3 / 3
エピソード3 免許皆伝
しおりを挟む『おい、どうしたんだ。しまりのないやつだぜ』
『ひっひっ。口の中に何かはいって、ひっ、ひひひ~』
『なんだよお、どうせハチかなにかだろ。くっちまいな!』
ながまる顔のライオンにそう言われ、
まる顔のライオンは、なんどもキバをならした。
[カッチン、カッチン、カッチン、カッチン]
『ダメだ、うごきまわる』
『もっとはやくキバをうごかせ!』
[カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、]
『はぐきにへばりついた』
『つぶしちまえ!』
[カチカチ、カチカチ、カチカチ、カチカチ]
『あぁ、のどまではっていく』
『いきとめて、ちっそくさせろ!』
[カチ、カチ、うぅ~ん]
『あ~あ、キゼツしやがッたぜ。
うっ、やべえ、こんどはオレの口の中にはいりやがった』
こうして、ライオン5頭(ごーとう)団は、
次々にキゼツしていき、
とうとうのこったのは四角い顔のライオン1頭だけになった。
四角い顔のライオンは、
口の中に入っただんご虫を首を左右にふり続けて吐き出し、
前足で踏みつけた。
『やるな、ちびのくせに。おまえはなにものだ?』
ライオンの前足の下から、はっきりと声が聞こえた。
『にほんのだんごむしだ。ときに、ライオンよ、こんなことできる?』
ライオンは、気になって前足をあげてみた。
その時、風がふいて、
ライオンのたてがみが東から西に流れた。
ライオンが風上へ振り向いた時、
『サイ・サイ・サイころん!』
宙に飛ばされながら気が遠くなりかけたライオンの耳に、
最後にこの言葉が聞こえた。
サイとだんご虫は、
帰りがけにキリンのところへ立ち寄った。
そうして、その日の夕方、
だんご虫の先生は、真っ赤でまんまるい夕陽が沈むのを、
キリンの頭の上から、好きなだけ、ながめることができたんだ。
それから3年後、
『こんなことできる?』
通りがかりのシマウマの前で、
サイは、地面であお向けになり、
ぎにゅうっと、大きな体をちぢめて、まるまった。
『きみにもできるよ。ほーら、こんなにまんまるい』
シマウマは、ゴクリとツバを飲みこんた。
[完]
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
没落貴族か修道女、どちらか選べというのなら
藤田菜
キャラ文芸
愛する息子のテオが連れてきた婚約者は、私の苛立つことばかりする。あの娘の何から何まで気に入らない。けれど夫もテオもあの娘に騙されて、まるで私が悪者扱い──何もかも全て、あの娘が悪いのに。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
まるで絵本を読んでいるように読みやすくて、頭の中に場面がはっきりと想像できました。文章の書き方が個人的にとても好みです。これからも頑張ってください。
読んで頂き、ありがとうございます。励みになります!