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エピソード25 【影の世界】
しおりを挟む★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む。おしゃれ金平糖ウミウシ。
★「いちご」→船形石珊瑚に住む「おしゃれ」の心友。いちごジャムウミウシ。
★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの長男。青くて大きめの魚。過度の心配性の特徴あり。
★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの末っ子。オレンジ色の小さな魚。しっかり者の性分。
ずいぶん遠くの見知らない海まで来ていることを、「妹」は、そばに浮いている、
大きなクラゲを目にして知った。
ゆったりと浮遊するように泳ぐ「ホシガメ」の背の上から、「妹」はふいに、
解き放たれたように、泳ぎはじめる。
ぐんぐん上へ上へと明るい海面まで、一気に上がってみた。
空気の中に躍り出て、元気良く海面を打つ体が、凛ときらめく。
水に潜ると、ウロコに空気の粒々が張りついて、全身に力がみなぎってくる。
そのまま「妹」は、亀の背を気にしながら、その周りを泳ぎ回った。
ふいに下を見てみると、ストンと落ちていくような真っ暗な重たい気配が、泳いでいる亀の下に広がっている。
試しにずっと亀の下まで潜って行き、その黒々とした水の襞の中に入ってみた。
やけに水が冷たい。
すぐに全身が藻に絡まって、身動きがとれなくなっているような、不快な状態に襲われる。
「妹」は、じっとしていられなくなり、明るい方へ上がっていく。
これほど真っ暗な海に入って行ったのは、はじめてだった。
それにくらべれば、マンモス白珊瑚のそばに広がる夜の海は、どんなに明るいことか。
決して太陽の光の射し込まぬ海の深いところにある場所。
そこは、「妹」にとって、とても険しく不自由な場所に思えた。
ゆうゆうと泳ぐ亀の下には、影の世界が広がっている。
それは毎日やってくる夜の闇が、少しずつ月日とともに海の底に落ちて行き、積み重なっていったのだろうか。
ひょっとして、夜というものは、海の生き物たちと同じように死ぬものなのかもしれない。
そうだ、今までずっと、朝になるたびに死んできたのかもしれない。
ずっと海の底に、折り重なって、こんなにも深い影を築き上げてきたのかもしれない。
そう思いながらくるりと方向転換をし、向きを変えた時、
「妹」は、3匹を乗せて泳いでいた亀の異変に気がついた。
〈続く〉
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