ゆきじかん

夢ノ命

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【ゆうきや、エミちゃん】

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歩いても歩いても、ゆっくりしかすすまないことにも、マキオは、なれてきました。

白くてやさしそうなでんしんばしら。

ずんぐりしてふとっちょな車。

おとぎの国のような白い家なみ。

みんなおなじクラスのやさしいエミちゃんのようだと、マキオは気がつきました。


エミちゃんは、いっしょにいると、なんだかあったかいのです。

教室で机がとなりのマキオがべんきょうの本を忘れると、そっとじぶんの本を、何も言わずに、二人の机のあいだにおいてくれます。

そばにいるだけで、ぽかぽかした春の野原に寝そべっているような気分になります

いちめんまっ白な銀世界は、エミちゃんみたいに、マキオをあたたかくつつみます。

雪をふむかんしょくに、こたえるように、マキオは歌いだしました。

「ゆうきや、エミちゃん、あられや、エミちゃん、ふってこい、ふってこい、あったかエミちゃん! 」


歌っているマキオの頭のなかに、はじめてエミちゃんがおこったときの光景が、よみがえってきました。


3年4組の教室はにぎやかです。

まだ昼休みが終わったばかりでした。

やがてチャイムが鳴り終わるころ、先生が教室に入ってきました。

立って遊んでいたり、話していた子供たちは、あわてて、バタバタと席にもどりました。

マキオは給食のときに、マカロニグラタンを、三ばいもおかわりしました。

そのためでしょうか。午後の授業がはじまるとすぐに、マキオはねむたくなりました。

「マキオくん、ねむっちゃダメだよ」

ときどき、隣の席のエミちゃんが、コックリコックリと頭をうなだれる、マキオの肩をゆすり、おこしてくれました。

でも、マキオはもうどうしようもなく、ねむたくてしかたがありませんでした。

とうとう机のうえに両腕をおいて、そのうえにオデコをおしつけてねむりはじめました。

それを見ると、エミちゃんもあきらめて、マキオをむりに起こそうとするのはやめました。

静かな教室のなかに、先生が、黒板にチョークで書いている、コツコツという音だけが、ひびいていました。



〈続く〉
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