カバさんのブルルンルン!

夢ノ命

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エピソード3 カミナリ落ちる

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翌朝、東の空に太陽がのぼると、

カバとシマウマは出発しました。



かっぱらかっぱらかぱかぱかっぱら。

ずんずんずんずんずんずんずんずん。



シマウマのあとを、カバがついていきます。


やがて、太陽が真上に上がる頃、

人間がのる機械を見つけました。


その機械は、アカシアの木の下に立てかけてありました。



『ガッひょひょ。ついにみつけたぞ!』


カバは、ものすごい勢いで、アカシアの木につっこみました。


そして、ごうかいにまたがると、体をふるわせ、



『ブルルンルン!』


人間の乗り物らしい機械は、

ギシギシとゆがんでいき、今にも押しつぶされそうです。



『おかしいなぁ。もっともっと、ほえてかけるやつなんだけど……』


カバは、片手をアカシアの幹(みき)にぐるりと絡ませながら、

乗っているバイクをゆらしてみます。


そして、体をふるわせ、



『ブルルンルン!』


人間の乗り物は、ギシギシ、ミリミリ音をたてるだけで、

うんともすんとも言いません。



そのうちに、風が吹いてきました。


そのうちに、空が雲におおわれて、暗くなってきました。


やがて、雲が光り出し、カミナリが地上に落ちはじめました。


あっというまのことでした。


シマウマが、目をつぶるヒマも、耳をふさぐヒマもなかったのです。


空から落ちてきたイナズマは、

カバとカバが乗っている機械をつらぬきました。



大きなとどろきが、地上に鳴り響いて、

カバと人間の乗り物は、真っ黒こげになったかと思われましたが、無事でした。



ぷるるんとしたカバの背中が、

落ちてきた稲妻をつるりと滑らせて地面に落としたのです。


カバは、何事もなかったように元気でした。


そして、驚くことに人間の乗り物のエンジンが、かかっていました。


カバは、ご機嫌になりました。



『ブルルン~ブルルン~ブルルンルン!』


あの時と同じ音がします。



バイクライダーが、砂煙をあげて駆け抜けていく時のあの音です。


カバは、その音に合わせるように、何度も、何度も、体をふるわせました。



『ブルルンルン』


『ブルルンルン!』


『ブルルンルン!!』


『ブルルンルン!!!』



カバは、鼻息をあらくして、

天にものぼる気持ちです。



〈続く〉
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