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六章~目指す場所~
被害ゼロ?
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「んっん!」
警察署長が入ってきて、俺を一瞥して咳払い。いやそんなあからさまな咳払いされても…………。今の俺の状態が気に入らないんだろうけど、どうしようもない。
フィオが俺の膝の上に乗って、しがみ付いて離れようとしない。微妙にまだべそかいた状態で、瞳も濡れているから警察も強く出てくる事はせずに、前の時とは違って会議室の様な場所で、俺とフィオとティナの三人同時での事情聴取となった。
小さい女の子(十八だが)が泣いているという状態が及ぼす影響力は結構なもののようで、刑事たちの俺たちへの態度は前回の時より幾分か柔らかいものだった。
「それで、駅に現れた豚の様な頭の怪物はお姫様方の世界の生き物って事になるんでしょうか?」
「正確には違うわね。私たちの世界に昔の事故で現れた違う世界の生き物、って言うのが正しいわ。エルフや獣人、人間にも害を及ぼす物たちだから総称して魔物と言われていて、あれはその中でも生命力と性力が強くて他種族の女性を犯して繁殖するわ」
『…………』
あんな化け物が人間を使って繁殖するというショッキングな事実に刑事たちも黙り込む。だよねぇ、あんな見た目ってだけでもキツいのに、あれと人間の混血なんて考えたら…………おえぇぇ、気色悪い。
「あの、怪我をした人とか死人って出てませんよね?」
「ああ、その点は問題ない。死人は疎か怪我人も一人も出てはいない。あの惨状でよく死傷者が出なかったものだと皆感心している。だが――」
「だが?」
やっぱり何か問題があったか? オークが暴れてたしなぁ。壊れた施設の修繕費を請求されたりするんだろうか? 血で結構汚れもしてたし…………一体いくら位を要求されるんだ?
「人間は死んでないとはいえ、あれほどの惨状だ。あんな凄惨な状況このご時世でそうそう出くわすようなモノじゃない。あの場に居て、あれを目撃したかなりの数の被害者がPTSDに陥る可能性があるそうだ。規制をかけはしたが、生放送で全国にあの映像が流れてしまったのも大きな問題だ。あれを見て精神を病む人も出てくるだろう。危険な物だという話だが、人語を解する個体も居たのだろう? もっと穏便に済ませるわけにはいかなかったのかね?」
穏便に、ね…………無理だろ、どうやっても。凶器振り上げて向かって来たり、女性を組み敷いてレイプしようとしている連中ですよ? あの巨体なんだから取り押さえる事なんて不可能だし、あいつらと仲良くなんて出来るはずも無し、俺も殺すべきだと思ったし、魔物の事を知っているティナが殺した方が良いって判断したんだから、あの場であれ以上の選択肢はなかったはずだ。
「無理ね。この国の兵士は随分と暢気なのね、自国の民が化け物に犯され殺されそうになっている状況で穏便になんて、普通は民の命と安全を最優先するべきじゃないかしら? 少なくとも私ならそうするわ」
「それは我々とて同じです。市民を守るのが我々の務めですから、ですが余りにも一方的な状況だったと証言している方が多く居るんですよ? それ程の力の差があって、相手も人語を解するのなら話し合いで――」
「だからそれが暢気だと言っているのよ。いくら言葉が話せようが、あいつらはこちらを繁殖の為の道具か餌くらいにしか認識していないわ。それに、巨体じゃなくて私たちとそう大きさの変わらない物も居たでしょう? あれは他種族が犯されて生まれた物だから特殊な能力を持ってる個体も居るのよ。だから妙な事をされる前に仕留めてしまうに限るわ」
あれ? 混血魔物も異界者とヴァーンシアの混血と同じで能力の有無はランダムなのか? ……ああ、そうか。他種族を、って事ならエルフ以外の混血の場合は能力を持たないのも居るのか。族長に聞いた時は全部の個体が能力を持ってるみたいな口ぶりだったけど、能力の無い個体も居るなら俺でも対処出来るか? ん~、エルフ以外との混血の場合身体能力なんかはどうなるんだろう? 獣人はともかく、人間との混血の場合も強いのか?
「その能力とはどんなものがあるのですか?」
「知らないわ。何かされる前に仕留めてたもの。でもそうね、姿を消している奴が数匹居たわね」
「姿を消すというのは何かに隠れる等の比喩表現ではなくて本当に姿が消えるのですか?」
消えてたなぁ、何も無いところから血が噴き出したからマジでビビった。
「ええ、完全に見えなくなるわね。でも臭いや殺気は消せないみたいだから私やフィオなら処理出来るわ」
『…………』
姿が見えなくても相手を殺せると言っている相手に恐れてか、刑事たちが黙り込んでこちらを見ている。ティナはともかく、今のフィオの状態を見るととてもそんな事が出来る風には見えないんだろう。
「あ~、あと触れた相手の感覚を麻痺させるのも居ましたよ。あれをやられて殺されそうになったところをフィオが助けてくれたし……そういえば助けてくれてありがとうな」
膝に乗ってるフィオの頭を撫でるけど、フードを被って俯いて服を掴んでいるから表情は分からない。調子狂うなぁ、どうしたらいつもの調子に戻るのやら。これじゃあ本当に小さな子供だ…………ほら、こんな事思っても攻撃もして来なければ睨みもしてこない、重症だ。元気出してくれよぉ~、今度からもっと注意して危ない目に遭わない様にするから。
「感覚を麻痺させるというのはどういった感じのものなんだ?」
「どうって言われても…………手足の感覚、というか全身の感覚が鈍くなっていって力が入らなくなって動けなくなります」
「全身麻酔の様なものか」
全身麻酔か、確かにそんな感じかもしれない。でも、能力が使える場合その感覚まで狂わされるからこっちの方が厄介だけど。
「それでその……魔物、ですか? あれが現れた原因は分かりますか?」
「簡単ね。私たちが入り込んじゃった空間の裂け目に先に魔物のが吸い込まれてたから、それがこの世界に来ていても不思議は無いわね。凍らされて動きは封じられていたけれど、この世界暑いんだもの、そのせいで解凍されて活動できるようになったんでしょうね」
「その、空間の裂け目というのはお姫様が瞬間移動の際に使っておられるものですよね?」
「違うわ。私が作った物には世界を超える程の力は無いもの。私たちが通ってきたのは事故で偶然出来てしまったものよ」
事故…………確かに故意ではなかったけど、責任の所在は? と聞かれたら間違いなく俺と優夜たちにあると言える。それを分かっていて、意図的に事故と言ってくれているのか、本当に事故だと思っているのか…………どっちだろう?
「事故、という事はこれから先にも発生する可能性があると?」
「ん~、それは無いとは思うんだけど…………」
「けど?」
「同じ裂け目に飲まれた魔物ってさっき処分した物の十倍以上居たと思うから、別の世界に出たのも居るでしょうけど、この世界に来ている物もかなり居るんじゃないかしら?」
全部が全部こっちに来ているわけじゃない…………こっちに来てる量は少ないといいんだけど、これって責任を取る為に日本全国を討伐の為にうろうろしなきゃいけない感じになるんだろうか? …………ヴァーンシアに帰りたいのに、こっちでの用事が増えてしまった。その上数が分からないから終わりが分からない。ハイオークだけ片付けてその他は警察と自衛隊にお任せってわけにはいかないだろうか? 無責任っぽい…………一定期間出現しなくなったのを確認してからじゃないと駄目な気がする。
「…………出現場所などは特定できたりしませんか?」
「そうねぇ~、この国の範囲内じゃないかしら? 私たちがこの国に出たのだし、そこから離れ過ぎるという事は無いと思うわ」
「……魔物は凍結させられていたんですよね? それで死なないのですか? そんな事普通の生物では――」
「自分の世界の生き物ではないのに普通の生物と言えるのかしら? それにさっき言ったでしょう? オークは生命力も強いのよ、あとはオーガね。他にも飲まれた種類はいたけれど、小型な物は恐らくちゃんと死んでいるでしょうから問題ないとは思うけれど、オークとオーガは生きて活動していると考えて警戒した方がいいと思うわ」
デカくて厄介な物ばっかりが動き回ると…………めんどくせぇ、自分のせいだし帰って来れた事は嬉しいけど、めんどくせぇ。
「オーガというのは?」
「オークよりも巨体で強靭な肉体を持つ凶暴な奴よ。好んで人間の生肉を食べるから、気を付けた方が良いわよ?」
「好んで、ですか…………」
オーガも食人かよ。魔物って人間に害を為す物ってのは分かってるけど、わざわざ食わんでも、それも生肉……吐き気が…………料理されても困るけど。
「という事は、日本中に先ほどの様な物が現れて市民を害する可能性があると」
「ええ、そうなるわね。それと、この世界の兵士がどの程度強いのかは知らないけれど、さっきワタルを攻撃した武器でオークやオーガは殺せても、ハイオークには効かない可能性があるわ」
「なぁティナ、エルフ以外との混血の場合身体能力はどうなるんだ?」
「混血は総じて能力が高いわ。人間との混血でも能力が高いのはよく分からないけど、純潔のオークよりは強いし知性が付いている分厄介ね」
ヘッドショット決めれば充分イケると思うけど……特殊能力と身体能力の問題があるか、弾丸を避ける程となるとかなり危険な部類になるな……スタングレネードみたいな物で動きを止めてから銃撃とか? 市街地に入り込まれた場合簡単に銃とか使えるのか?
「すいません。ハイオークと言うのは?」
「オークと他の種族の混血の事よ。特殊な能力を持っているのはエルフとの混血だけだと思うけれど、どの混血でも見た目はあまり変わらないから判別は難しいと思うわ」
「……我々にはそれが倒せず、お姫様やそちらの少女ならそれらとも戦えると?」
「あなた達の中にさっき使った武器から飛ばした物を避けられるくらいの兵士が居るのならあなた達でも戦えるでしょうね」
「お二人は銃弾が見えているのですか?」
「ジュウダンっていうのはこの位の変な玉の事? それなら見えてるわ。見るだけならワタルも見えてるんじゃないかしら?」
「まぁ、一応…………」
『…………』
俺たちが銃弾を視認出来る事と、二人は銃弾を躱す事も出来るという事実に刑事たちが顔を引き攣らせている。俺は紋様の強化のおかげで見えてるだけだぞ? 超人二人と一緒にされても困る。
「如月君は普通の日本人だろう? 何故そんな事が? 目撃者の方々が君の動きも異世界人のお二人と同じ様に常軌を逸したものだったとの証言がありましたが、それも異世界に行った影響ですか?」
能力については見せたし話したけど、剣の紋様の力は話してないんだよなぁ。話したら取り上げられたりしないだろうか? 便利ってのもあるけど、あの村で貰った大事な物だから没収は勘弁願いたい。
「えっと……まぁ、そんな感じです」
所持の許可が一回下りたんだから没収は無いと思いたいけど、不安があったから結局詳しくは話さない事にした。
「そうですか…………魔物については分かりました。暫く待っていていただけますか?」
「この前みたいに長期間拘束するなら逃げるわよ」
「そうはならないと思いますので、お待ちください」
神妙な面持ちで警察署長が出て行った。これからどうなるんだろう? どうなるとしても、魔物の処理はやらないとだよな。魔物の件に巻き込まれて被害を受ける人が出ない様にしないと…………。
警察署長が入ってきて、俺を一瞥して咳払い。いやそんなあからさまな咳払いされても…………。今の俺の状態が気に入らないんだろうけど、どうしようもない。
フィオが俺の膝の上に乗って、しがみ付いて離れようとしない。微妙にまだべそかいた状態で、瞳も濡れているから警察も強く出てくる事はせずに、前の時とは違って会議室の様な場所で、俺とフィオとティナの三人同時での事情聴取となった。
小さい女の子(十八だが)が泣いているという状態が及ぼす影響力は結構なもののようで、刑事たちの俺たちへの態度は前回の時より幾分か柔らかいものだった。
「それで、駅に現れた豚の様な頭の怪物はお姫様方の世界の生き物って事になるんでしょうか?」
「正確には違うわね。私たちの世界に昔の事故で現れた違う世界の生き物、って言うのが正しいわ。エルフや獣人、人間にも害を及ぼす物たちだから総称して魔物と言われていて、あれはその中でも生命力と性力が強くて他種族の女性を犯して繁殖するわ」
『…………』
あんな化け物が人間を使って繁殖するというショッキングな事実に刑事たちも黙り込む。だよねぇ、あんな見た目ってだけでもキツいのに、あれと人間の混血なんて考えたら…………おえぇぇ、気色悪い。
「あの、怪我をした人とか死人って出てませんよね?」
「ああ、その点は問題ない。死人は疎か怪我人も一人も出てはいない。あの惨状でよく死傷者が出なかったものだと皆感心している。だが――」
「だが?」
やっぱり何か問題があったか? オークが暴れてたしなぁ。壊れた施設の修繕費を請求されたりするんだろうか? 血で結構汚れもしてたし…………一体いくら位を要求されるんだ?
「人間は死んでないとはいえ、あれほどの惨状だ。あんな凄惨な状況このご時世でそうそう出くわすようなモノじゃない。あの場に居て、あれを目撃したかなりの数の被害者がPTSDに陥る可能性があるそうだ。規制をかけはしたが、生放送で全国にあの映像が流れてしまったのも大きな問題だ。あれを見て精神を病む人も出てくるだろう。危険な物だという話だが、人語を解する個体も居たのだろう? もっと穏便に済ませるわけにはいかなかったのかね?」
穏便に、ね…………無理だろ、どうやっても。凶器振り上げて向かって来たり、女性を組み敷いてレイプしようとしている連中ですよ? あの巨体なんだから取り押さえる事なんて不可能だし、あいつらと仲良くなんて出来るはずも無し、俺も殺すべきだと思ったし、魔物の事を知っているティナが殺した方が良いって判断したんだから、あの場であれ以上の選択肢はなかったはずだ。
「無理ね。この国の兵士は随分と暢気なのね、自国の民が化け物に犯され殺されそうになっている状況で穏便になんて、普通は民の命と安全を最優先するべきじゃないかしら? 少なくとも私ならそうするわ」
「それは我々とて同じです。市民を守るのが我々の務めですから、ですが余りにも一方的な状況だったと証言している方が多く居るんですよ? それ程の力の差があって、相手も人語を解するのなら話し合いで――」
「だからそれが暢気だと言っているのよ。いくら言葉が話せようが、あいつらはこちらを繁殖の為の道具か餌くらいにしか認識していないわ。それに、巨体じゃなくて私たちとそう大きさの変わらない物も居たでしょう? あれは他種族が犯されて生まれた物だから特殊な能力を持ってる個体も居るのよ。だから妙な事をされる前に仕留めてしまうに限るわ」
あれ? 混血魔物も異界者とヴァーンシアの混血と同じで能力の有無はランダムなのか? ……ああ、そうか。他種族を、って事ならエルフ以外の混血の場合は能力を持たないのも居るのか。族長に聞いた時は全部の個体が能力を持ってるみたいな口ぶりだったけど、能力の無い個体も居るなら俺でも対処出来るか? ん~、エルフ以外との混血の場合身体能力なんかはどうなるんだろう? 獣人はともかく、人間との混血の場合も強いのか?
「その能力とはどんなものがあるのですか?」
「知らないわ。何かされる前に仕留めてたもの。でもそうね、姿を消している奴が数匹居たわね」
「姿を消すというのは何かに隠れる等の比喩表現ではなくて本当に姿が消えるのですか?」
消えてたなぁ、何も無いところから血が噴き出したからマジでビビった。
「ええ、完全に見えなくなるわね。でも臭いや殺気は消せないみたいだから私やフィオなら処理出来るわ」
『…………』
姿が見えなくても相手を殺せると言っている相手に恐れてか、刑事たちが黙り込んでこちらを見ている。ティナはともかく、今のフィオの状態を見るととてもそんな事が出来る風には見えないんだろう。
「あ~、あと触れた相手の感覚を麻痺させるのも居ましたよ。あれをやられて殺されそうになったところをフィオが助けてくれたし……そういえば助けてくれてありがとうな」
膝に乗ってるフィオの頭を撫でるけど、フードを被って俯いて服を掴んでいるから表情は分からない。調子狂うなぁ、どうしたらいつもの調子に戻るのやら。これじゃあ本当に小さな子供だ…………ほら、こんな事思っても攻撃もして来なければ睨みもしてこない、重症だ。元気出してくれよぉ~、今度からもっと注意して危ない目に遭わない様にするから。
「感覚を麻痺させるというのはどういった感じのものなんだ?」
「どうって言われても…………手足の感覚、というか全身の感覚が鈍くなっていって力が入らなくなって動けなくなります」
「全身麻酔の様なものか」
全身麻酔か、確かにそんな感じかもしれない。でも、能力が使える場合その感覚まで狂わされるからこっちの方が厄介だけど。
「それでその……魔物、ですか? あれが現れた原因は分かりますか?」
「簡単ね。私たちが入り込んじゃった空間の裂け目に先に魔物のが吸い込まれてたから、それがこの世界に来ていても不思議は無いわね。凍らされて動きは封じられていたけれど、この世界暑いんだもの、そのせいで解凍されて活動できるようになったんでしょうね」
「その、空間の裂け目というのはお姫様が瞬間移動の際に使っておられるものですよね?」
「違うわ。私が作った物には世界を超える程の力は無いもの。私たちが通ってきたのは事故で偶然出来てしまったものよ」
事故…………確かに故意ではなかったけど、責任の所在は? と聞かれたら間違いなく俺と優夜たちにあると言える。それを分かっていて、意図的に事故と言ってくれているのか、本当に事故だと思っているのか…………どっちだろう?
「事故、という事はこれから先にも発生する可能性があると?」
「ん~、それは無いとは思うんだけど…………」
「けど?」
「同じ裂け目に飲まれた魔物ってさっき処分した物の十倍以上居たと思うから、別の世界に出たのも居るでしょうけど、この世界に来ている物もかなり居るんじゃないかしら?」
全部が全部こっちに来ているわけじゃない…………こっちに来てる量は少ないといいんだけど、これって責任を取る為に日本全国を討伐の為にうろうろしなきゃいけない感じになるんだろうか? …………ヴァーンシアに帰りたいのに、こっちでの用事が増えてしまった。その上数が分からないから終わりが分からない。ハイオークだけ片付けてその他は警察と自衛隊にお任せってわけにはいかないだろうか? 無責任っぽい…………一定期間出現しなくなったのを確認してからじゃないと駄目な気がする。
「…………出現場所などは特定できたりしませんか?」
「そうねぇ~、この国の範囲内じゃないかしら? 私たちがこの国に出たのだし、そこから離れ過ぎるという事は無いと思うわ」
「……魔物は凍結させられていたんですよね? それで死なないのですか? そんな事普通の生物では――」
「自分の世界の生き物ではないのに普通の生物と言えるのかしら? それにさっき言ったでしょう? オークは生命力も強いのよ、あとはオーガね。他にも飲まれた種類はいたけれど、小型な物は恐らくちゃんと死んでいるでしょうから問題ないとは思うけれど、オークとオーガは生きて活動していると考えて警戒した方がいいと思うわ」
デカくて厄介な物ばっかりが動き回ると…………めんどくせぇ、自分のせいだし帰って来れた事は嬉しいけど、めんどくせぇ。
「オーガというのは?」
「オークよりも巨体で強靭な肉体を持つ凶暴な奴よ。好んで人間の生肉を食べるから、気を付けた方が良いわよ?」
「好んで、ですか…………」
オーガも食人かよ。魔物って人間に害を為す物ってのは分かってるけど、わざわざ食わんでも、それも生肉……吐き気が…………料理されても困るけど。
「という事は、日本中に先ほどの様な物が現れて市民を害する可能性があると」
「ええ、そうなるわね。それと、この世界の兵士がどの程度強いのかは知らないけれど、さっきワタルを攻撃した武器でオークやオーガは殺せても、ハイオークには効かない可能性があるわ」
「なぁティナ、エルフ以外との混血の場合身体能力はどうなるんだ?」
「混血は総じて能力が高いわ。人間との混血でも能力が高いのはよく分からないけど、純潔のオークよりは強いし知性が付いている分厄介ね」
ヘッドショット決めれば充分イケると思うけど……特殊能力と身体能力の問題があるか、弾丸を避ける程となるとかなり危険な部類になるな……スタングレネードみたいな物で動きを止めてから銃撃とか? 市街地に入り込まれた場合簡単に銃とか使えるのか?
「すいません。ハイオークと言うのは?」
「オークと他の種族の混血の事よ。特殊な能力を持っているのはエルフとの混血だけだと思うけれど、どの混血でも見た目はあまり変わらないから判別は難しいと思うわ」
「……我々にはそれが倒せず、お姫様やそちらの少女ならそれらとも戦えると?」
「あなた達の中にさっき使った武器から飛ばした物を避けられるくらいの兵士が居るのならあなた達でも戦えるでしょうね」
「お二人は銃弾が見えているのですか?」
「ジュウダンっていうのはこの位の変な玉の事? それなら見えてるわ。見るだけならワタルも見えてるんじゃないかしら?」
「まぁ、一応…………」
『…………』
俺たちが銃弾を視認出来る事と、二人は銃弾を躱す事も出来るという事実に刑事たちが顔を引き攣らせている。俺は紋様の強化のおかげで見えてるだけだぞ? 超人二人と一緒にされても困る。
「如月君は普通の日本人だろう? 何故そんな事が? 目撃者の方々が君の動きも異世界人のお二人と同じ様に常軌を逸したものだったとの証言がありましたが、それも異世界に行った影響ですか?」
能力については見せたし話したけど、剣の紋様の力は話してないんだよなぁ。話したら取り上げられたりしないだろうか? 便利ってのもあるけど、あの村で貰った大事な物だから没収は勘弁願いたい。
「えっと……まぁ、そんな感じです」
所持の許可が一回下りたんだから没収は無いと思いたいけど、不安があったから結局詳しくは話さない事にした。
「そうですか…………魔物については分かりました。暫く待っていていただけますか?」
「この前みたいに長期間拘束するなら逃げるわよ」
「そうはならないと思いますので、お待ちください」
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