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四章~新天地へ~
風向きは?
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「やった…………」
電気ショックで気絶した女エルフは倒れ込み俺の腕の中に居る、俺はエルフを抱いたまま座り込んだ。
い、生きてるよな? ちゃんと加減したし、うん、息はある。怪我は…………してないな? 背中や腕を触って確認する。
うっわぁ、美人…………って、エルフって見た目が美しいのが多いんだっけ? う~ん、この世界に来て会う女性は美人が多いな。にしてもさっきは焦った、この人が出てきたのもそうだけど、さっきのフィオは確実にこの人を斬り捨てるつもりでいた様に思えた。仲間を斬った時も、小娘扱いで怒ってた時も能面の様な感情を感じない表情だったのに、さっきは鬼気迫る様な表情だった。
ちょっとはにかんだり、ムスッとしたり、年相応に見てもらえないのを怒って睨んだり、そういう表情は見たことがあったけどあれはそのどれとも違っていた、止めなかったら確実に斬っていた。
止めるのが間に合ってよかった。
「ワタル、そのエルフ貸して」
「貸して、って何するつ――!? お前怪我! 額から血が出てるぞ!」
額から流れた血が伝い左目は血で真っ赤になっている。
「このくらい平気、先にそのエルフの処理をする」
「処理するって……殺さないって言っただろ!」
「そのエルフは危険、空が爆発した。殺しておく方がいい」
そう言ってエルフを俺から引き剥がして、エルフの喉へ剣を当てようとする。
「駄目だ!!」
「っ!?」
フィオが俺の声にビクリとした。
あれ? なんか意外な反応、止まるとは思ってたけどこんな反応をするとは思わなかった。
「さっき言っただろ? 人質にするんだ、それで戦いを止めて話をして、俺たちがこの土地に居てもいいっていう承諾を得るんだ。ここはエルフと獣人しかいない大陸なんだろ? そんな土地でそこに住む人全部を敵に回す気か? それにさっきの爆発は俺と紅月も関係してる、この人のせいだけじゃない」
優夜が覚醒者になったけどあんな無茶苦茶する能力を使えば大虐殺だ。それに瑞原とリオには戦う力はない、能力で優っても身体能力はあちらが上なんだ、二人を守って戦い続ける事だって難しい。
紅月に確かめてはいないけど、俺と同じ様に紅月にも使い続けられる力に限度があるだろう、だとしたら優夜だって同様のはず、それに能力を封じる能力だってある、能力を使えない状態に追い込まれたら戦えるのはフィオだけになる。フィオだけで全員を守るのなんて無理だ。そうなったら詰み、だから話し合いでなんとかしないと駄目なんだ。
「でも……このエルフは危ない、それにこのエルフが炎を出してから爆発した!」
フィオは本能的に危険を察知して、それを俺たちから遠ざけようとしてくれているのは分かる、それで何度も救われてる、でもこればっかりは譲れない。
「危なくなくする為に話しをするんだ、殺してしまったらそれが出来なくなる」
「…………」
「フィオ、頼む」
「…………分かった」
渋々って感じだが殺さずにいてくれる様だ。
「はぁ~、よかった~」
緊張感が解けて一気に力が抜けてしまった。フィオにとって今までは危険なものは力ずくっで排除してきたんだろうし、聞き入れてくれるかはあまり自信がなかった。
「それで、どうするの?」
「その前にお前、本当に怪我大丈夫なのか?」
結構血が出てると思うんだが。
「平気、石が当たっただけ、大きな怪我じゃない」
って言われてもなぁ、どんな攻撃もひょいひょい躱してたやつが血を流してたらかなり心配だ。
「それより――」
「分かったわかった、とりあえずフィオはそのままその人を捕まえて剣構えてろ、でも絶対に斬るなよ? 煙が晴れたらまた弓で狙われるだろうから、狙ってる奴らにこいつを捕まえたのを分からせて攻撃を止めてから話をする」
指示を出してたのがこのエルフだからこいつが頭なんだろうけど、こいつに何かあった時に代わりをする奴か、こいつの補佐みたいなのが居るだろうからそいつとどうにか話を…………。
「ワタル、煙が晴れる」
いよいよか、うぅ~、上手くいくといいけど…………。
「怖いの?」
態度に出ていたんだろう、そんな事を聞かれた。
「怖いよ、全員の安全が掛かってるんだから」
「そう…………何かあってもワタルは私が守る」
ありがたいけど、かっこ悪いし情けないから遠慮したい、それに全員無事じゃないと意味がない。
煙が晴れた。うっ、やっぱりこっちに向かって弓構えてるし。
「攻撃をやめろ! お前たちのリーダーは捕まえた! こっちにこれ以上争う意思はない! 俺たちは人攫いをしに来た連中とは違うんだ! 敵対するつもりはないんだ! 話を聞いてくれ!」
うっわぁ、大丈夫なのか? あれ。このエルフが負ける事なんて考えていなかったのか、エルフや獣人たちが騒然としているし、困惑して顔を見合わせてる者も居る。マズったか? でも無抵抗で居たら捕まえてその後話を聞いてくれるって感じじゃなかったんだからこちらが捕えるしか停戦させる方法がなかったし…………いやいや、不安になるな! もう始めちゃったんだからやりきるしか全員の安全を確保する方法はないんだ。
にしても、誰か代表者が出て来てくれてもいいのに、ざわざわしてて誰も近付いて来ない。そんなに動揺する程このエルフの強さは信頼されてたのか? まぁ、今まで来た人間は打ち合いにすらならなかった、って言ってたから常勝だったんだろうし、問答無用で排除してきた『人間』が話を聞いてくれとか言ったら困惑もするか?
しばらくしてようやく背の高い金髪のダークエルフの男性が近付いてきた。
背ぇたっけぇ、俺と頭一つ分以上差がある気がする、それにやっぱり容姿も良いな。それにしても、この世界のエルフってダークエルフだけ? よく見りゃみんな褐色肌、ダークエルフってのは俺が勝手に思ってるだけだし、もしかしてこの世界ではこれが普通のエルフ?
「先ず確認させてくれ、そいつは、ナハトは生きているのか?」
当然の質問だよな、さてどうやって確認させよう? あっちだってこのナハトって人を圧倒してたフィオに近付くのは不安があるだろうし、かといってナハトさんを放して俺たちが離れたら回収されて即戦闘再開って事にも…………。
「えっと、どうやって確認します?」
相手に聴いちゃったよ! なんも思いつかんかった。
「とりあえずその娘に剣を下ろさせてくれ、話を聞いて欲しいんだろう? それとも人間は話をする時は相手に剣を突き付けて話をするのか?」
まぁ当たり前だよな、話を聞いてくれって言いながら剣握ってたらおかしい。
「フィオ、剣を下ろし――」
「ダメ」
「い、いや、それじゃあ話が進まな――」
「ダメ、確認したいならそっちが近付いて勝手にすればいい、解放したら捕まえた意味がない」
「それがそちらの考えか?」
「そ――」
「いやいやいやいや! 違う! 全然違う!」
何をそうって返事しようとしてんだこのちびっ子は!? せっかく戦いが止まったのに再開するだろうが!
「フィオ、捕まえたのは戦いを止めて話を聞いてもらう為だったんだ、もう戦いは止まってるし話を聞く前にちゃんと生きてるのか確認してもらうのも必要な事だから! 戦いを止めるって目的は達成してるんだから剣は下ろせ、な?」
「…………」
頼む、下ろしてくれ~、じゃないとまた雲行きが怪しくなる。
「どうしても?」
「どうしても!」
「…………はぁ~、ワタルは甘い」
うん、たぶんそうなんだろう、でもこっちに争いたい理由があるわけじゃないんだから争いになりそうな事を控えるのは普通だと思う。
すんごく不満そうに剣を下ろしてナハトさんを砂浜に寝かせてくれた。
「変な事をしようとしたら斬るから」
物騒な一言を付け加えたよ!?
「はぁ、確認をするだけだ。こちらもナハトが倒された事で混乱している、そんな状態でナハトを倒した者を相手に戦闘を続行するつもりはない」
よかった、長生きしてる分あっちが大人な対応をしてくれた。
「フィオ、俺たちは少し離れよう、あっちは丸腰で来てくれてるんだから」
「エルフは覚醒者と同じで能力を持ってる」
あ~、そうだった。でも相手は一人だし、少し離れるくらい…………。
「別にそのままで構わない、あれだけ攻撃された後で警戒するのも理解できる、それに話をしたいならそちらも何もしないはずだろう?」
そりゃそうだけど、あなただって警戒してるんじゃ? いいのか?
俺の心配なんかをよそに、普通に近付いて来て仲間の安否を確認している。
「ふぅ、怪我もないし気絶しているだけか…………まさかこいつが気絶させられる日が来るとはな…………どっちがやったんだ? やっぱり娘の方か?」
え? なんでそれも確認すんの? 確認してお礼参りとか?
「ん」
「お前がやったのか!?」
フィオのやつ指差しやがった…………そして驚き過ぎ、まぁ身体能力の劣る人間がやったって聞かされたら驚くか。
「本当にお前がやったのか? 娘の方じゃなくてか?」
「あ~、気絶させたのは俺ですけど、フィオの不意打ちが無かったら絶対に無理でしたよ?」
「状況はどうでもいい、気絶させたのがどちらなのかが問題なんだ。そうか、お前か…………」
黙っちゃったんですけど、もしかしてその人恋人だったりした? それで復讐とかされるのか!?
ビビッてエルフから後ずさる。
だってしょうがないじゃん! そのナハトって人どんどん突っ込んでくるし、気絶させて捕まえるくらいでしかあんたら止まりそうになかったじゃん!
「ふむ、確かに話をする必要が出来た様だ」
あれ? 話し合いに応じてくれんの? さっきの沈黙はなに?
「さっき人攫いの連中とは違うと言っていたが、あれはどういう意味だ? ここへ来る人間は人攫い目的以外で来た事はないぞ」
「その人攫いの奴らが所属してる国の連中に追われる身になったんで密航して別の大陸に行こうと思ったんですけど、俺たち異界者も混じってるから警備が厳しくて普通の船に乗れなかったんですよ」
「それで人攫いの船に、というわけか、確かにお前は瞳が黒いな。なら話というのはこの土地での安全についてか?」
ん? この大陸は人間は居ないんじゃなかったのか? なんで異界者の瞳が黒いと知ってる? もしかして異界者は普通に居るのか?
「はい、そうです。俺とフィオと、船に残ってるのが一緒に逃げ出してきた仲間でこの六人の身の安全を約束して欲しいんです。俺たちは他者を奴隷にしたいって考えはないですし、危害を加えられないならそもそも戦うつもりもなかったんです」
「その割には先ほどの能力は一切の加減がされてなかった様だが? まぁ、それを止めようとしていたのも見てはいたが」
「あ~、あれはさっき覚醒者になったばかりみたいで、そもそも力の加減なんて分かってなかったんだと思います。すみません」
「…………ふふふ、あっはははははははは」
謝ったのになんで笑われてんの? 俺、意味が分からん。
「いや、すまない、今まで来た人間とは敵対してきたし、たまに覚醒者も混じっていた事もあった。だから異界者であろうと人間は敵という認識だったんだが、それが素直に謝罪をしたものだから可笑しくてな! 話は分かった、だが俺が決められる事ではないから一度村に来て族長に会ってもらう」
「! はい! よろしくお願いします!」
おぉ! やった! いい方向に進んでるんじゃないか? これで族長に会ってこの土地に居てもいいって認めてもらえれば当面の間の安全は確保出来る。それに交流する事を拒まれなければ日本に帰る方法を探すのを手伝ってもらえるかもしれない、もしかしたらそういう能力を持ったエルフも居るかもしれない。
電気ショックで気絶した女エルフは倒れ込み俺の腕の中に居る、俺はエルフを抱いたまま座り込んだ。
い、生きてるよな? ちゃんと加減したし、うん、息はある。怪我は…………してないな? 背中や腕を触って確認する。
うっわぁ、美人…………って、エルフって見た目が美しいのが多いんだっけ? う~ん、この世界に来て会う女性は美人が多いな。にしてもさっきは焦った、この人が出てきたのもそうだけど、さっきのフィオは確実にこの人を斬り捨てるつもりでいた様に思えた。仲間を斬った時も、小娘扱いで怒ってた時も能面の様な感情を感じない表情だったのに、さっきは鬼気迫る様な表情だった。
ちょっとはにかんだり、ムスッとしたり、年相応に見てもらえないのを怒って睨んだり、そういう表情は見たことがあったけどあれはそのどれとも違っていた、止めなかったら確実に斬っていた。
止めるのが間に合ってよかった。
「ワタル、そのエルフ貸して」
「貸して、って何するつ――!? お前怪我! 額から血が出てるぞ!」
額から流れた血が伝い左目は血で真っ赤になっている。
「このくらい平気、先にそのエルフの処理をする」
「処理するって……殺さないって言っただろ!」
「そのエルフは危険、空が爆発した。殺しておく方がいい」
そう言ってエルフを俺から引き剥がして、エルフの喉へ剣を当てようとする。
「駄目だ!!」
「っ!?」
フィオが俺の声にビクリとした。
あれ? なんか意外な反応、止まるとは思ってたけどこんな反応をするとは思わなかった。
「さっき言っただろ? 人質にするんだ、それで戦いを止めて話をして、俺たちがこの土地に居てもいいっていう承諾を得るんだ。ここはエルフと獣人しかいない大陸なんだろ? そんな土地でそこに住む人全部を敵に回す気か? それにさっきの爆発は俺と紅月も関係してる、この人のせいだけじゃない」
優夜が覚醒者になったけどあんな無茶苦茶する能力を使えば大虐殺だ。それに瑞原とリオには戦う力はない、能力で優っても身体能力はあちらが上なんだ、二人を守って戦い続ける事だって難しい。
紅月に確かめてはいないけど、俺と同じ様に紅月にも使い続けられる力に限度があるだろう、だとしたら優夜だって同様のはず、それに能力を封じる能力だってある、能力を使えない状態に追い込まれたら戦えるのはフィオだけになる。フィオだけで全員を守るのなんて無理だ。そうなったら詰み、だから話し合いでなんとかしないと駄目なんだ。
「でも……このエルフは危ない、それにこのエルフが炎を出してから爆発した!」
フィオは本能的に危険を察知して、それを俺たちから遠ざけようとしてくれているのは分かる、それで何度も救われてる、でもこればっかりは譲れない。
「危なくなくする為に話しをするんだ、殺してしまったらそれが出来なくなる」
「…………」
「フィオ、頼む」
「…………分かった」
渋々って感じだが殺さずにいてくれる様だ。
「はぁ~、よかった~」
緊張感が解けて一気に力が抜けてしまった。フィオにとって今までは危険なものは力ずくっで排除してきたんだろうし、聞き入れてくれるかはあまり自信がなかった。
「それで、どうするの?」
「その前にお前、本当に怪我大丈夫なのか?」
結構血が出てると思うんだが。
「平気、石が当たっただけ、大きな怪我じゃない」
って言われてもなぁ、どんな攻撃もひょいひょい躱してたやつが血を流してたらかなり心配だ。
「それより――」
「分かったわかった、とりあえずフィオはそのままその人を捕まえて剣構えてろ、でも絶対に斬るなよ? 煙が晴れたらまた弓で狙われるだろうから、狙ってる奴らにこいつを捕まえたのを分からせて攻撃を止めてから話をする」
指示を出してたのがこのエルフだからこいつが頭なんだろうけど、こいつに何かあった時に代わりをする奴か、こいつの補佐みたいなのが居るだろうからそいつとどうにか話を…………。
「ワタル、煙が晴れる」
いよいよか、うぅ~、上手くいくといいけど…………。
「怖いの?」
態度に出ていたんだろう、そんな事を聞かれた。
「怖いよ、全員の安全が掛かってるんだから」
「そう…………何かあってもワタルは私が守る」
ありがたいけど、かっこ悪いし情けないから遠慮したい、それに全員無事じゃないと意味がない。
煙が晴れた。うっ、やっぱりこっちに向かって弓構えてるし。
「攻撃をやめろ! お前たちのリーダーは捕まえた! こっちにこれ以上争う意思はない! 俺たちは人攫いをしに来た連中とは違うんだ! 敵対するつもりはないんだ! 話を聞いてくれ!」
うっわぁ、大丈夫なのか? あれ。このエルフが負ける事なんて考えていなかったのか、エルフや獣人たちが騒然としているし、困惑して顔を見合わせてる者も居る。マズったか? でも無抵抗で居たら捕まえてその後話を聞いてくれるって感じじゃなかったんだからこちらが捕えるしか停戦させる方法がなかったし…………いやいや、不安になるな! もう始めちゃったんだからやりきるしか全員の安全を確保する方法はないんだ。
にしても、誰か代表者が出て来てくれてもいいのに、ざわざわしてて誰も近付いて来ない。そんなに動揺する程このエルフの強さは信頼されてたのか? まぁ、今まで来た人間は打ち合いにすらならなかった、って言ってたから常勝だったんだろうし、問答無用で排除してきた『人間』が話を聞いてくれとか言ったら困惑もするか?
しばらくしてようやく背の高い金髪のダークエルフの男性が近付いてきた。
背ぇたっけぇ、俺と頭一つ分以上差がある気がする、それにやっぱり容姿も良いな。それにしても、この世界のエルフってダークエルフだけ? よく見りゃみんな褐色肌、ダークエルフってのは俺が勝手に思ってるだけだし、もしかしてこの世界ではこれが普通のエルフ?
「先ず確認させてくれ、そいつは、ナハトは生きているのか?」
当然の質問だよな、さてどうやって確認させよう? あっちだってこのナハトって人を圧倒してたフィオに近付くのは不安があるだろうし、かといってナハトさんを放して俺たちが離れたら回収されて即戦闘再開って事にも…………。
「えっと、どうやって確認します?」
相手に聴いちゃったよ! なんも思いつかんかった。
「とりあえずその娘に剣を下ろさせてくれ、話を聞いて欲しいんだろう? それとも人間は話をする時は相手に剣を突き付けて話をするのか?」
まぁ当たり前だよな、話を聞いてくれって言いながら剣握ってたらおかしい。
「フィオ、剣を下ろし――」
「ダメ」
「い、いや、それじゃあ話が進まな――」
「ダメ、確認したいならそっちが近付いて勝手にすればいい、解放したら捕まえた意味がない」
「それがそちらの考えか?」
「そ――」
「いやいやいやいや! 違う! 全然違う!」
何をそうって返事しようとしてんだこのちびっ子は!? せっかく戦いが止まったのに再開するだろうが!
「フィオ、捕まえたのは戦いを止めて話を聞いてもらう為だったんだ、もう戦いは止まってるし話を聞く前にちゃんと生きてるのか確認してもらうのも必要な事だから! 戦いを止めるって目的は達成してるんだから剣は下ろせ、な?」
「…………」
頼む、下ろしてくれ~、じゃないとまた雲行きが怪しくなる。
「どうしても?」
「どうしても!」
「…………はぁ~、ワタルは甘い」
うん、たぶんそうなんだろう、でもこっちに争いたい理由があるわけじゃないんだから争いになりそうな事を控えるのは普通だと思う。
すんごく不満そうに剣を下ろしてナハトさんを砂浜に寝かせてくれた。
「変な事をしようとしたら斬るから」
物騒な一言を付け加えたよ!?
「はぁ、確認をするだけだ。こちらもナハトが倒された事で混乱している、そんな状態でナハトを倒した者を相手に戦闘を続行するつもりはない」
よかった、長生きしてる分あっちが大人な対応をしてくれた。
「フィオ、俺たちは少し離れよう、あっちは丸腰で来てくれてるんだから」
「エルフは覚醒者と同じで能力を持ってる」
あ~、そうだった。でも相手は一人だし、少し離れるくらい…………。
「別にそのままで構わない、あれだけ攻撃された後で警戒するのも理解できる、それに話をしたいならそちらも何もしないはずだろう?」
そりゃそうだけど、あなただって警戒してるんじゃ? いいのか?
俺の心配なんかをよそに、普通に近付いて来て仲間の安否を確認している。
「ふぅ、怪我もないし気絶しているだけか…………まさかこいつが気絶させられる日が来るとはな…………どっちがやったんだ? やっぱり娘の方か?」
え? なんでそれも確認すんの? 確認してお礼参りとか?
「ん」
「お前がやったのか!?」
フィオのやつ指差しやがった…………そして驚き過ぎ、まぁ身体能力の劣る人間がやったって聞かされたら驚くか。
「本当にお前がやったのか? 娘の方じゃなくてか?」
「あ~、気絶させたのは俺ですけど、フィオの不意打ちが無かったら絶対に無理でしたよ?」
「状況はどうでもいい、気絶させたのがどちらなのかが問題なんだ。そうか、お前か…………」
黙っちゃったんですけど、もしかしてその人恋人だったりした? それで復讐とかされるのか!?
ビビッてエルフから後ずさる。
だってしょうがないじゃん! そのナハトって人どんどん突っ込んでくるし、気絶させて捕まえるくらいでしかあんたら止まりそうになかったじゃん!
「ふむ、確かに話をする必要が出来た様だ」
あれ? 話し合いに応じてくれんの? さっきの沈黙はなに?
「さっき人攫いの連中とは違うと言っていたが、あれはどういう意味だ? ここへ来る人間は人攫い目的以外で来た事はないぞ」
「その人攫いの奴らが所属してる国の連中に追われる身になったんで密航して別の大陸に行こうと思ったんですけど、俺たち異界者も混じってるから警備が厳しくて普通の船に乗れなかったんですよ」
「それで人攫いの船に、というわけか、確かにお前は瞳が黒いな。なら話というのはこの土地での安全についてか?」
ん? この大陸は人間は居ないんじゃなかったのか? なんで異界者の瞳が黒いと知ってる? もしかして異界者は普通に居るのか?
「はい、そうです。俺とフィオと、船に残ってるのが一緒に逃げ出してきた仲間でこの六人の身の安全を約束して欲しいんです。俺たちは他者を奴隷にしたいって考えはないですし、危害を加えられないならそもそも戦うつもりもなかったんです」
「その割には先ほどの能力は一切の加減がされてなかった様だが? まぁ、それを止めようとしていたのも見てはいたが」
「あ~、あれはさっき覚醒者になったばかりみたいで、そもそも力の加減なんて分かってなかったんだと思います。すみません」
「…………ふふふ、あっはははははははは」
謝ったのになんで笑われてんの? 俺、意味が分からん。
「いや、すまない、今まで来た人間とは敵対してきたし、たまに覚醒者も混じっていた事もあった。だから異界者であろうと人間は敵という認識だったんだが、それが素直に謝罪をしたものだから可笑しくてな! 話は分かった、だが俺が決められる事ではないから一度村に来て族長に会ってもらう」
「! はい! よろしくお願いします!」
おぉ! やった! いい方向に進んでるんじゃないか? これで族長に会ってこの土地に居てもいいって認めてもらえれば当面の間の安全は確保出来る。それに交流する事を拒まれなければ日本に帰る方法を探すのを手伝ってもらえるかもしれない、もしかしたらそういう能力を持ったエルフも居るかもしれない。
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