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エピソード12 氷上のクジラ
しおりを挟むジョルディールは、オオワシの翼の音を追って、
ずんずん進みました。
周りは、真っ白な深い霧でしたから、
岩につまずいたり、濡れた登り坂をずり落ちたりは珍しいことではありませんでした。
それでもジョルディールは、ひるまず、登り続けました。
闘志を燃やす、という言葉が、
今のジョルディールには、ぴったりかもしれません。
何しろ、鼻の頭に、トンがったサボテンのトゲを、
五本刺しても、登り続けたんですから。
もちろん、ジョルディールは、ありったけの声をあげて、飛び上がりましたよ。
それで、オオワシが心配して、思わず、
「だんなぁ、死んじまったんですかぁ?」
なんて、聞いてしまったのも、無理はありません。
それほど、物凄い声が、霧の中から、聞こえてきたんです。
その時、ジョルディールが、
「ジョタヘリョ~ル」
と鳴いてしまったことだけは、君だけの秘密にしてください。
そうこうしながら、日も暮れる頃、ジョルディールは、
とうとう霧のトンネルから、抜け出すことができました。
視界が広がり、ジョルディールの目に飛び込んで来たのは、
氷ついた大きな湖でした。
ジョルディールは、空を見上げて、オオワシにお礼を言いました。
「なあに、お安いご用でさあ」
オオワシは、そう言うと、翼をひるがえして、
今来た方角へ戻って行きました。
そんなオオワシを見送りながら、ジョルディールは、歌を歌いました。
不思議なことに、歌は自然と口からついて出てきました。
初めて歌う歌なのに、何度も口ずさんだ歌のように
なつかしい気持ちになりました。
その時です、湖の真ん中の氷が大きく盛り上がりました。
まるで、氷の山が一瞬にして、そびえたったかのようです。
次の瞬間、目を疑うような光景をジョルディールは目にしました。
氷の山が大きな魚に変わり、宙に飛び上がり、ひるがえったのです。
ふたたび、氷の湖に体が落ちると、地を這うように地鳴りがとどろきました。
ジョルディールは、恐る恐る氷の湖に近づいて行きました。
ふしゅーっ、という息づかいと共に、氷シブキをあげて、
氷の上に顔を出したのは、まぎれもない、大きなクジラでした。
〈続く〉
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