1 / 25
エピソード1 カバさんがやってくる
しおりを挟む君は、ワニのジョルディールを知っていますか?
この世で一番、ワニっぽくないワニって言えば、
アフリカでは、知らないものはいないくらいでした。
ワニのジョルディールは、
サバンナの奥の沼地に暮らしていました。
大きくて、かたくて、平べったい体。
短い四本の手足、とんがってぶんとしなるシッポ。
ギザギザな歯と、大きな口。
すがたかっこうは、他のワニたちと同じでした。
でも、ジョルディールには、たった一つ、
他のワニたちとは、違うところがありました。
それは、鳴き声です。
月夜になると、
「ジョルディール」
と鳴き声を上げるのです。
それで、いつしかみんなから、
ジョルディールと呼ばれるようになったのです。
ある月夜のこと、いつものように沼のほとりでジョルディールが鳴いていると、
どこかから、大きなカバがやってきました。
「やあ、ジョルディール。君の声を聞いてやってきたんだ」
「やあ、カバさん。会いにきてくれて、ありがとう」
「ところで、君が狩りをしているところは、見たことないな。
君のギザギザな歯や、するどいシッポが、何のためについていると思うんだい?」
「何のためだろう? 考えたこともなかった」
「きまっているじゃないか、そのギザギザな歯は、魚や動物たちを腹いっぱい食べるためさ。
そのシッポだって、ぶんとしならせて、思いっきりぶつけてやれば、誰だってイチコロさ」
「そうだったんだね。でも、僕にはそんな気は起こらないなあ。
たとえば、そうだねぇ……うんうん、そうだ」
ジョルディールは、何かを思いついたように、歯をカチッと鳴らし、
カバの目の前にやって来て、
「君の大きな歯を磨くのに、僕のシッポは、なんて便利なんだろう?」
ジョルディールはそう言うと、ぐるりと後ろを向いて、
緑の藻(も)がいっぱいついたカバの歯に、とがったシッポの先を近づけました。
「まった! ジョルディール。そんなことを言って、
本当はそのとんがったシッポで、わたしの口を一突きして、食べてしまうつもりなんだろう? 」
「けっして、そんなことはありません。この声に誓って」
「ジョルディール。ジョルディール」
ジョルディールの鳴いている声を聞くと、不思議なことに、
カバは信じてみようという気持ちになりました。
〈続く〉
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる