ジャイアントパンダ伝説

夢ノ命

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【不思議な配給所】

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ホームレスが列を作って並んでいる。

これはホームレスへの食事の配給でよく見る光景である。

問題は配給している者たちだ。

カレーの匂いがするので、配給食はカレーなのであろう。

皿にご飯を盛り付けているのは、なんと猿である。

そしてカレーをクチバシで掬(すく)っては、ご飯の上にかけているのはタンチョウヅルではないか。

長いテーブルのそばで並んで、五人の猿がご飯をよそい、三羽のタンチョウヅルがカレーをかけている。

ホームレスたちは、テーブルの上に置いてあるカレーのかけ終わった皿を、

一列に並んだ先頭の者から手にとって、立ち去っていく。

人間が動物に保護され養われている。

頭ではそれもいいではないかと理解していても、理性がどうも納得してくれなくて、何だかしっくりしない気分である。

「驚いたな」

優吾がポツリとこぼす。

「あたしもそうだった。初めて見た時はね。頭で理解していても、人間の本性みたいなものが納得してくれないのよね。その気持、分かるわ」

そう言いながら、ケイコが立ち止まっている優吾のそばに近づいてきた。

「いつからなんだい? 」

「えっ? 何のこと? 」

「人間というかホームレスたちが、動物たちのやっかいになりはじめたのは……」

「やっかいという言葉は不適切ね。信じがたいけど、彼らに救われたのよ。あなたもホームレスだから分かるでしょ、この意味が。普通に生きている人たちが、振り向きも、立ち止まりもしない私たちに、檻の中にいる動物たちが振り向いて、立ち止まってくれた……」

動物公園の前にあるカレーの配給所では、先ほどまで長蛇の列を作っていたホームレスたちが、ようやく最後の二、三人にまで減っていた。

優吾は、カレーが盛られた白い紙の皿を手にして去っていく幾人もの後ろ姿を見送りながら、この人たちは、いったい、どこへ食べに行くつもりなのだろう、と疑問に思った。

そんな優吾の考えを見透かすように、

「みんな一度死にかけてここへ運ばれた人たちなの。人目を忍んで食べるつもりなのよ。でないと、ここへ上野公園中のホームレスたちが押しかけて来てしまう。そうなってしまったら、さすがの動物たちも参ってしまうわ。動物たちは、もともと自分たちの餌をこっそり残して、私たちに与えてくれているのだから」



〈続く〉
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