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エピソード50 【「妹」に宛てた手紙】
しおりを挟む★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む。おしゃれ金平糖ウミウシ。
★「いちご」→船形石珊瑚に住む「おしゃれ」の心友。いちごジャムウミウシ。
★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの長男。青くて大きめの魚。過度の心配性の特徴あり。
★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの末っ子。オレンジ色の小さな魚。しっかり者の性分。
******
そうでなければ合点がいかない、というものだ。
この発見には大いに驚いた。「兄」は、目を丸くして、
「そうか、僕はウミウシの言葉をしゃべっていたのかもしれない」
自分自身に言い聞かせるように、そうつぶやきながら、円い氷のテーブルを囲んで、しきりにぶつぶつと泡訳をしている七匹の飛び魚たちの様子を、眺めていた。
ヒトデだけなぜ夜空に瞬く星と同じ形なのか、というイソギンチャクから近所の青ヒトデへの抗議の手紙や、
クジラに恋をしたカジキマグロのラブレターや、海で暮らしてみたいというアマガエルからウミタマ様への直訴状まで、
泡訳する飛び魚たちのつぶやきからうかがえる手紙の内容は、多種多様に富んで面白かった。
「兄」がその円い部屋を出て、四角い部屋を通り抜けようとした時、バッタリと先ほどの飛び魚に出会った。
その時に「兄」は、彼に一通の手紙を託した。
いまだに行方不明の「妹」に宛てた手紙だった。
頭の中で呪文のように言葉をねりだし、口から吐いて見せると、やあ、お見事なことで。
と、飛び魚は受け取り、それを他の仕分け係りにさっそく渡した。
「兄」は、もと来た道を引き返しはじめた。
その頃には、水位が下がりはじめて、大勢の配達係と見受ける飛び魚たちが四角い部屋に押し寄せていた。
彼らは、ほら、水位が下がり始めたぞ、ぐずぐずするな、さあ配達に出よう。
と、まるでジョーズ(鮫)に追われている魚のように、「兄」と同じ道のりへ一目散に飛び出していく。
水位が下がる速度が、速くなってきた。
飛び跳ねながら氷の穴を下っていく大勢の飛び魚たちの中に混じって、「兄」も泳いで行った。
******
長い夢を見ていたような気がする。
浦島太郎と一緒に、脱出する方法を話し合った。
ここから抜け出すことは簡単だったが、抜け出してもその後には延々と続く底暗い深海の世界が待っている。
〈続く〉
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