21 / 21
第二章
第三話 エレーナとアリーナ
しおりを挟む
少女はエレーナと名乗った。
長い銀髪と青い瞳の女の子だ。服装は三角帽子とフリルの多い可愛らしい黒を基調としたものだった。
そう魔法使いみたいな服が第一印象だった。
魔法が普通の世界で魔法使いの格好をする人間なんか見たことがない俺としては少しだけ心躍った。
「どうですか? 我が宿に来ませんか?」
「まず、おいくらか知りたいのだけども」
俺が聞くとエレーナはふふんと鼻息を鳴らし。
「なんと、驚きの銀貨2枚です」
「だってさ」
「怪しい」
リーリアが真っ先に言った。
確かにそうだ。
銀貨3枚であんな宿だった。ならば銀貨2枚はさらに酷いことになるだろう。宿代は宿の価値の高さに比例するものだ。安い宿代で綺麗で豪華な宿など空き部屋があるわけがない。
「大丈夫。綺麗だから」
「本当に?」
「見てから判断してください」
そんなエレーナに着いていって俺たちは驚愕した。
その宿は小さな道の中、所謂裏道と言われるような大通りからかけ離れた小さな道の建物と建物の間にひっそりと建っていた。
普通に探すのでは絶対に見つけることはできないだろう。そんな建物。
外見はレンガ造りのもの。宿という看板もない。
重光な扉を開けた先は、輝かしいものだった。
シャンデリア。真紅のジュウタン。様々な絵画が立ち並ぶ、宿のカウンター。
「すごい」
俺たち一同は声がそろった。
「ふふん」
エレーナが得意げな表情をする。
「これで銀貨2枚? 見つからないからとかそんなんで片付けて良いレベルじゃない」
「そうでしょう。そうでしょう」
リーリアの言葉にさらに鼻が高くなり。
さあ奥の方へどうぞと腕を広げようとした時。
「エレーナ?」
ふいにエレーナを呼ぶ声が聞こえた。
スンと透き通るような綺麗な声。
その人物は建物の奥からゆっくりと歩いてきた。
一言で言うと、絶世独立の美人だった。
長い銀髪や、服装などはエレーナと似た魔法使いらしい姿だが。ただ、その健気さ。儚さがエレーナと違いにじみ出ている。それに加えて大人びた容姿。俺はそんな女性に心奪われてしまいそうだった。
「あ、こちら、姉のアリーナです」
エレーナがそう彼女を紹介した。
それと同時に俺たちに気づいたアリーナさんが俺たちに向けて頭を下げる。
俺は速足でアリーナさんとの距離を詰め寄り。
アリーナさんの手を取った。
「アリーナさん。もしお暇でしたら、今日一緒に街の散策でも」
本日二度目のナンパ。
驚きの表情のアリーナさんとエレーナ。飽きれた様子のリーリア。そして怒りの表情が見えるティーファ。
今度はティーファが俺の方へ詰め寄った。
「また。また! 本日二度目です。イツキさん! どうして私というものがありながら」
「いや、だって。こんな美人を目の前にしたら」
「だから何ですか!?」
「確かにそうだけども」
思わずアリーナさんの手を離してしまう。
「何となく、イツキの好みが分かってきた気がする」
遠くでリーリアがそんなことを呟いた。
エレーナが驚いた表情のまま、俺とアリーナさんを交互に見る。
「イツキさん、でしたっけ? そんな人だったのですか? 確かに女の子を二人連れているから危ないかもとかも思いましたが。まさか彼女さんがいながら、妹の前で姉をナンパするなんて」
「違うよ。そういう人じゃない」
「いいえ、イツキさんはそういう人です! さっきも違う女性を口説こうとして失敗していましたから」
ティーファがさらに声を荒げ始めて。
そんな時、アリーナさんがふと笑い出した。
「イツキさん、ですよね。街の散策のお誘いですが、お受けします」
その言葉に俺たち一同はさらに驚いた。
「ですが、まず。すみません。我が妹が宿としてここを紹介したのでしょうが。この宿はもう閉じているのです」
そして手を奥へ向けて。
「とりあえず、奥で話しましょうか?」
アリーナさんが提案した。
奥の部屋は応接間みたいな部屋だった。
ソファが二つ向かい合い、その間に低いテーブルが置かれている。様々な絵画と壺が飾られている。
そこで俺たち三人と二人は向かい合って座る。
「何故、宿の経営を止めたのか話しましょうか」
アリーナさんは俺たちの前にお茶に似た飲み物が入ったコップを置き、話し始める。
「私はこの宿に執着がないからです」
「執着がない」
「私たちの格好を見たら分かると思いますが、私の家系は魔法を生業としていました」
「魔法を?」
「魔法の研究を毎日のようにしていたのです」
アリーナは魔法の研究について少しだけ教えてくれる。
魔法が存在するからこそ、そういった人たちがこの世界では必要らしい。その研究とは魔法とはどういったものか、どのような原理で動いているのかなど、魔法そのものの発展とは少し違う。いや、間接的に繋がっているのかもしれない。
「私は今も、魔法の研究を行っています」
「だから執着がない、と?」
「そういうことです」
アリーナさんは頷いた。
そんなアリーナさんに対してティーファが食いつく。
「それよりも。アリーナさん。どうしてイツキさんのお誘いを受けたのですか? 私の夫を取らないでください」
「夫?」
「夫じゃないです」
「そうだと思いました」
アリーナさんは笑う。
「そしてどうしてか、ですね。それは私が彼に興味を持ったからに他なりません」
「興味?」
そして、はっきりとこう答えた。
「彼が吸血鬼だからです」
長い銀髪と青い瞳の女の子だ。服装は三角帽子とフリルの多い可愛らしい黒を基調としたものだった。
そう魔法使いみたいな服が第一印象だった。
魔法が普通の世界で魔法使いの格好をする人間なんか見たことがない俺としては少しだけ心躍った。
「どうですか? 我が宿に来ませんか?」
「まず、おいくらか知りたいのだけども」
俺が聞くとエレーナはふふんと鼻息を鳴らし。
「なんと、驚きの銀貨2枚です」
「だってさ」
「怪しい」
リーリアが真っ先に言った。
確かにそうだ。
銀貨3枚であんな宿だった。ならば銀貨2枚はさらに酷いことになるだろう。宿代は宿の価値の高さに比例するものだ。安い宿代で綺麗で豪華な宿など空き部屋があるわけがない。
「大丈夫。綺麗だから」
「本当に?」
「見てから判断してください」
そんなエレーナに着いていって俺たちは驚愕した。
その宿は小さな道の中、所謂裏道と言われるような大通りからかけ離れた小さな道の建物と建物の間にひっそりと建っていた。
普通に探すのでは絶対に見つけることはできないだろう。そんな建物。
外見はレンガ造りのもの。宿という看板もない。
重光な扉を開けた先は、輝かしいものだった。
シャンデリア。真紅のジュウタン。様々な絵画が立ち並ぶ、宿のカウンター。
「すごい」
俺たち一同は声がそろった。
「ふふん」
エレーナが得意げな表情をする。
「これで銀貨2枚? 見つからないからとかそんなんで片付けて良いレベルじゃない」
「そうでしょう。そうでしょう」
リーリアの言葉にさらに鼻が高くなり。
さあ奥の方へどうぞと腕を広げようとした時。
「エレーナ?」
ふいにエレーナを呼ぶ声が聞こえた。
スンと透き通るような綺麗な声。
その人物は建物の奥からゆっくりと歩いてきた。
一言で言うと、絶世独立の美人だった。
長い銀髪や、服装などはエレーナと似た魔法使いらしい姿だが。ただ、その健気さ。儚さがエレーナと違いにじみ出ている。それに加えて大人びた容姿。俺はそんな女性に心奪われてしまいそうだった。
「あ、こちら、姉のアリーナです」
エレーナがそう彼女を紹介した。
それと同時に俺たちに気づいたアリーナさんが俺たちに向けて頭を下げる。
俺は速足でアリーナさんとの距離を詰め寄り。
アリーナさんの手を取った。
「アリーナさん。もしお暇でしたら、今日一緒に街の散策でも」
本日二度目のナンパ。
驚きの表情のアリーナさんとエレーナ。飽きれた様子のリーリア。そして怒りの表情が見えるティーファ。
今度はティーファが俺の方へ詰め寄った。
「また。また! 本日二度目です。イツキさん! どうして私というものがありながら」
「いや、だって。こんな美人を目の前にしたら」
「だから何ですか!?」
「確かにそうだけども」
思わずアリーナさんの手を離してしまう。
「何となく、イツキの好みが分かってきた気がする」
遠くでリーリアがそんなことを呟いた。
エレーナが驚いた表情のまま、俺とアリーナさんを交互に見る。
「イツキさん、でしたっけ? そんな人だったのですか? 確かに女の子を二人連れているから危ないかもとかも思いましたが。まさか彼女さんがいながら、妹の前で姉をナンパするなんて」
「違うよ。そういう人じゃない」
「いいえ、イツキさんはそういう人です! さっきも違う女性を口説こうとして失敗していましたから」
ティーファがさらに声を荒げ始めて。
そんな時、アリーナさんがふと笑い出した。
「イツキさん、ですよね。街の散策のお誘いですが、お受けします」
その言葉に俺たち一同はさらに驚いた。
「ですが、まず。すみません。我が妹が宿としてここを紹介したのでしょうが。この宿はもう閉じているのです」
そして手を奥へ向けて。
「とりあえず、奥で話しましょうか?」
アリーナさんが提案した。
奥の部屋は応接間みたいな部屋だった。
ソファが二つ向かい合い、その間に低いテーブルが置かれている。様々な絵画と壺が飾られている。
そこで俺たち三人と二人は向かい合って座る。
「何故、宿の経営を止めたのか話しましょうか」
アリーナさんは俺たちの前にお茶に似た飲み物が入ったコップを置き、話し始める。
「私はこの宿に執着がないからです」
「執着がない」
「私たちの格好を見たら分かると思いますが、私の家系は魔法を生業としていました」
「魔法を?」
「魔法の研究を毎日のようにしていたのです」
アリーナは魔法の研究について少しだけ教えてくれる。
魔法が存在するからこそ、そういった人たちがこの世界では必要らしい。その研究とは魔法とはどういったものか、どのような原理で動いているのかなど、魔法そのものの発展とは少し違う。いや、間接的に繋がっているのかもしれない。
「私は今も、魔法の研究を行っています」
「だから執着がない、と?」
「そういうことです」
アリーナさんは頷いた。
そんなアリーナさんに対してティーファが食いつく。
「それよりも。アリーナさん。どうしてイツキさんのお誘いを受けたのですか? 私の夫を取らないでください」
「夫?」
「夫じゃないです」
「そうだと思いました」
アリーナさんは笑う。
「そしてどうしてか、ですね。それは私が彼に興味を持ったからに他なりません」
「興味?」
そして、はっきりとこう答えた。
「彼が吸血鬼だからです」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。
しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。
再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。
妻を一途に想い続ける夫と、
その想いを一ミリも知らない妻。
――攻防戦の幕が、いま上がる。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる