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エピソード1 出会い
しおりを挟む『ほーら、こんなことできる?』
足もとにポトリと落ちたウサギのフンのようなちっちゃいのが、
声をかけてきた。
サイは、はなを地面すれすれまでおろして見た。
おやっ。だんご虫だ。
くるりとまるまって、ゆらゆらゆれている。
そこから、かすかな声がきこえた。
『きみにもできるよ。ほーら、まんまるい』
サイは、ゴクリとツバをのみこむ。
『やってみたい……すごく!』
その日から、だんご虫はサイの先生になったんだ。
『まずは、じゅうなんたいそう』
だんご虫の先生は、そう言うと、
大きな岩の下へとからだをのばしながらもぐっていった。
続いてサイのばん。
岩の下へ頭をさげてもぐろうとしたけど、
角が岩にぶつかり、岩が2つにわれてしまった。
『こんなのは、どう?』
だんご虫の先生は、こんどは、あお向けになって、
体をのばして、足をうにうにさせた。
すかさずサイもあお向けになろうと、
いきおいよくどっしーん。
なんとかあお向けになり、ふとい4本の足を少し動かしたけど、
こんどはおきあがれなくなってしまった。
やっとのことでおきあがった時には、
もう夜になっていた。
次の日も、その次の日も、
だんご虫の先生はサイにまるまりかたをおしえつづけた。
『こんなことできる?』
まるまった先生のすがたをまねしようと、
サイは、なんどもれんしゅうした。
もう少し、いきおいをつけると、ころがりそうだ。
サイは、かけだした。
『サイ・サイ・サイころん!』
地面に頭からぶつかったけど、
サイは、こんなかけ声もおぼえた。
だんご虫の先生とはなれているときも、
毎日れんしゅうしたけど、
だんご虫の先生のようにきれいにまるまることは、
サイには、できなかった。
でも、いっかいてんだけ、
ころがることができるようになったんだ。
ある日、サイは、だんご虫の先生にたのまれて、
キリンのところまで出かけて行った。
西へ西へと何日も歩き続けると、
サバンナの中をゆうゆうと首をのばして歩くキリンの姿が見えてきた。
サイは、キリンのもとへといそいだ。
『きりんさん、おいらの先生が、
君の頭の上にのって夕日をながめてみたいんだって。
ねぇ、いいかな?』
キリンはサイを見おろしながら、
目を何回かしばたかせた。
〈続く〉
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