星ふる夜にでかけよう~オシャレこんぺいとうウミウシの恋

夢ノ命

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エピソード29 【海に生きる風】

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★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む。おしゃれ金平糖ウミウシ。


★「いちご」→船形石珊瑚に住む「おしゃれ」の心友。いちごジャムウミウシ。


★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの長男。青くて大きめの魚。過度の心配性の特徴あり。


★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの末っ子。オレンジ色の小さな魚。しっかり者の性分。







僕はあの時、わけもも分からずに一緒について行ったんだ。



たぶん1000メートルくらいは、僕も潜って行っただろう。



だが、その後は、よく覚えていない。



後になって推測してみると、おそらく長い間気を失っているうちに、



運良く潮が流れて明るい所まで運んでくれた、そう判断するしかない出来事だった。



昔、「お母さん」がチョウチンアンコウから聞いたという飛び魚……から聞いたのだと、

話してくれたことがある。



何でも、ずっと海の深いところでは、風が生きているのだという。



風と言っても、海面の上を吹いているものとは、別の種類のものらしい。



水に溶ける風なのだそうだ。



溶けるというのは一体化するといっても間違いではないだろう。



嵐で海が荒れた時など、吹き荒れる風の中に混じっているある一部分の風が、

海面を通り抜け下へ降りてくるのだという。



それはその日以来、海の中で水に一体化した風となって、生きはじめるのだ。



その水の中で生きる風は、時折、ある拍子に、風本来が持っている力を発揮させ、

水の中に風を起こすことがある。



その力は、海の世界の生き物たちを遠くまで運んだり、完全にどこかへ消し去ったりすることができるのだという。



そうやって、海に生きる風が海の中で思う存分に力を奮ったあかつきには、



その力は、やがて上昇していき、海面を押し上げ空に放たれるのだそうだ。



元来、大海原の針小棒大な流れの循環は、この「海に生きる風」の原理がそもそもだと言われている。



僕もきっと、その「海に生きる風」に救われたのかもしれない。



真っ暗闇の中で「兄」が物思いに耽っていると、ふいにどこからともなき、囁くような歌声が聞こえてくる。



聞こえる。聞こえる。



懐かしい声の響き。



そう、これは「いちご」さんの歌声だ。



「兄」がそう思った瞬間、突然、目の前の視界が明るくなった。



《星の船》が浮いている。







〈続く〉
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