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制裁 3
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兄の仕置きが終わり、弟は全ての戒めを解かれ、うつ伏せのまま寝台に寝かされた。
腕を重ねて顔を伏せ、声を出さずに肩を振るわせている弟の顔を少し上げさせ、涙の止まらぬ顔を、それでも日陰は拭い、消炎の軟膏を頬に塗った。
弟は首を振ったが、日陰がそれを許さなかった。
それから、日陰は冷たいハーブ水で濡らした更紗を弟の尻に乗せた。
そして寝台の端に腰を掛け、弟の短い髪を梳きながら撫でていた兄の手を取り上げ、消炎のハーブ水を染ませた手巾を握らせた。兄は無言で首を振ったが、やはり日陰は許さず、兄の手を開いてそれを握らせた。
兄は少し身体をずらして座り直し、利き腕とは反対の手で再び弟の紙を梳きながら、そっとーー唇に言葉を乗せた。
「リシェール」
弟の身体がびくっと大きく跳ねた。
「兄がそう呼べる者は存在しない。その名は王籍と共に取り上げられ、王より死を賜わり、役目を終えた。最早その名がこの世で成せることは何もない」
兄は、無情な事実を、弟に諭す。
「リシェという名を下げ渡された奴隷は、王に全てを捧げ、その身体をもって王を慰め、精を請い、その身に受け入れる、ただそれだけを許された性奴隷ーー」
ーー性奴隷としてのみ存在を許された。それをその身と心に刻み込む。
「この箱庭の中だけなら、人知れず……僅かにでも王弟としての生を与えることが可能であったのかもしれない。だが……兄はそれを許さない」
兄は妖艶に微笑んで宣告した。
「お前は兄の、性愛の相手……はっきり言おうか? 最初から婬欲の対象だよ。リシェ、お前は。ーーだから性奴隷に堕とした。兄が望めば、いつでも、どこででも、どんなに卑猥な格好であっても、兄が望んだ通りに足を開く性奴隷に」
「ーーこの身が既に奴隷に堕とされていることは、理解しています」
弟が少しずつ……身を起こして言った。
だが、兄はそれを否定した。
「いいや。解っていない」
「そんな、ことは……」
弟は、首を振った。
「ない、と言いたいか。だが、解っていないよ、リシェ。ーーお前が自由にできるものなど、ひとつもーー欠片も残されていないことに気づいていない」
「自由……に」
「そう。……リシェのものはーー何ひとつ」
ふっ……と、そこで兄は得も云われぬ笑みを見せ、弟と視線を絡ませて、言った。
「名を奪い、籍を奪い、命を奪い……犯した罪に至るまで、この兄が、全てを奪った。お前に残されたものなど……お前が自由にできるものなど、ひと欠片も残っていないよ。兄のリシェ」
「……僕の、僕の罪……は、僕の…………」
「ーーこの、兄のものだよ。リシェ」
弟はこみ上げて来るものを振り切るように首を振る。
「違……」
「辛いか、リシェ」
兄は、弟の言葉を遮って告げる。
「それが罰だよ、リシェ」
「…………」
言葉を失くした弟に、兄は重て言う。
「辛くても、何もできない。それがお前の罰だ。全てを奪った兄に、足を開いて仕える以外のことを、リシェ、お前には許さない」
兄は弟に再び聞いた。
「苦しいか? リシェ」
弟は頷き、ひと筋涙が頬を伝った。
冷たく笑んで、兄は命じる。
「もっと苦しむと良い」
長い沈黙が辺りを支配した後、弟は寝台をゆっくりと下り、兄の足元にペタりと座り、兄を見上げた。
「僕のこの身は……僕のものじゃないのですね」
「ーーそうだ」
「命も」
「兄のものだよ、リシェ」
「兄さまの……」
「ーーこの兄の所有物」
「苦しい、です。兄さま……」
「苦しみを抱きながら、兄に仕えなさい、リシェ」
「ーー…………はい、兄さま。僕は兄さまの所有物……兄さまに従います」
弟は兄の足先に口づけ、そう誓約した。
腕を重ねて顔を伏せ、声を出さずに肩を振るわせている弟の顔を少し上げさせ、涙の止まらぬ顔を、それでも日陰は拭い、消炎の軟膏を頬に塗った。
弟は首を振ったが、日陰がそれを許さなかった。
それから、日陰は冷たいハーブ水で濡らした更紗を弟の尻に乗せた。
そして寝台の端に腰を掛け、弟の短い髪を梳きながら撫でていた兄の手を取り上げ、消炎のハーブ水を染ませた手巾を握らせた。兄は無言で首を振ったが、やはり日陰は許さず、兄の手を開いてそれを握らせた。
兄は少し身体をずらして座り直し、利き腕とは反対の手で再び弟の紙を梳きながら、そっとーー唇に言葉を乗せた。
「リシェール」
弟の身体がびくっと大きく跳ねた。
「兄がそう呼べる者は存在しない。その名は王籍と共に取り上げられ、王より死を賜わり、役目を終えた。最早その名がこの世で成せることは何もない」
兄は、無情な事実を、弟に諭す。
「リシェという名を下げ渡された奴隷は、王に全てを捧げ、その身体をもって王を慰め、精を請い、その身に受け入れる、ただそれだけを許された性奴隷ーー」
ーー性奴隷としてのみ存在を許された。それをその身と心に刻み込む。
「この箱庭の中だけなら、人知れず……僅かにでも王弟としての生を与えることが可能であったのかもしれない。だが……兄はそれを許さない」
兄は妖艶に微笑んで宣告した。
「お前は兄の、性愛の相手……はっきり言おうか? 最初から婬欲の対象だよ。リシェ、お前は。ーーだから性奴隷に堕とした。兄が望めば、いつでも、どこででも、どんなに卑猥な格好であっても、兄が望んだ通りに足を開く性奴隷に」
「ーーこの身が既に奴隷に堕とされていることは、理解しています」
弟が少しずつ……身を起こして言った。
だが、兄はそれを否定した。
「いいや。解っていない」
「そんな、ことは……」
弟は、首を振った。
「ない、と言いたいか。だが、解っていないよ、リシェ。ーーお前が自由にできるものなど、ひとつもーー欠片も残されていないことに気づいていない」
「自由……に」
「そう。……リシェのものはーー何ひとつ」
ふっ……と、そこで兄は得も云われぬ笑みを見せ、弟と視線を絡ませて、言った。
「名を奪い、籍を奪い、命を奪い……犯した罪に至るまで、この兄が、全てを奪った。お前に残されたものなど……お前が自由にできるものなど、ひと欠片も残っていないよ。兄のリシェ」
「……僕の、僕の罪……は、僕の…………」
「ーーこの、兄のものだよ。リシェ」
弟はこみ上げて来るものを振り切るように首を振る。
「違……」
「辛いか、リシェ」
兄は、弟の言葉を遮って告げる。
「それが罰だよ、リシェ」
「…………」
言葉を失くした弟に、兄は重て言う。
「辛くても、何もできない。それがお前の罰だ。全てを奪った兄に、足を開いて仕える以外のことを、リシェ、お前には許さない」
兄は弟に再び聞いた。
「苦しいか? リシェ」
弟は頷き、ひと筋涙が頬を伝った。
冷たく笑んで、兄は命じる。
「もっと苦しむと良い」
長い沈黙が辺りを支配した後、弟は寝台をゆっくりと下り、兄の足元にペタりと座り、兄を見上げた。
「僕のこの身は……僕のものじゃないのですね」
「ーーそうだ」
「命も」
「兄のものだよ、リシェ」
「兄さまの……」
「ーーこの兄の所有物」
「苦しい、です。兄さま……」
「苦しみを抱きながら、兄に仕えなさい、リシェ」
「ーー…………はい、兄さま。僕は兄さまの所有物……兄さまに従います」
弟は兄の足先に口づけ、そう誓約した。
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