星ふる夜にでかけよう~オシャレこんぺいとうウミウシの恋

夢ノ命

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エピソード55 【生への希望】

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★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む。おしゃれ金平糖ウミウシ。


★「いちご」→船形石珊瑚に住む「おしゃれ」の心友。いちごジャムウミウシ。


★「風船ウミウシ」→体を丸めて転がって移動する珍しい種族。みんなからスーパーウミウシとあがめられている。


★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの長男。青くて大きめの魚。過度の心配性の特徴あり。


★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの末っ子。オレンジ色の小さな魚。しっかり者の性分。





******



想像して頂きたい。



黒一色の、闇という壁だけが重厚に立ちはだかる世界を。



その中をなんの当てもなく進まなければならない困難さを。



黒亀は、すぐに根を上げはじめた。



ふらつき泳ぐ亀を「妹」は何度も励ましたが、あまり効果はなかった。



上へ上へと泳いでいくところを、黒くて重たく厚い天井が、亀の持久力を急激に奪ったのだ。



とうとう亀はあきらめてしまい、手足を甲羅の中に引っ込めてしまった。



甲羅は、ゆっくりと海底に落下していく。



この時でさえ、太郎は起きなかった。なんて豪胆な奴なのだろう。



こんな時だからこそなのか、「妹」はそんな太郎に可愛げを感じてしまう。



このまま死ぬのだろうか?



死んでシーラカンスになるのだろうか?



もう二度と明るい海に戻ることはできないのだろうか?



マンモス白珊瑚の森に帰って、「お母さん」や「兄」や「兄弟」たちと、また一緒に暮らすことはできないのだろうか?



次々に浮かんでくる問いが、頭の中に浮かんでは、暗闇にかき消されていく。



闇のせいだろうか。



何かを考えようとすると、その何かが分からなくなる。



「妹」を内側から守っている生への希望は、わずかな意思のオブラートに包まれ守られていたが、



海底へと沈んでいく距離にしたがい、意思のオブラートが剥離(はくり)しはじめ、そこへ浸透していく影の力に脅かされる。



「妹」は最後の力を振り絞り、眠っている「太郎」を起こそうとした。



「太郎さん、起きて! お願いだから起きてちょうだい! 」



「妹」の声が、闇をふるわせ、こだました。



その時だった。



急に何かの音が聞こえてきたのは。



「妹」たちに向かって何かが近づいてくる音が、確かに聞こえる。



水の音。



そう、何かが泳いでいる音だ。







〈続く〉
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