異世界で吸血鬼の王の力を手に入れた

海木海

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第二章

第三話 エレーナとアリーナ

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 少女はエレーナと名乗った。
 長い銀髪と青い瞳の女の子だ。服装は三角帽子とフリルの多い可愛らしい黒を基調としたものだった。
 そう魔法使いみたいな服が第一印象だった。
 魔法が普通の世界で魔法使いの格好をする人間なんか見たことがない俺としては少しだけ心躍った。
「どうですか? 我が宿に来ませんか?」
「まず、おいくらか知りたいのだけども」
 俺が聞くとエレーナはふふんと鼻息を鳴らし。
「なんと、驚きの銀貨2枚です」
「だってさ」
「怪しい」
 リーリアが真っ先に言った。
 確かにそうだ。
 銀貨3枚であんな宿だった。ならば銀貨2枚はさらに酷いことになるだろう。宿代は宿の価値の高さに比例するものだ。安い宿代で綺麗で豪華な宿など空き部屋があるわけがない。
「大丈夫。綺麗だから」
「本当に?」
「見てから判断してください」
 そんなエレーナに着いていって俺たちは驚愕した。
 その宿は小さな道の中、所謂裏道と言われるような大通りからかけ離れた小さな道の建物と建物の間にひっそりと建っていた。
 普通に探すのでは絶対に見つけることはできないだろう。そんな建物。
 外見はレンガ造りのもの。宿という看板もない。
 重光な扉を開けた先は、輝かしいものだった。
 シャンデリア。真紅のジュウタン。様々な絵画が立ち並ぶ、宿のカウンター。
「すごい」
 俺たち一同は声がそろった。
「ふふん」
 エレーナが得意げな表情をする。
「これで銀貨2枚? 見つからないからとかそんなんで片付けて良いレベルじゃない」
「そうでしょう。そうでしょう」
 リーリアの言葉にさらに鼻が高くなり。
 さあ奥の方へどうぞと腕を広げようとした時。
「エレーナ?」
 ふいにエレーナを呼ぶ声が聞こえた。
 スンと透き通るような綺麗な声。
 その人物は建物の奥からゆっくりと歩いてきた。
 一言で言うと、絶世独立の美人だった。

 長い銀髪や、服装などはエレーナと似た魔法使いらしい姿だが。ただ、その健気さ。儚さがエレーナと違いにじみ出ている。それに加えて大人びた容姿。俺はそんな女性に心奪われてしまいそうだった。
「あ、こちら、姉のアリーナです」
 エレーナがそう彼女を紹介した。
 それと同時に俺たちに気づいたアリーナさんが俺たちに向けて頭を下げる。
 俺は速足でアリーナさんとの距離を詰め寄り。
 アリーナさんの手を取った。
「アリーナさん。もしお暇でしたら、今日一緒に街の散策でも」
 本日二度目のナンパ。
 驚きの表情のアリーナさんとエレーナ。飽きれた様子のリーリア。そして怒りの表情が見えるティーファ。
 今度はティーファが俺の方へ詰め寄った。
「また。また! 本日二度目です。イツキさん! どうして私というものがありながら」
「いや、だって。こんな美人を目の前にしたら」
「だから何ですか!?」
「確かにそうだけども」
 思わずアリーナさんの手を離してしまう。
「何となく、イツキの好みが分かってきた気がする」
 遠くでリーリアがそんなことを呟いた。
 エレーナが驚いた表情のまま、俺とアリーナさんを交互に見る。
「イツキさん、でしたっけ? そんな人だったのですか? 確かに女の子を二人連れているから危ないかもとかも思いましたが。まさか彼女さんがいながら、妹の前で姉をナンパするなんて」
「違うよ。そういう人じゃない」
「いいえ、イツキさんはそういう人です! さっきも違う女性を口説こうとして失敗していましたから」
 ティーファがさらに声を荒げ始めて。
 そんな時、アリーナさんがふと笑い出した。
「イツキさん、ですよね。街の散策のお誘いですが、お受けします」
 その言葉に俺たち一同はさらに驚いた。
「ですが、まず。すみません。我が妹が宿としてここを紹介したのでしょうが。この宿はもう閉じているのです」
 そして手を奥へ向けて。
「とりあえず、奥で話しましょうか?」
 アリーナさんが提案した。

 奥の部屋は応接間みたいな部屋だった。
 ソファが二つ向かい合い、その間に低いテーブルが置かれている。様々な絵画と壺が飾られている。
 そこで俺たち三人と二人は向かい合って座る。
「何故、宿の経営を止めたのか話しましょうか」
 アリーナさんは俺たちの前にお茶に似た飲み物が入ったコップを置き、話し始める。
「私はこの宿に執着がないからです」
「執着がない」
「私たちの格好を見たら分かると思いますが、私の家系は魔法を生業としていました」
「魔法を?」
「魔法の研究を毎日のようにしていたのです」
 アリーナは魔法の研究について少しだけ教えてくれる。
 魔法が存在するからこそ、そういった人たちがこの世界では必要らしい。その研究とは魔法とはどういったものか、どのような原理で動いているのかなど、魔法そのものの発展とは少し違う。いや、間接的に繋がっているのかもしれない。
「私は今も、魔法の研究を行っています」
「だから執着がない、と?」
「そういうことです」
 アリーナさんは頷いた。
 そんなアリーナさんに対してティーファが食いつく。
「それよりも。アリーナさん。どうしてイツキさんのお誘いを受けたのですか? 私の夫を取らないでください」
「夫?」
「夫じゃないです」
「そうだと思いました」
 アリーナさんは笑う。
「そしてどうしてか、ですね。それは私が彼に興味を持ったからに他なりません」
「興味?」
 そして、はっきりとこう答えた。

「彼が吸血鬼だからです」
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