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【ゆかいなアニカンたち3】
しおりを挟む「言われてみれば、ジュジュの言うことはもっともなことですな。お園の伝説はあまりにも有名になりすぎたゆえに、一昔前にはずいぶん尾ひれをつけたあらぬ空想話が飛びめぐってしまった。そのために元になった伝説が、雲にまぎれてしまったのだよ。それだからワシにも分からんな。どうだろう。ここらで長老の口からお園にまつわる本当の伝説のことを聞きたいものだが……」
白フクロウの言うことに皆が同意するかのように、一斉に長老の方を見る。
「……そうじゃな。ここらで皆にもちゃんと話しておくのがいいであろうな」
そう言うと、長老のアイアイは何を思ったのかその場で跳躍し、空中でくるりと後回転してみせた。
皆の気を引きつけようとする時、長老はきまってこの大技をひろうする。
太くて長い尻尾の先がゆっくりと地についた時、隣にいたケープペンギンがおきまりのお世辞を飛ばす。
「よっ。お見事」
長老のアイアイが話した内容というのは、ざっとこんな感じだった。
……明治時代のことじゃ。東北の漁村に海女を生業(なりわい)とする娘がいた。
名は、大島ゆいと言った。
彼女はある日、素潜りをしていた時にふと、海底に泥まみれになった小さな船が沈んでいるのを目にした。
彼女は興味に駆(か)られてそれに近づいて行った。
そばからよく眺めると、相当昔の船のようだった。
ほとんど船の外形は朽ちかけている。
船首と船尾の真ん中で、船は斜めに折れ曲がり、魚の死骸のように腹にポッカリ穴をあけ、内側をむき出しにしていた。
ゆいは、なんとはなしにその穴の中を覗(のぞ)く。
すると、中には泥まみれの四角い箱が見えた。
小物入れぐらいの大きさのものだった。
ゆいは、それをつかむと、一気に海面を目指す。
呼吸を吐き出しながら陽射しの中に顔を出した時、手にした小さな箱は桜色の輝きを放っていた。
これが伝説のはじまりじゃったのだよ。……
長老のアイアイがそこまで話し終えたその時、空がにわかに騒がしくなり、二つの影が舞い降りてきた。
「たいへんだぜ、公園内でまたホームレスの野郎がくたばりかけている」
「おいっ、カラス。口を慎(つつし)め。いま何してると思っているのだ。幹部連の会議中だぞ! 」
トラが立ち上がり、うなり声をあげる。
〈続く〉
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