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番外編~世界を見よう! 家族旅行編~
ドラっ娘献血
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結論から言おう――。
クーニャが拗ねました。
「主は儂の事などどうでもよいのだ。だから他の神龍を――」
「いやいやいやいや、そんな事ないって。別にルナとどうこうなろうって言ってるんじゃないだろ」
ティナとナハトは少し機嫌が悪かったものの、リエルもシエルも賛成派で概ねみんな受け入れ態勢だったがクーニャだけは猛反対している。
リュン子たちは鱗集めに、リオたちはこの島の物だけで出来そうな料理をジョシュアさんに教えている。
その間にクーニャを説得して駄目なら諦めてくださいねということだ。
「だいたい何なのだ。世界一のドラゴンブリーダーなどと……儂以外にも手を出すつもり満々ではないか」
「いやあれノリだし、それに俺のクーニャが世界一ならあながち間違ってなくない?」
「そ、それはまぁ……儂は主の神龍として最高の存在であろうとは思っておるが……も、もしやそういう意識を引き出すのが主のブリーダーとしての力か!?」
うん違います。
「クーニャおいで」
手招きして膝に座らせて撫で回す。ちっこいから軽いしおでんとか出汁系の物を好むせいかなんか美味しそうな匂いがする。クーニャで出汁取ったら美味いんじゃなかろうか。
ドラゴン出汁! ……いや駄目だ。きっと変態のロリコンが買い求めるに違いない。ドラゴン出汁は封印で。
「主、アホな事を考えておるだろう? 機嫌を取りたいならしっかり撫でぬか。まぁそんな事で懐柔されたりはしないのだがなっ」
されてるされてる。懐柔されてる、顔がほにゃほにゃになりかかっている!
「なぁクーニャ、俺に会う前ってどうだった? 楽しかったか? 生きている事に満足出来てたか?」
「ふん、覚えておらぬ。儂の人生は主に出会ってから始まったのだ。儂は主に出会う為に生まれてきた、家族になったあの日そう確信したのだ。だから――思い出したくもない。楽しくなかった、美味しくなかった、あたたかくなかった、寂しかった。そんなものには戻りたくない」
「何言ってんだ。誰かそんな状態に戻すか。クーニャが嫌だって言っても絶対に一人ぼっちになんかさせないぞ? こんな事うちの家族全員が思ってる。でもさ、ルナにはそんな相手が居ないんだよ。世界に弾かれ仲間に弾かれ食べる物もままならない一人ぼっちだ」
「うむぅ……泣き落としとは卑怯な……何故そうも主は不幸な娘に弱いのだ」
「理不尽も不条理も納得がいかないからな。抗いたいのに抗えないなら手を差し伸べたい、抗う事すら諦めてるなら大丈夫だと言ってやりたい」
知ってしまったならもう無視は出来ない。見ないふりをしたらどうなるのか身を持って経験している。失敗を繰り返すのは愚か者のする事だ。
俺は馬鹿かもしれないが愚かではないはずだ。
「やれやれ、理不尽も不条理も世の中には溢れておる。世界とはそういうものだ。それを納得がいかぬと一々構うわけにはいくまい?」
「それでも、見える範囲くらい――気付いた事くらいどうにかしたい。傲慢かもしれないけどな、それでもさ、出来る事をしないで後で後悔するのは嫌なんだ」
「困った主だ……し、しかしまぁ、そんな主を気に入ってしまった儂が悪いのだし? まぁその……なんだ…………儂が一番なら、よいぞ?」
膝の上で真っ赤になりながらもじもじしないでください。色々振りきれそうで困る。
「わ、ぁ……ぅ!」
姿を消していたルナはリオ達と一緒に居たらしく煮魚を持って飛び跳ねている。
「わぁぅ」
「もしかして俺を呼んでるのか?」
「わぁぅ……るぁ、まうまう!」
どうやら自分と俺の名前を覚えたらしい。
俺の回りを駆け回って今度はクーニャを押し退ける勢いで膝に座って煮魚の入った器を押し付けてくる。
たぶん一緒に食べたいんだろう。数時間前は睨み威嚇して獣とまで言われてた娘が今は見た目相応の無邪気な笑顔をしている。
ホントに神様はどうにも出来なかったのかと疑いたくなるが、ずっとここでルナ達を見てきたジョシュアさんが嘘を言ってるとも思えないし……俺も血か…………。
「よしルナ、じゃあ今度は箸の使い方を伝授しよう」
「はひ?」
「は、し。これが箸だ――って食い物じゃないぞ。これはこう使う、ほらあ~ん」
「まふまふ」
ほぐした魚の身を口に運んでやるともうっ……口元がだらしなく緩んでいる。それを見て和んでいたらすぐ傍で不機嫌になってる神龍様が一人。
「クーニャも食う?」
「ふ、ふん! そやつの食いかけなど要らぬわ」
「えー? 同じものを食べると仲良くなれるかもだぞ?」
「まうまう!」
俺に食わせようと箸を使って奮闘しているが流石に難しいようで身がぼそぼそに崩れて掴むどころじゃなくなってきて本人もそれが分かるのかイライラし始めている。
ついには煮魚に箸を繰り返し刺して不満をぶつけている。出来ないと癇癪を起こす、まさに子供だ。
でもこの苛立ちも前に進もうと――学ぼうとしてる証だよな……短い時間でどんどん成長してる。
なんかもう他の娘たちにも献血して回りたい気分なんだが!
「主、馬鹿な事を考えておるだろう?」
「ドラっ娘たちに献血しようかなと――」
「やめておけ、成長が必ずしも良いものとは限らない。現にルナは名前を与えられた事でをまともな感情を得て寄り添う喜びを知ってしまった。いずれ自分がどれだけ不幸だったかも知るかもしれない、自覚し寄り添う者を失うならその絶望も大きいだろう。無知が必ずしも不幸とは限らない、彼女は自分の立場を当然のものとして生きてきた」
煮魚を摘まみながら眉間に皺を寄せたジョシュアさんに反射的に反論した。
「どういう意味ですか? これだけ食料のある島に居るのに痩せ細っていたのをほっとけばよかったとでも言うんですか? それに俺は助けるならちゃんと最後までやる。途中で投げ出したりしないっ!」
「ルナを連れていくという話なら不可能だ。私たちが生きるのを許されたのはこの島だけだ。箱庭には私たちの生きる場所はない」
「そんなの今は居ない神様が勝手に決めたことだろ、俺は連れていく」
「連れていけば死ぬとしてもか?」
「それはどういう意味だ。お主らに何かしらの制限があるということか?」
「そうだ。もし万が一何かしらの事故で彼女らが外に出てしまった場合、他の命を脅かさないよう絶命する仕掛けがしてある。だから決して外には出られない、私を含めてな」
出られない……? リルの絵に喜んでふれあいをこんなに嬉しそうにしているのに置き去りにする? こんな仲間外れの土地に?
「わぁぅ?」
「大丈夫、大丈夫だから――何とかする、辛くないように、寂しくないように――笑ってられるようにするからっ」
俺の変化を感じ取ったのか怯えたように丸まって身体を押し付けてくる。流石のクーニャも怒る気が失せてしまったようだ。
「あー、ルナだけズルい~。父さん、あたしもまうまうー!」
「私も私も、父様まうまうー!」
うちの娘に新語感染中! 飛び付き、ルナも一緒に抱き締めるものだから混乱して目を回している。
それでも一度もまうと威嚇はしない。それどころか穏やかな表情で――。
「リオ! クロ! シロ! 飯を作ってくれ、大量に! 血肉になりそうなの重視で!」
「え? え? ワタル様?」
「何か思い付かれたのですね、ご指示のままに。ほらクロエ様行きましょう? ワタル様がご所望です。しっかり働いてその分可愛がってもらいましょう?」
本音駄々漏れでこっちを見るものだから頭を撫でるジェスチャーをしたら何か勘違いしたらしく顔を真っ赤にして行ってしまった。
「っ! な、なるほど! そうですね、リオさんにもシロナにも負けませんよ」
「ワタル……危ない事はしないですよね?」
「ああ、勿論、俺は世界一のドラゴンブリーダーだぞ? 愛龍クーニャと共に全捕獲してくるだけだって」
「全ほかっ!?」
「あ、愛龍などと……て、照れるではないかっ! ま、まぁ事実では仕方ないのだが、事実では仕方ないのだがっ!」
二回言うほど嬉しかったか……リオの方はまたこの人は何を始める気ですかと頭を抱えてしまっているが、これはやるべき事だ。
ルナが生きられる場所を整える! 連れていけないなら他の娘をルナと同じ状態にして躾る、これしかない。
「なるほどなのじゃ、それでさっきから旦那様は食べてばかりなのじゃな。治癒が出来ぬ以上大怪我をするわけにいかぬから血を採って飲ませるのじゃな?」
ミシャ大正解、後でもふもふまうまうしてやろう。
噛まれてやるくらいはいいんだが、他の娘の場合は肉を食い千切られそうだからな。流石に腕をくれてやるわけにはいかん。
という訳で血を抜きつつ食って血を増やす。
「うっぷ……もう食えん」
「ワタルが作れって言ったんですよ。ルナちゃんを助けたいんですよね? はいほらもう一口」
「そ、そもそもレバーは苦手なんだが――」
「好き嫌いはいけません! 娘たちの前ですよ、情けない父親でよろしいんですか?」
シロは意外に亭主の手綱を握るタイプかもしれない。ここまで言われては食うしかない、しかし苦手どうこう以前に満腹による拒絶反応が……そもそも食ったからってすぐに血になる訳でもなし。
自分で言ったが勢いで言うもんじゃなかった。
「もう無理……漫画じゃあるまいし一人で何人分も食えんって……みんなも食べてくれ」
「旦那様から今日採った血はコップ三杯なのじゃな。それで飲ませる相手はどのくらい居るのじゃ? 一日二杯のペースだとどのくらい滞在することになるのか」
「三十と六だ。本当に彼女らを変えるつもりか?」
「ワタルはやると言ったらやるわ。不幸な女の子を放っておけない女誑しなんだから」
賛成してたくせにリエルが厳しい……まぁリエルの場合大抵が照れ隠しなんだが――全員頷かないでくれませんか。
「ものを教える事を考えると滞在期間は一月前後か……? こちら側は問題ないがエルスィやステラは困惑するかもしれないな」
ナハトはヴァーンシア側の騒ぎが気になるみたいだがあっちにはステラが――他の神龍が動いているしカマーズから各国に情報が行ってる事を考えると問題はないだろう。
「まぁそこまで心配しなくても厄介なものはルナが処理しちゃったのだし大丈夫でしょ、人里の守りはステラが獣避けを設置したのだし」
如月家行方不明は騒ぎになりそうだが、うちの人間全員消えてるなら皆一緒だろうから大丈夫だと天明が落ち着かせてくれるだろ……たぶん。
「ふむ……妾少し出掛けてくるのじゃ」
「母しゃまどこに行くの? ルーも行くのじゃ」
「さっき鱗を探し回っておった時に失血時に良い木の実と薬草を見たから少し集めるのじゃ」
植物を操るだけかと思ってたらしっかりとした知識もあるのか。鍛冶を出来て薬学も……うちの嫁って多芸だな……悔しくない、特技がなくても悔しくない!
「あの、航君……この血どうやって飲ませるんですか?」
「…………よし、料理にぶっかけて持っていこう」
「何も考えていなかったのですね」
やめてレヴィ、その完全に呆れ返ってる目は傷付く。レヴィ背が高いから見下ろす感じでものっそい見下されてる気分になる。
「わぁぅ?」
「待ってろよルナ、友達作れるようにしてやるからな。先ずは躾からだ」
なんのこっちゃな顔をしてるがルナだって仲良く出来るなら同族の方がいいだろう。三十六人も居れば寂しさとは無縁になる、変えてやる、絶対変えてやる。
「まうまう!」
「ん? これはお前の友達候補にあげるんだよ。クーニャ一緒に来てくれ、暴れだしたら俺の世界一の神龍の格上パワーで大人しくさせてくれ」
「おぉ! そうだな、それは主の神龍である儂にしか出来ぬよなっ! 任せておけ主よ。儂、超働く!」
クーニャってこんなに乗せやすかったのか、可愛いけどちょろい娘で少し心配になるな。
短い滞在期間でのドラっ娘躾作戦がスタートする。
クーニャが拗ねました。
「主は儂の事などどうでもよいのだ。だから他の神龍を――」
「いやいやいやいや、そんな事ないって。別にルナとどうこうなろうって言ってるんじゃないだろ」
ティナとナハトは少し機嫌が悪かったものの、リエルもシエルも賛成派で概ねみんな受け入れ態勢だったがクーニャだけは猛反対している。
リュン子たちは鱗集めに、リオたちはこの島の物だけで出来そうな料理をジョシュアさんに教えている。
その間にクーニャを説得して駄目なら諦めてくださいねということだ。
「だいたい何なのだ。世界一のドラゴンブリーダーなどと……儂以外にも手を出すつもり満々ではないか」
「いやあれノリだし、それに俺のクーニャが世界一ならあながち間違ってなくない?」
「そ、それはまぁ……儂は主の神龍として最高の存在であろうとは思っておるが……も、もしやそういう意識を引き出すのが主のブリーダーとしての力か!?」
うん違います。
「クーニャおいで」
手招きして膝に座らせて撫で回す。ちっこいから軽いしおでんとか出汁系の物を好むせいかなんか美味しそうな匂いがする。クーニャで出汁取ったら美味いんじゃなかろうか。
ドラゴン出汁! ……いや駄目だ。きっと変態のロリコンが買い求めるに違いない。ドラゴン出汁は封印で。
「主、アホな事を考えておるだろう? 機嫌を取りたいならしっかり撫でぬか。まぁそんな事で懐柔されたりはしないのだがなっ」
されてるされてる。懐柔されてる、顔がほにゃほにゃになりかかっている!
「なぁクーニャ、俺に会う前ってどうだった? 楽しかったか? 生きている事に満足出来てたか?」
「ふん、覚えておらぬ。儂の人生は主に出会ってから始まったのだ。儂は主に出会う為に生まれてきた、家族になったあの日そう確信したのだ。だから――思い出したくもない。楽しくなかった、美味しくなかった、あたたかくなかった、寂しかった。そんなものには戻りたくない」
「何言ってんだ。誰かそんな状態に戻すか。クーニャが嫌だって言っても絶対に一人ぼっちになんかさせないぞ? こんな事うちの家族全員が思ってる。でもさ、ルナにはそんな相手が居ないんだよ。世界に弾かれ仲間に弾かれ食べる物もままならない一人ぼっちだ」
「うむぅ……泣き落としとは卑怯な……何故そうも主は不幸な娘に弱いのだ」
「理不尽も不条理も納得がいかないからな。抗いたいのに抗えないなら手を差し伸べたい、抗う事すら諦めてるなら大丈夫だと言ってやりたい」
知ってしまったならもう無視は出来ない。見ないふりをしたらどうなるのか身を持って経験している。失敗を繰り返すのは愚か者のする事だ。
俺は馬鹿かもしれないが愚かではないはずだ。
「やれやれ、理不尽も不条理も世の中には溢れておる。世界とはそういうものだ。それを納得がいかぬと一々構うわけにはいくまい?」
「それでも、見える範囲くらい――気付いた事くらいどうにかしたい。傲慢かもしれないけどな、それでもさ、出来る事をしないで後で後悔するのは嫌なんだ」
「困った主だ……し、しかしまぁ、そんな主を気に入ってしまった儂が悪いのだし? まぁその……なんだ…………儂が一番なら、よいぞ?」
膝の上で真っ赤になりながらもじもじしないでください。色々振りきれそうで困る。
「わ、ぁ……ぅ!」
姿を消していたルナはリオ達と一緒に居たらしく煮魚を持って飛び跳ねている。
「わぁぅ」
「もしかして俺を呼んでるのか?」
「わぁぅ……るぁ、まうまう!」
どうやら自分と俺の名前を覚えたらしい。
俺の回りを駆け回って今度はクーニャを押し退ける勢いで膝に座って煮魚の入った器を押し付けてくる。
たぶん一緒に食べたいんだろう。数時間前は睨み威嚇して獣とまで言われてた娘が今は見た目相応の無邪気な笑顔をしている。
ホントに神様はどうにも出来なかったのかと疑いたくなるが、ずっとここでルナ達を見てきたジョシュアさんが嘘を言ってるとも思えないし……俺も血か…………。
「よしルナ、じゃあ今度は箸の使い方を伝授しよう」
「はひ?」
「は、し。これが箸だ――って食い物じゃないぞ。これはこう使う、ほらあ~ん」
「まふまふ」
ほぐした魚の身を口に運んでやるともうっ……口元がだらしなく緩んでいる。それを見て和んでいたらすぐ傍で不機嫌になってる神龍様が一人。
「クーニャも食う?」
「ふ、ふん! そやつの食いかけなど要らぬわ」
「えー? 同じものを食べると仲良くなれるかもだぞ?」
「まうまう!」
俺に食わせようと箸を使って奮闘しているが流石に難しいようで身がぼそぼそに崩れて掴むどころじゃなくなってきて本人もそれが分かるのかイライラし始めている。
ついには煮魚に箸を繰り返し刺して不満をぶつけている。出来ないと癇癪を起こす、まさに子供だ。
でもこの苛立ちも前に進もうと――学ぼうとしてる証だよな……短い時間でどんどん成長してる。
なんかもう他の娘たちにも献血して回りたい気分なんだが!
「主、馬鹿な事を考えておるだろう?」
「ドラっ娘たちに献血しようかなと――」
「やめておけ、成長が必ずしも良いものとは限らない。現にルナは名前を与えられた事でをまともな感情を得て寄り添う喜びを知ってしまった。いずれ自分がどれだけ不幸だったかも知るかもしれない、自覚し寄り添う者を失うならその絶望も大きいだろう。無知が必ずしも不幸とは限らない、彼女は自分の立場を当然のものとして生きてきた」
煮魚を摘まみながら眉間に皺を寄せたジョシュアさんに反射的に反論した。
「どういう意味ですか? これだけ食料のある島に居るのに痩せ細っていたのをほっとけばよかったとでも言うんですか? それに俺は助けるならちゃんと最後までやる。途中で投げ出したりしないっ!」
「ルナを連れていくという話なら不可能だ。私たちが生きるのを許されたのはこの島だけだ。箱庭には私たちの生きる場所はない」
「そんなの今は居ない神様が勝手に決めたことだろ、俺は連れていく」
「連れていけば死ぬとしてもか?」
「それはどういう意味だ。お主らに何かしらの制限があるということか?」
「そうだ。もし万が一何かしらの事故で彼女らが外に出てしまった場合、他の命を脅かさないよう絶命する仕掛けがしてある。だから決して外には出られない、私を含めてな」
出られない……? リルの絵に喜んでふれあいをこんなに嬉しそうにしているのに置き去りにする? こんな仲間外れの土地に?
「わぁぅ?」
「大丈夫、大丈夫だから――何とかする、辛くないように、寂しくないように――笑ってられるようにするからっ」
俺の変化を感じ取ったのか怯えたように丸まって身体を押し付けてくる。流石のクーニャも怒る気が失せてしまったようだ。
「あー、ルナだけズルい~。父さん、あたしもまうまうー!」
「私も私も、父様まうまうー!」
うちの娘に新語感染中! 飛び付き、ルナも一緒に抱き締めるものだから混乱して目を回している。
それでも一度もまうと威嚇はしない。それどころか穏やかな表情で――。
「リオ! クロ! シロ! 飯を作ってくれ、大量に! 血肉になりそうなの重視で!」
「え? え? ワタル様?」
「何か思い付かれたのですね、ご指示のままに。ほらクロエ様行きましょう? ワタル様がご所望です。しっかり働いてその分可愛がってもらいましょう?」
本音駄々漏れでこっちを見るものだから頭を撫でるジェスチャーをしたら何か勘違いしたらしく顔を真っ赤にして行ってしまった。
「っ! な、なるほど! そうですね、リオさんにもシロナにも負けませんよ」
「ワタル……危ない事はしないですよね?」
「ああ、勿論、俺は世界一のドラゴンブリーダーだぞ? 愛龍クーニャと共に全捕獲してくるだけだって」
「全ほかっ!?」
「あ、愛龍などと……て、照れるではないかっ! ま、まぁ事実では仕方ないのだが、事実では仕方ないのだがっ!」
二回言うほど嬉しかったか……リオの方はまたこの人は何を始める気ですかと頭を抱えてしまっているが、これはやるべき事だ。
ルナが生きられる場所を整える! 連れていけないなら他の娘をルナと同じ状態にして躾る、これしかない。
「なるほどなのじゃ、それでさっきから旦那様は食べてばかりなのじゃな。治癒が出来ぬ以上大怪我をするわけにいかぬから血を採って飲ませるのじゃな?」
ミシャ大正解、後でもふもふまうまうしてやろう。
噛まれてやるくらいはいいんだが、他の娘の場合は肉を食い千切られそうだからな。流石に腕をくれてやるわけにはいかん。
という訳で血を抜きつつ食って血を増やす。
「うっぷ……もう食えん」
「ワタルが作れって言ったんですよ。ルナちゃんを助けたいんですよね? はいほらもう一口」
「そ、そもそもレバーは苦手なんだが――」
「好き嫌いはいけません! 娘たちの前ですよ、情けない父親でよろしいんですか?」
シロは意外に亭主の手綱を握るタイプかもしれない。ここまで言われては食うしかない、しかし苦手どうこう以前に満腹による拒絶反応が……そもそも食ったからってすぐに血になる訳でもなし。
自分で言ったが勢いで言うもんじゃなかった。
「もう無理……漫画じゃあるまいし一人で何人分も食えんって……みんなも食べてくれ」
「旦那様から今日採った血はコップ三杯なのじゃな。それで飲ませる相手はどのくらい居るのじゃ? 一日二杯のペースだとどのくらい滞在することになるのか」
「三十と六だ。本当に彼女らを変えるつもりか?」
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賛成してたくせにリエルが厳しい……まぁリエルの場合大抵が照れ隠しなんだが――全員頷かないでくれませんか。
「ものを教える事を考えると滞在期間は一月前後か……? こちら側は問題ないがエルスィやステラは困惑するかもしれないな」
ナハトはヴァーンシア側の騒ぎが気になるみたいだがあっちにはステラが――他の神龍が動いているしカマーズから各国に情報が行ってる事を考えると問題はないだろう。
「まぁそこまで心配しなくても厄介なものはルナが処理しちゃったのだし大丈夫でしょ、人里の守りはステラが獣避けを設置したのだし」
如月家行方不明は騒ぎになりそうだが、うちの人間全員消えてるなら皆一緒だろうから大丈夫だと天明が落ち着かせてくれるだろ……たぶん。
「ふむ……妾少し出掛けてくるのじゃ」
「母しゃまどこに行くの? ルーも行くのじゃ」
「さっき鱗を探し回っておった時に失血時に良い木の実と薬草を見たから少し集めるのじゃ」
植物を操るだけかと思ってたらしっかりとした知識もあるのか。鍛冶を出来て薬学も……うちの嫁って多芸だな……悔しくない、特技がなくても悔しくない!
「あの、航君……この血どうやって飲ませるんですか?」
「…………よし、料理にぶっかけて持っていこう」
「何も考えていなかったのですね」
やめてレヴィ、その完全に呆れ返ってる目は傷付く。レヴィ背が高いから見下ろす感じでものっそい見下されてる気分になる。
「わぁぅ?」
「待ってろよルナ、友達作れるようにしてやるからな。先ずは躾からだ」
なんのこっちゃな顔をしてるがルナだって仲良く出来るなら同族の方がいいだろう。三十六人も居れば寂しさとは無縁になる、変えてやる、絶対変えてやる。
「まうまう!」
「ん? これはお前の友達候補にあげるんだよ。クーニャ一緒に来てくれ、暴れだしたら俺の世界一の神龍の格上パワーで大人しくさせてくれ」
「おぉ! そうだな、それは主の神龍である儂にしか出来ぬよなっ! 任せておけ主よ。儂、超働く!」
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