星ふる夜にでかけよう~オシャレこんぺいとうウミウシの恋

夢ノ命

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エピソード52 【ヌッと出た、シーラカンス】

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★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む。おしゃれ金平糖ウミウシ。


★「いちご」→船形石珊瑚に住む「おしゃれ」の心友。いちごジャムウミウシ。


★「風船ウミウシ」→体を丸めて転がって移動する珍しい種族。みんなからスーパーウミウシとあがめられている。

★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの長男。青くて大きめの魚。過度の心配性の特徴あり。


★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの末っ子。オレンジ色の小さな魚。しっかり者の性分。





******



――あやふやに時間が過ぎていく。



暗闇の中にいると、朝夕の営みを知りえずに、身を焦がすような想いがする。



――暗闇の中に太郎と二匹で閉じ込められている、そんな思いをぬぐいされずに、苛立ち過ぎていく時間。



――太郎は、相変わらず転がる練習に没頭している。



これでは脱出なんて程遠い。



――いったい何時になったら、ここから出られるのだろう。



時折おそってくる不安に、「妹」は身を縮ませる。



ある時、シーラカンスが暗闇の中からヌッと顔を出した。



そして「妹」の顔を空洞(うつろ)になった目で、睨みつけた。



「なぜお前はそんなところにいるのだ」



「妹」は、形骸化したシーラカンスを直視できずに、目をふせて、恐る恐る言った。



「迷ったのです。いま、必死に出る方法を探しているのですが、なかなか思いつきません。あなたはご存じですか? よかったら教えていただけないでしょうか?」



それを聞いてシーラカンスは、「妹」の鼻先をのぞき込むように迫ってきた。



「迷っただと? 出る方法を探しているだと? もうよせ! そんなことをして何になる? お前はもう、ここから出られないのだ。ワシらと同じ道を辿るのだぞ。もうあがくのはよせ、それが何になるというのだ」



一生ここから出られない、思いもよらぬことを言われて、「妹」は頭が混乱した。



「でも、わたしは出たいのです。何か手はあるはずです。きっと出られると思えば、そう願っていれば……何かあるはずです。きっとあるはずでしょう」



「ハッハッハ。もう手はつきた。お前もそのことはよく知っているはずだろう? 見て見ぬふりを決め込んでいるだけだぞ。お前は、ワシらと同じ運命を辿るのだ。一生ここから出られない。一生をここで終えるのだ。ハッハッ」







〈続く〉
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