆらゆらとー。
*本編は終了です。
次からサシャ視点、3編お送りします。
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