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エピソード51 【そいつは、オレの乗ってきた亀だ】
しおりを挟む★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む。おしゃれ金平糖ウミウシ。
★「いちご」→船形石珊瑚に住む「おしゃれ」の心友。いちごジャムウミウシ。
★「風船ウミウシ」→体を丸めて転がって移動する珍しい種族。みんなからスーパーウミウシとあがめられている。
★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの長男。青くて大きめの魚。過度の心配性の特徴あり。
★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの末っ子。オレンジ色の小さな魚。しっかり者の性分。
******
きっとすぐに迷ってしまうだろう。
迷ってしまったら最後だ。
もうどうすることもできない。
途方もなく長い時間の中で過ごし、やがて、弱っていって動けなくなるだろう。
それは「妹」にとって、もう経験済みのことだった。
話に聞くと、浦島太郎は伝説通り、亀に乗って来たのだという。
その話を受けて、「妹」が途中まで乗ってきた『星の船』のことを話したら、浦島太郎は、触覚をピクッと動かし、
「そいつはオレの乗ってきた亀だ」
と目を丸くした。
太郎は今はウミウシの姿だ。
以前は人間であったにせよ、ウミウシの本能が太郎を支配してやまない。
太郎には自分が昔人間だったということを、15秒で忘れてしまう習性があった。
15秒経つと、太郎はとぼけるような調子で言った。
「そいつはオレの乗ってきた亀だっけ? 」
今度は「妹」の方が目を丸くする番だった。
太郎が物忘れ、そのたびにこんがらがった話の糸を解きほぐしながら話していくと、太郎は、あまり遠くまで這っていけないことが分かった。
聞いてみると、どうやらウミウシという生き物は、ほとんど動けない動物と思い込んでいたらしい。
太郎は風船ウミウシとそっくりな外見をしている。
砂の色をした半透明な体つきも、首の上にあるキョトンとした小さな顔も、本当によく似ている。
たぶん同じ種族なのだろう。
だとすれば、体を丸めて転がって移動できるはずだ。
風船ウミウシの種族は、他のウミウシよりもずっと速く移動できるすぐれた才能を持っている。
そのことを「妹」は、太郎に話して聞かせた。
話を聞くと、さっそく太郎は転がる練習をした。
でも、ダメだった。太郎は体がかたいのだ。
〈続く〉
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