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粛正 6 ー断罪ー # R18
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# R18 は保険です。処刑に関して、エグいと言えばエグい……でしょうか。ご注意ください。
§
「それで? 言った通り水だけ与え、1週間絶食させたか」
鼻先でせせら笑いながら、王は問いただした。
「は……、お命じの通りに」
震える侍従書記が応えた。
「陛下……宜しいか」
供回りの侍従武官が重々しく、王に発言の許可を求める。
「何だ?」
王は、半ば、侍従武官からの問の内容を予想しつつ、進言を許した。
「そこまで……なさる必要があったのですか。娘御の首まで候の目の前に据え置くなど。本人の首を切り、城外に晒すだけでは足りませなんだか」
王は、予想通りの問い掛けに声を立てて笑った。
「足りぬ」
「陛下! 恐怖で臣を縛り、如何とするおつもりか!」
「どうもせぬよ」
それで終わり、とばかりに、王はにべもなく応えた。
「陛下!!」
ーーどうもならぬ。そう、王冷笑する。
「既に我れは、ヴァールら叛徒の首を切り、城外に晒したな。そして、首はどこぞへ打ち捨てた」
そこで一旦口をつぐむと、王は、“だが”、と徐に続けた。
「一滴の染みにさえ、ならなかったろう? そなたらには」
面白そうに笑う王には、武官を震え上がらせる凄みがあった。
「そ……っ、そん、な…………」
くすくす笑って王は更に続ける。
「足りぬのさ、そなたらには」
王は侍従書記を振り返り、新たに命令を下した。
「絶食させたのが誠ならば良い。後は、直腸を洗浄させ……」
王の眼が妖しく光る。
「ーーやり殺せ」
侍従書記にも、武官にも、王の言ったことが理解できなかった。
「…………は?」
「最重労の苦役が科されている者共の牢へぶち込め」
「…………」
「あ奴を犯った者は、苦役は3日免除。口腔への射も同日免除。ああ、もうあ奴に水も与えずとも良い。飲みたければ、誰ぞに飲ませてもらえば良いからな」
「陛……下……」
「洗浄だけは徹底しておけ。疫病でも流行らされては困る」
「は……仰せ……の通り、に……」
それから、と、王は、武官を振り返った。
「秘匿裁判の陪審に課された沈黙を守るならば、以後は不問に付す。……それ相応の覚悟を持って周知せよ」
「……陛下の、仰せの通りにいたしましょう」
それきり口を噤んだ武官に、王は告げる。
「我れを情無きものと謗りたくば、そうしろ。裏で何を言おうとそこまでは咎めぬ。沈黙を約すならば、善き王として振る舞いもしようよーーただ」
無駄と知りつつ、言葉を重ねる。
「我れを怪物とするのは、いつなりと我れから情を取り上げた、その方らと知れ」
その時、武官は良くも悪くも口を噤み、自身の命を永らえた。
ーー“逆賊”を退けることの、何が不当なのかーー
王は、武官の内心を読むーー読むまでもない、知れているからだ。
“逆賊”と謗られる弟が奪われたのは、彼は7歳……10歳にも届かない時。
誰も彼もが、その事実には斟酌せず、そして本当に忘れた。
私室に戻り、傍に控えているであろう影を除き、一人となった時、王は独り言ちる。
「人の情を奪っておきながら、王として善たるを望み、情を与えよとは、些か強欲が過ぎないか……? 怪物たる身には解らぬな、人のことは」
王の王たる善が決壊することなど、考えたこともないだろう。
未だ、根拠なく盲信する臣らに、いつか王は復讐するだろう。ーー他人事のように、兄は未来を思う。
§
「それで? 言った通り水だけ与え、1週間絶食させたか」
鼻先でせせら笑いながら、王は問いただした。
「は……、お命じの通りに」
震える侍従書記が応えた。
「陛下……宜しいか」
供回りの侍従武官が重々しく、王に発言の許可を求める。
「何だ?」
王は、半ば、侍従武官からの問の内容を予想しつつ、進言を許した。
「そこまで……なさる必要があったのですか。娘御の首まで候の目の前に据え置くなど。本人の首を切り、城外に晒すだけでは足りませなんだか」
王は、予想通りの問い掛けに声を立てて笑った。
「足りぬ」
「陛下! 恐怖で臣を縛り、如何とするおつもりか!」
「どうもせぬよ」
それで終わり、とばかりに、王はにべもなく応えた。
「陛下!!」
ーーどうもならぬ。そう、王冷笑する。
「既に我れは、ヴァールら叛徒の首を切り、城外に晒したな。そして、首はどこぞへ打ち捨てた」
そこで一旦口をつぐむと、王は、“だが”、と徐に続けた。
「一滴の染みにさえ、ならなかったろう? そなたらには」
面白そうに笑う王には、武官を震え上がらせる凄みがあった。
「そ……っ、そん、な…………」
くすくす笑って王は更に続ける。
「足りぬのさ、そなたらには」
王は侍従書記を振り返り、新たに命令を下した。
「絶食させたのが誠ならば良い。後は、直腸を洗浄させ……」
王の眼が妖しく光る。
「ーーやり殺せ」
侍従書記にも、武官にも、王の言ったことが理解できなかった。
「…………は?」
「最重労の苦役が科されている者共の牢へぶち込め」
「…………」
「あ奴を犯った者は、苦役は3日免除。口腔への射も同日免除。ああ、もうあ奴に水も与えずとも良い。飲みたければ、誰ぞに飲ませてもらえば良いからな」
「陛……下……」
「洗浄だけは徹底しておけ。疫病でも流行らされては困る」
「は……仰せ……の通り、に……」
それから、と、王は、武官を振り返った。
「秘匿裁判の陪審に課された沈黙を守るならば、以後は不問に付す。……それ相応の覚悟を持って周知せよ」
「……陛下の、仰せの通りにいたしましょう」
それきり口を噤んだ武官に、王は告げる。
「我れを情無きものと謗りたくば、そうしろ。裏で何を言おうとそこまでは咎めぬ。沈黙を約すならば、善き王として振る舞いもしようよーーただ」
無駄と知りつつ、言葉を重ねる。
「我れを怪物とするのは、いつなりと我れから情を取り上げた、その方らと知れ」
その時、武官は良くも悪くも口を噤み、自身の命を永らえた。
ーー“逆賊”を退けることの、何が不当なのかーー
王は、武官の内心を読むーー読むまでもない、知れているからだ。
“逆賊”と謗られる弟が奪われたのは、彼は7歳……10歳にも届かない時。
誰も彼もが、その事実には斟酌せず、そして本当に忘れた。
私室に戻り、傍に控えているであろう影を除き、一人となった時、王は独り言ちる。
「人の情を奪っておきながら、王として善たるを望み、情を与えよとは、些か強欲が過ぎないか……? 怪物たる身には解らぬな、人のことは」
王の王たる善が決壊することなど、考えたこともないだろう。
未だ、根拠なく盲信する臣らに、いつか王は復讐するだろう。ーー他人事のように、兄は未来を思う。
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