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【マキオVSケンヤとコーイチ】
しおりを挟む午後三時のチャイムがなると、子供たちは校門から、いっせいに飛びだしていきます。
雪がふった日から、七日たちました。
道にとけのこった雪も、もうほとんどがとけて水になり、水たまりをつくっています。
バシュ、バシュ、いきおいよく、何人もの子供たちのくつが、みずたまりをはじくようにして、走りさってゆきます。
おやつの話。ドッチボウルの話。
缶けりの話。お誕生日会の話。
宿題をいっしょにやる話。ゲームセンターにいく話。
川に魚つりにいく話。沼にザリガニをとりにゆく話。
ソフトクリームを食べる話。買い物にいく話。
放課後の子供たちは、教室や校庭を走りまわり、遊ぶ約束をする友達をさがしたり、おいかけたり、輪になってそうだんをしたりしています。
そんな中で、マキオは、とぼとぼと一人帰ってゆきます。
肩に力がなく、背が猫背で、下を向いて、いかにも元気がないという感じです。
校門をでて、左にへい沿いに歩いていくと、ちいさな公園がみえてきます。
公園の横を通りすぎようとしたとき、公園のなかから、声がしました。
「マキオ、あしたもちこくするんだろう。オカアちゃんにおこしてもらったほうが、いいんじゃねえの」
マキオは声のしたほうにふり向きました。
するといじめっこのケンヤが滑り台のテッペンで仁王立ちのポーズで、ニヤニヤしています。
マキオはムシして、通り過ぎようとしました。
すると、
「エミちゃんもかわいそうだよな。席がマキオのとなりなんて。
毎日ちこくして先生におこられるたびに、エミちゃんのところまで先生のツバがとんでさ。
かわいそうったら、ないや」
ブーメランのようにゆらめく、ブランコの上から、自信家のコーイチがそう口をはさみました。
ムシして通りすぎようとしていたマキオでしたが、胸のなかが火のように熱くなってきたのを感じたときには、その場で、二人に大声をあげていました。
「なんだと! もういっぺんいってみろ!!」
そんなマキオを見て、ケンヤとコーイチは、ますますバカにして、笑いだしました。
〈続く〉
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