ゆきじかん

夢ノ命

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【デラーラと風になって】

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お母さんから小銭をもらうと、マキオは家をとびだしました。

いそいでかけだそうとするマキオに向かって、玄関の横の犬小屋のからとびだしてきたデラーラが、ほえたてました。

マキオはデラーラもつれていくことにしました。

いつのまにか、ふたりはきそうように、並んで走っていました。

暗い夜道を右に曲がったり、左の小路をえらんだりしながら、かけぬけていきました。

まっすぐな一本路のところで、ふいとデラーラが、走っているマキオのすぐまえにとびだしてきました。

夜のくらやみのなかで、デラーラの白い背なかが浮かび上がっています。

マキオは、息がゼイゼイあらくなってきて、ゆっくりしか走れなくなってきました。

そして、なんだか頭がボウッとしてきました。

そのとき、デラーラの背なかの白い毛なみが、マキオにどんどん近づいてくるのをかんじました。

マキオは、まるですいこまれるように、デラーラの背なかにしがみつきました。

デラーラの毛のなかに顔をうずめながら、マキオはデラーラのにおいをかぎました。

いつもかいでいるにおいなのに、そのときのにおいは、いつもよりもずっといいにおいだと思いました。

デラーラのはずむ呼吸や、かける足音が、マキオの胸のなかに大きくひびいてきました。

いままでに見たことのないようなスピードで、デラーラはマキオをのせてかけつづけていきました。

マキオはこわくて、デラーラの毛のなかから、顔をあげることができませんでした。

そのうちにだんだんと、やきいも屋さんの声が大きくなってきました。

マキオは顔をうずめたまま、まるでデラーラといっしょに、風になっているような、そんな気持ちでした。



〈続く〉
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